「やばい、迷子だ」
もう何回目だ。いい加減道を覚えられない自分に呆れる。はあ、とため息が自然と出た。
シールドの施設が新しくなってからというもの全くと言っていいほど道がわからない。ほぼ100%の確率で迷う。俺の迷子はどうやら名物らしく、俺が迷ったようなそぶりを見せると(きょろきょろとあたりを見回したり)シールドのみんなは「おおまた迷子か?」なんてからかってくるのだ。ちゃんと道を教えてくれるあたりみんな優しいが。
そして今回も例外ではなく。見事に迷ってしまった。ここまでくると才能なんではないかと思えてきた。ああ〜こんなことならスティーブに一緒に着いてくんだった……あれほど心配されたのに俺のバカ……。とりあえず座ろう……、と近くにある長イスによろよろと座った。
「はあ………」
「ため息吐くと幸せが逃げるぞ」
「?!っ、だ、」
全然気づかなかった。俺の隣にいつの間に座ってたんだろうこの男の人。
「気づかなかった?」
「ぜ、ぜんぜん」
そう答えたらその人は得意げに笑った。この人、初めて会う人だ。白髪に青い目で、スポーツウェア着てる人なんて見たら忘れないだろうし。そしてイケメンだし。
「お前、ナマエだろ?」
「え、……俺のこと知ってるの?」
「知らないやつはいないだろ。迷子の子猫ちゃんで有名だぜ、お前」
「…………うん」
迷子は迷子だけど子猫ちゃんは余計だ。
「で、どこに行きたいんだ?」
「え」
連れてってやるよ、と言ってくれた。なんと。ほんとにシールドにはやさしい人しかいない。
「ありがとう、ええと、」
場所の名前を言うと、どうやら思い出したらしく「俺も丁度そこ行くところだったんだ、すっかり忘れてた」とはははと笑いながら返された。軽いなこの人。
「よし、じゃあ行くか」
イスから立ち上がって俺を促す。俺もその人に続いて立ち上がった。瞬間、身体が浮いた。
「?!っちょ、なにすんだよ?!」
「あ?なんだよ?」
びっくりしすぎて思わず日本語を英語に変換するのを忘れた。なんで俺こいつに横抱きにされてんの?!!
「おい!下ろせって!」
「お前と同じ速さで歩いてたら遅すぎて俺が死ぬし、お前急いでるんだろ?だからこうしたんだ文句言うなよ」
「は?!」
なに言ってんだこいつ!!?言ってることは分かるが言ってる意味が分からん!!!
「落ち着けって、一瞬だからさ」
そう俺の耳元で囁いてから、「行くぞ」と言ったその声を聞いて、俺は思わず目を閉じた。
「おい、」
「……っ」
「おい、ナマエ。着いたぞ」
「………え」
ゆっくりと目を開けるとそこにはスティーブがいた。マジか。ほんとに着いた。なにこれすごい。スティーブは一瞬驚いたように見えたけど、それは直ぐに戻って「良かった、」と笑った。ウッ笑顔が眩しい!
「案の定迷子になったんだな、ナマエ」
「う、ごめん、」
「これからは誰かと一緒に行くようにしないとな。ピエトロにちゃんとお礼を言えよ」
「ピエトロ?」
「俺のこと」
なるほど。この人ピエトロっていうのか。運んでくれたお礼を言うと「どういたしまして」と笑った。なかなかかっこつけた笑い方だ。イケメンだからとても様になってるけど。
「ええと、俺はナマエ」
「知ってるよ」
「えと、ちゃんと自己紹介したいんだ。だから、」
「よろしく、」と小さく頭を下げた。のに、なんも反応が返ってこなかった。そしたらピエトロがびっくりしたように俺を見た。え、待って待って俺の英語まずかった??俺なんか変なこと言った??
「ええと、……ピエトロ?俺何か変なこと、言った?」
思わず声が小さくなってしまった。けれど俺から顔を逸らしたピエトロから「言ってない」と返ってきたのでそんなことないらしい。
はあ良かった、安心した。だいぶ英語を話すのに慣れてきたと思ったんだけど、やっぱり難しいな。
「……よろしくな、ナマエ」
ちょっと照れたような感じでそう返してくれたピエトロが、さっきの自信満々な感じと全然違ってなんだか面白くて笑ってしまった。ら、「なに笑ってんだ」と不機嫌そうに返された。けどその後軽く笑ってくれた。さすがイケメンかっちょいい。
「………そろそろいいかな?」
ごほん、と咳払いをしたスティーブにハッとした。ピエトロも同じなのか、俺をゆっくりと降ろしてくれた。ていうか待って俺さっきまでのピエトロとの会話横抱きにされたまましてたの???!!!!やばいスティーブにバッチリ見られてた!!!!!ウワアクッソ恥ずかしい!!!!しぬ!!!!
「………ナマエ?大丈夫かい?」
「ダメっぽい………ごめん、ピエトロ、俺重かったよな………」
「重くなかったとは言わないけどお前もうちょっと食ったほうがいいぞ」
20150704