バッキーさんに、めちゃくちゃガン見されている。

「……………」
「………(めっちゃ見られてるこわい)」

目を合わせたら彼のプレッシャーに耐えられそうにないので、とりあえず視線を合わせないようにしようと俺はさっきからあらぬ方向を向いているのだが、それにしてもさっきから彼の視線が俺にぐさぐさと突き刺さっている。バッキーさんとはほとんど、というか全くと言っていいほど話したことがない。俺は知らない内になにかやらかしたのだろうか…。不安で仕方ないのだが。
バッキーさんはスティーブの親友だ。そしてスティーブと同じようにスーパーソルジャーで、ヒドラと戦っていた時に死んだと思われていたのだが実は敵に助けられ洗脳され、色々悪いことをしていた、らしい。けれど今はその洗脳も解けて(?)、スティーブの仲間として戦っている…というのが今俺の知っている情報だ。
最初は(洗脳されていたとはいえ)悪い人だったせいか、どうにもバッキーさんに対して怖いという印象が拭いきれず、俺は彼のことが正直苦手だ。だから少し前に俺とバッキーさんを残して笑顔で「俺たち美味しいアイス買いに行ってくるな!」と言い部屋から出て行ったサムとスコットを恨んだ。くそう。

「(あーーー早く戻って来ねえかな…)」
「……お前」
「っは、…はい?」

ひたすらサムとスコットの帰りを祈ってた俺だが、ついにバッキーさんに声をかけられてしまった。やべえ。「お前」が誰を指すのかなんて、それはこの場に俺とバッキーさんしかいないのだから勿論俺に決まっている。ああどうしよう、めちゃくちゃ目が合っている。スタークさんに負けないくらい目力が強いなこの人。なんか怖い。俺は一体何を言われるのだろうかとドギマギしていたが、バッキーさんが俺に言ったことは俺の予想外のものだった。


「スティーブのこと、どう思ってる」
「…………え」

まさか、いきなりスティーブのことについて聞かれるとは思ってもみなかった。
どう思ってるって、これはどう答えればいいんだ?普通に正直に答えれば良いのだろうけど、彼は俺に何を言わせたいんだ?目の前の彼の表情から、その意図は読めない。けれど、正直に言うならば、俺にとっての彼は、

「彼は、……」

親友、という言葉が喉元まで出かかったところで言うのを止めた。そうだ、この人はスティーブの親友だ。スティーブがバッキーさんのことを話すとき、バッキーさんがスティーブと話しているときのように、普段のスティーブとバッキーさんの様子を見ていると、2人がどれだけ固い絆というか、友情で結ばれているのが良く分かる。彼らが一緒に過ごしてきた時間と、俺とスティーブが一緒に過ごした時間を比べたら、それは月とすっぽんほどある。密度の上でもだ。親友同士というのは、まさしくスティーブとバッキーさんのようなことを言うのだろう。そんな彼の前で、俺がスティーブのことを親友というのはあまりにもおこがましい、なんて真面目に考えてしまった。だから、

「彼は…俺の、大切な人」

My precious person. 悩み抜いた末に、そう言った。某映画に「My precious」という有名なワードがあったのを思い出して、それでpreciousと言ってしまった。うん、間違っては、いない、はず……。

「……………」
「あの、えーと…………」

どうしよう、意を決して言ったのになんにも返してくれないんだけどこの人。なんだかいたたまれなくて目を逸らそうとしたのだが、次の瞬間、バッキーさんは笑った。それはもう、ニヤリという擬音が付きそうな感じで。戸惑いを隠せない俺をよそに、徐にバッキーさんは立ち上がって俺の隣に座る。

「そーかそーか」

そして頭をわしゃわしゃと撫でられた。あれ…これなんか今までに何回も経験してるパターンだぞ…。デジャヴだぞ…。

「あの、バッキーさん?」
「さんなんて呼ぶなよ気持ち悪い、バッキーで良い」

恐る恐るさん、をつけて呼んだらそうバッサリと返された。俺の頭を撫でる手は止まらない。そして、優しい笑みを浮かべて俺を見つめるバッキーさんが、さっきまでと同じ人とは思えない。

「ば、バッキー…?」
「………スティーブのことよろしくな」
「………あの、」

なんか、あらぬ誤解をされてしまった気がする。



「で、名前なんだっけ」
「ナマエです…」

自己紹介したはずなのに俺の名前覚えられてなかった。



20160516

バッキーと仲良くなる???



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