03:スタートライン

花瓶に入れられた花の、つぼみが花開いた。人生で花束をもらったことはなかった。これがはじめまして。

礼はいいと言われたものの、気になっていたカオは、花瓶の水を取り替え、茎の先に手入れをしてやる。

お店で何て言って買ってきたのだろう、ゴールドマスクは。花束を買うのは恥ずかしかったと言っていた彼は少しだけかわいかったと思う。

何をもらったら嬉しいのだろうか。
実はゴールドアームと、ゴールドフットに尋ねてみたのだが、口を揃えて「そりゃあお前だろう」と言われただけであった。

アイアンリーガーは身に付ける物もないし、食べ物もダメだろう。結婚とかキスとかは無し。第一にキスが御礼になるだなんて自分のことをかわいいと思いすぎじゃないか。
そんなこんなで、準備したものはただのタオル。試合の後は汚れるというし、汚れを落とすためにシャワーを浴びると聞くし、これくらいしか思いつかなかったのだ。

「マスクくん探さないと」

「俺ならいるぜ!」

突然現れたマスクに悲鳴をあげる。

「カオ、ちゃんと花大事にしてくれてるんだな」

「うん」

「へへ…そうだ、何か用か?」

カオはスッとタオルを渡すと、次はマスクが悲鳴のような声をあげた。

「お、お、俺に!くれんのか!」

「良かったら使ってね」


カオはマスクがもったいなくて使えねえ後に騒いで仕方がなかったと聞かされた。