「Thor」
「ソー」
「Thor」
「っ、Th、そ、ソー」
「………惜しいな」
「難しいよ………」
俺が今なにをしているかというと。スタークタワーでソーの名前を呼ぶ練習中である。なんでスタークさんのビルでそんなことをしているかというと、もちろん発音の練習のために来たわけではなく、パーティーのために来たのだ。ニューヨークでの戦いが無事終わったからそのお祝いなんだと。ちなみにロキはもうアスガルドに強制送還されて、一旦それで帰ったソーはパーティーのためにまた戻ってきたらしい。勝手なイメージだけどソーってパーティー好きそうだしな。そしてそのパーティーにスタークさんは俺も招待してくれて、ありがたく俺は端っこでちびちびとっても美味しい酒を飲んでいたわけだが、それをほろ酔い気分のソーに見つかってなぜかこんなことになっている。なんでもソーは俺がソーの名前を呼ぶ時の発音が気になるらしい。だから「練習しよう」と言われたのだが正直難しい。なぜ毎回名前を呼ぶ時にthの発音をしないといけないのか。ソーじゃだめなのか……。
「ナマエ、他の奴の名前を呼んでみてくれ」
「え」
そんなこと考えてたら突然ソーがそんなことを言って、遠くで誰かと談笑しているスティーブを指差す。それらしく発音しろってこと?
「す、Steve」
するとソーは頷いて、「Repeat after me」と続けた。なんだか英語の授業みたくなってきたな。
「Natasha」
「…Natasha」
「Clint」
「Clint」
「Bruce」
「…Bruce」
「Tony」
「………………Tony」
「なんだ、その間は」
「いや…………」
ソーが怪訝な顔をしたのでなんとなくはぐらかした。いつもスタークさんのことはMr.StarkかStarkと呼んでるからなんだか恥ずかしかったとか言えない。
「で、俺は?」
「………」
ものすごい良い笑顔で「俺は?」って…………。頑張って発音するしかないじゃないか………
「…Th、………Thor…?」
「………ナマエ!」
「う"っ?!」
thのところを気をつけて頑張って言ってみたところ、それはもう豪快に抱きしめられた。衝撃が凄すぎて思わず声が漏れるくらいには強かった。抱きしめられたってことは上手く発音できたってことかな……?そのあと「よくできたなナマエ!偉いぞ!」的なことを言われたのでそうなんだな。嬉しそうで良かった。そして頭をめちゃくそわしゃわしゃ撫でられた。しかも顔のあちこちにキスされた。いかん、酔ってる酔ってる。完全に酔ってるよこの神様。
「ちょ、ソー、大丈夫?酔ってるだろ、」
「なに言ってるんだナマエ、この俺が酔うわけないだろう!」
「お、おう……(酔ってない人ほどそう言うんだよね知ってる!!)」
とりあえず抱きしめられたままのこの体勢はキツい。苦しいんだがとりあえずソーが楽しそうなのでまあいいかと思うことにした。
その後スティーブに救出された。ありがとうスティーブ。
20150702