「バッキー!誕生日!おめでとう!」
ぱあんとクラッカーの音が鳴り響いて、きらきらとした紙吹雪やテープがひらひらと落ちていく。クラッカーを鳴らした俺やスティーブ、そしてサムが笑顔なのに対して、ドアの前に突っ立ったまま、おめでとうと言われた当の本人はぽかんとした表情で俺を見つめていた。
「…え、あれ、もしかして違った?」
バッキーの反応になんだか不安になってきたので思わずそう聞いたら、彼はああ、と納得したようにそうか、今日だったなと呟いた。ああ、良かった。そもそも親友のスティーブから聞いたのだから間違いないはずなんだなけど。バッキーの反応が予想外で少し驚いた。
「あの、バッキーの誕生日かが今日だってスティーブから聞いたから、みんなでお祝いしようと思ったん、だけど」
「僕が場所を貸して」
「俺は料理担当な」
俺の言葉の後にスティーブとサムが続く。そして俺は玄関脇の棚に置いていたプレゼントを手に持って、それをバッキーに差し出した。
「で、独断と偏見で俺がプレゼント買ってきたんだけど、っうわ」
俺の言葉は突然ぎゅう、とバッキーに抱き締められて、途中で途切れてしまった。プレゼントが間に挟まってるよ!潰れる!潰れるよバッキー!
「…ありがとな、…嬉しいよナマエ」
「う、うん、」
ぎゅ、とされた後に耳元でそう言われてなんだかこそばゆくて、それにバッキーの声も嬉しそうでじわりと胸が温かくなった。プレゼント、気に入ってくれるといいんだけど。
「おい、俺とスティーブにも言えよな!」
そう笑いながら横槍を入れてきたサムにバッキーもようやく笑顔を見せた。「ありがとう、」とバッキーはスティーブにハグをする。それにスティーブは「うん、どういたしまして」と嬉しそうに返していた。ああいいなあ。素敵な光景だ。そのあとバッキーはサムにもハグして、サムは「やめろ気持ち悪い」と言いながらも満更でもなさげな表情をしていた。
「あー、誕生日祝ってもらえるのが久しぶりすぎてな。今日が俺の誕生日だってことも忘れてたよ…、ウィンターソルジャーを長いことやらされてたからな」
ふと憂いのある表情でそう呟いたバッキーに、なんとも言えない感情が込み上がる。元からそのつもりだったけれど、なら、今日はバッキーが心から楽しめるパーティーにしなければ。
「…バッキー、」
「…よし、今日はバッキーの好物を作ろう」
「そうだね、僕も手伝うよ」
「あ、じゃあ俺は、」
どうやらそう思っていたのはサムもスティーブも同じだったようで、2人は張り切ってキッチンに向かっていった。自分だけ手持ち無沙汰は嫌なので、テーブルのセッティングでもしよう、と言いかけたのだけどそれはバッキーに遮られて、
「ナマエは俺の隣だ」
「え?」
なぜかそんなことを言われた。イマイチ意味が分かってない俺にバッキーは笑顔で続ける。
「もてなしてくれるだろ?今日は俺が主役だからな」
「へ、」
「はは、じゃあナマエはバッキー担当だな」
「ナマエ、今日ぐらいはバッキーの我儘を聞いてあげてくれないか?料理ができるまででいいから」
キッチンから顔を出してそう言ったスティーブにバッキーは「我儘ってなんだよ、俺はいつも控えめだぞ」と文句を垂れた。とりあえず、バッキーがもてなしてくれと言うのだからもてなそう。どうもてなそうか。とリビングに移動しながら考える。
「わ、分かった、じゃあ、お酒でも、……あ」
と途中まで言いかけて気づいた。この人はスティーブと同じスーパーソルジャーなんだから酔えないじゃないか。だがしかしやっぱりここはお酒を開けるべきだろう、ジュースだとなんか、あれだし…。
そんなことをぐだぐだと考えていると、バッキーは百面相してるぞと笑って俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「別にそんなこと気にしなくていい。ビールでも飲もうぜ」
「うん、」
「あ、俺お前が酔っ払ったとこ見たいな」
俺まだお前の酔っ払ってるとこ見たことないし、とバッキーはどこかイタズラっぽい表情で言う。なに言ってんだ、俺が酔っ払ってるとこ見たってなにも面白くないだろ。
「だめだよ、バッキーの誕生日なのに迷惑かけちゃうから」
そうは言ったものの、この後みんなにめちゃくちゃ飲まされ結果めちゃくちゃ酔っ払ってしまって、色々やらかしてしまったのは、まあ、良い思い出ということにしておこう。
20170311