「バッキーはフレーバーなににする?」
「ポッピングシャワー」
「………」
「…なんだよ。いいだろ別に」
「何も言ってないって」
「スティーブのことどう思ってる?」バッキーのその問いに答えてから、今まで俺とバッキーの間にあった分厚い壁がなかったかのように、俺は彼と上手く打ち解けられたように思う。バッキーに俺がスティーブの「大切な人」認定されたからだろう。とても誤解されたような気がするけれども。確かに俺にとってスティーブは命の恩人だし、大切な友人で、大切な人であることは変わりないのだけど、でもバッキーの考えている「大切な人」っていうのは、どうにも、違う意味のような気がしてならないのだ。まあでも、それから色々な話をしてみて、彼が優しくて楽しい、親友思いの人だということが分かったのは俺にとってはとても良かった。よく話すようになったし、軽い食事もするようになったのは大きな進歩だと思う。今日も一緒におやつと称して外のベンチでアイスを食べることになったし。よく考えたらあれからそんなに経ってないのにすごい仲良くなってるな…すごい…我ながら感動してる…。そんなことを考えながらアイスを買ってバッキーと一緒に外に出た。ああ、良い天気だ。
「今日良い天気だね」
ぽかぽかと暖かい。抜けるような青空を見ながらそう言ったら、バッキーに「お前はイギリス人かよ」と笑われた。
「日本人が天気の話したっていいだろ別に…」
「Speak English」
日本語でぼそりと文句を言ったらそう返された。こんなしょうもない会話をしている辺り本当に打ち解けられたと思う。それが嬉しい。
近くにあったベンチに座る。早速アイスを食べ始めるバッキーを見てそういえば、と思い出した。「大切な人」認定されてからしばらくしてサムとスコットがアイスクリームをたくさん抱えて戻ってきたのでみんなで一緒に食べたのだけど、バッキーがポッピングシャワーを食べた時の反応が面白かったな…。不意にそのことを思い出して1人でにやけてしまった。
「(あれは面白かったなあ…というか、なんかかわいかった)」
「おい、何1人でニヤニヤしてるんだ」
「え、いや何でもない!」
バッキーにじとりと睨まれたけど「ははは」ととりあえず笑っておいた。どうやらあのパチパチ感を気に入ったのか、今日も彼の手にはポッピングシャワーの入ったカップが握られている。ちなみに俺はロッキーロードだ。美味いんだよなこれ。ていうか、シールドの施設内にアイスクリーム屋があることに驚いた。意外となんでもあるよな、この施設…。
「…あ、スティーブ」
「あ?」
そんなこんなでアイスを食べながらしばらくバッキーと他愛もない話をしていたら、外を白いシャツ姿のスティーブが歩いているのが見えたので、思わず声が漏れた。
「スティーブ!」
「おーいスティーブ」
とりあえずバッキーと一緒に呼んでみる。呼ばれたのに気付いたスティーブがこちらに向かって歩いてきた。軽く手を振ったら軽く笑って振り返してくれた。うん、今日も爽やかである。
「ナマエにバッキーじゃないか。君たち、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」
「うーん、大体1週間くらい前かな」
「こいつ面白い奴だなスティーブ。気に入ったよ」
「おおう」
言いながらバッキーは突然俺の肩に左腕を回して俺を抱きよせる。いきなりで割とびびった。思わずバッキーの表情を伺うと、彼はどこか悪戯っぽい笑みをスティーブに向けていた。触ったことのなかった彼の鉄製の腕の感触を直に感じる。アイスのように少しひんやりとしていて、心地良い。
「そうか、良かった。」
俺とバッキーの顔を交互に見て、スティーブは柔らかく微笑った。
「…………」
そこから他愛のない話を楽しそうに始めたスティーブとバッキーをぼんやりと見つめる。会話の内容は、入ってこない。たぶん、最近の出来事の話とか、2人のお互いの思い出話について。
「(ああ、この人たちは、)」
本当に仲が良いんだなあ。
2人の表情を見ていて、しみじみとそう思った。彼ら2人がいつも自分のことじゃなくてお互いの昔話をするのは、自分のことを覚えてなくてもお互いが覚えてくれているからなんだと、最近分かってきた。それができるくらいいつも一緒にいたんだろうし、何よりお互いが強い絆で結ばれてるからこそなのだと思う。表情を見てもそれは明らかだ。バッキーもそうだけど、スティーブの表情を見ていると、よく分かる。
俺は彼のあんな表情、見たことない。少なくとも、俺と話している時には、あんな表情は―――。
「(……って、何考えてんだ俺)」
変なことを考えてしまって、思わず小さくかぶりを振った。当たり前だよな、だって、子供の頃からの付き合いで、戦場も共にした仲で、親友同士だ。
「………」
バッキーのことを、すこし羨ましく思ってしまう。
…そんなことを考える俺は、わがままで、おこがましい。
20160525