特にオチはない
「ナマエ、いま僕用事でアベンジャーズタワーにいるんだけど、もし良かったら少し遊ばない?」
こんなメッセージが来たのが約1時間前。今日はちょうどオフで家でずっと引きこもって暇だったため、ピーターに「いいよ」と返事をして家を出て、用事が終わるピーターを待つため今アベンジャーズタワーのロビーにいる。どうやら彼はスパイダーマン関係のことでスタークさんに呼び出されたらしい。
「(それにしても今日も寒い……)」
毎年冬になるたびに思ってるのだがまさかニューヨークがこんなに寒いとは思ってなかった。ここのところ最低気温がマイナスの日が続いてる。今日もそれは変わらず、そしてビル風のせいで体感気温はさらに低い。最低気温が毎日マイナスとはどういうことなのか。意味がわからない。
今は建物の中にいるから暖かいが、外に出たらまた冷たい風に襲われると思うと自然と眉間にシワが寄ってふう、と息を吐いた。
「ナマエ」
「え、あ、バッキー」
不意に声をかけられて振り向く。ピーターかと思ったら違った、バッキーだ。
「ここで何してんだ」
「ピーターと待ち合わせ」
そう答えるとああ、あのスパイダー坊やか、とバッキーはどこか苦々しげに呟く。そういえば以前、サムと一緒に戦っていいようにやられたとか言っていたような…。
「それにしてもなんだよナマエ、その格好。北極にでも行くのか?」
あれはいつの話だったか、とうーんと思い出していると不意にバッキーがそんなことを言ってきた。いや、北極てそんな大げさな。
「え?防寒対策なんだけど………」
むしろバッキーはそんな薄着で平気なのか。ニットしか着てなくない?おかしくない?室内とはいえ結構寒くない??
「バッキー寒くないの?」
「別に。」
けろりとしてそう答えるバッキー。嘘だろ…。
外国の人はもともと体温が高いらしいというのは聞いたことあるけれど、それにしても薄着じゃないか??
あれか?筋肉か?筋肉が多いからなのか??こんな寒いのに、周りを通るエージェントの人も大体薄着だし。
「もふもふしてるなお前」
「だって外寒いから…」
カナダグースのダウンにマフラーを巻いてニット帽を被って厚手の手袋くらい普通だろうと思っているのだが、そうではないらしい。バッキーは俺をまじまじ見つめて俺の被っているニット帽を目深に被せてきた。
「ちょ、バッキー見えないよ」
「はいはいかわいい」
「かわいいってなんだよ」
「撮るぞー」
「えええ」
なぜか俺の写真を撮ってバッキーはじゃあな、と去って行った。これからスティーブと任務らしい、後でスティーブにも見せとくわなんてニヤニヤしながら。いや見せなくていいよ。なんなんだ。
「ナマエ!」
バッキーが嵐のようにやってきて去って行った数分後。俺を呼ぶ声に顔を向けるとピーターが手を振りながら駆け寄って来た。
「ごめんね、待たせちゃって」
「ピーター、大丈夫だよ。そんなに待ってないし」
「そっか、良かった。…ナマエ、寒がりなの?」
ピーターは俺をまじまじと見る。
「え?寒くない?」
「寒いけど、ナマエみたいに厚着するほどじゃないかな」
けろりとした顔でそう言うピーター。いや、こんなに寒いのだから帽子と手袋とマフラー巻いてダウンを着ないと俺は耐えられないのだが、マジか。バッキーといい、ピーターもこれを厚着というのか、マジか。
「鼻が赤くなってるよ、ナマエ」
「ん、そうかな…」
俺の鼻をちょんとつついて笑うピーターに、そんなに赤くなってるかな、と自分の鼻を触るがもちろん鼻が赤いかなんて分かるわけない。
「かわいい…」
「え?」
「ううんなんでもない!僕待たせちゃったし、お詫びに何か奢るよ。コーヒー飲んで温まろう」
「え、でも」
そんなに待ってないのに、と言おうとしたけど気にしないで!僕が奢りたいんだ、とピーターは続けた。
「ほら、行こうナマエ!」
「え、あ、うん」
笑顔のピーターに手を引かれて、その後美味しいコーヒーを奢ってもらった。
20170117