いきなりシールドに拉致られた平凡大学生のお話。
「Hey,」
静かになった空間に、女の人の声が響く。
誰に話しかけてるんだろうか、もしかしなくても俺だろうか。
「……(俺だよな…)」
「Where are you from?」
「………、」
いくら英語ができなくたって、これくらいは分かる。どこの出身ですか、みたいなフレーズ。
「あ、……アイムフロム、ジャパン」
固くなっていた口を開いて、言葉を絞り出した。緊張で舌が回らないせいか発音がクソ悪い。いつもだったらもう少しマシなのに。
「Japanese?」
日本人なの、という再びの問いかけに、イエス、と答える。
「What's your name.」
少しの沈黙のあと、また女の人の声が響く。ワッツユアーネーム。これもまた聞いたことのあるフレーズだ。あなたの名前はなんですか…ええと、だめだ、とても簡単なはずなのに言葉が出てこない。
「……ま…マイネームイズナマエ」
名前を言うのにどれだけ時間かかってんだ、っていうくらい時間が経ってしまった気がする。外国人と話すのってこんな緊張したっけか。英語の先生のマイケルはそんなことなかった気がする。
「ナマエ」
「は、はいっ」
「I'm Natasha.」
「え、……」
名前を呼ばれたと思ったら、名乗られた。女の人がもう一度名乗る。Natasha Romanoff、ナターシャ・ロマノフって聞こえた。この女の人の名前か。ロマノフなんて、ロシアの方だろうか。
「ナイストゥミートゥー…」
とりあえず、よろしくお願いしますって言ったらこちらこそって返ってきた。ちょっと嬉しかった。