カトル

「シースー」
「……」

カオはシスの首に腕をまわして、触っても良い許可を得た後にベタベタとしていた。すました顔をしているが、シスの頬は赤く見える。

「はあ、いい加減に飽き飽きしますよ」

カトルはシスの背後から近づき、シスの頭を叩いた。クッと声を漏らしつつも、シスは反抗をせずに動かなかった。いつものように腕組みをしたまま顔だけカトルの方へ向ける。

「なんだ」
「なんだとは何です。カオさんは良いですよ、でもこんなシスさんで良いんですか?愛想もないし、抱き返してもくれない、つまらない男ですよ」

シスははらわたが煮えくりかえりそうだったが、言い返せもできなかった。言われた通りだと思ったからだ。確かにカオは自分のどこが良いのかわからない上に、愛想も……たぶん無い。カオから抱きつかれることは多々あるけれども、抱き返したことはなかった。つまらない男かもしれない。

シスから離れたカオは手に拳を握りながら、カトルを見た。むむと睨みつけているつもりだが、その顔はカトルにとってはとても弱々しい。

「シスは、優しい……」
「ぼくの方が優しくできます」
「でも……シスはかっこいい」
「ぼくの方が良い男です」
「でも、でも……シ、シスは、かわいい」
「ぼくの方が……いや、ええ?」

カトルはシスの顔をよく見ると、手で口を抑えて笑いを隠した。

「そうですか、かわいい。かわいいとは、この人が。フ、かわいい人には勝てませんね。フフ、良かったですねシスさん」
「笑うな!」
「かわいいシスさんよりぼくの方が良くなったら、いつでもこちらへ来てください」

悪戯っぽく笑ったカトルがカオの手を取ると、わざとらしく音をたてて手の甲にキスをした。

「ひゃ!」
「シスさんに愛想をつかすまで待っていますから」

ヒラリと去ってしまったカトルをポーッと見るカオ。ああもスムーズにキスできてしまうのかとワナワナ震えるシス。

「クッ……カオ!来い!」

腕を広げて叫ぶシスに驚き戸惑ってモタモタとしてれば、シスは自分からズンズンと歩み寄って乱暴にカオを抱き寄せた。

「シス」
「口を開くな。俺をかわいいだなどと」
「だって、ふふ。かわいい、シス」

肩に置かれたシスの手に力が入る。初めてまわされたシスの腕にカオはとろっとしながら微笑んだ。