目の前のムキムキなお兄さんとばちっ、と目が合った。
視線を外したくても外せない。目力がハンパないのだ。外国人に凝視されるとどうすればいいかわからなくなる。
そのまま凝視されて、数秒。
そして、ここで俺はある違和感に気づく。
「(…この人、どこかで)」
このムキムキのお兄さんを知っている気がするのだ。
おかしい、俺にファンタジーな格好をした外人の知り合いなんていなかったはずだけど。
でも。
見覚えが、あるような
「Renny!」
「えっ、は、っうおおあ?!」
そこまで考えたところで俺の思考は強制終了させられた。なんということでしょう。凝視されたと思ったら抱きつかれた。しかもとてつもない力で。鎧みたいな服を着て赤いマント付けてる金髪のムキムキのお兄さんに。
「ぐ、っく、るじい」
金髪の人は嬉しそうになんか言ってるけど、残念ながら英語なので意味が分からない。後ろで口笛を鳴らす音が聞こえた(絶対スタークさんだ)。全くふざけてるっていうか苦しすぎてそれどころじゃないよ!誰か助けて!このままじゃ俺抱き潰される!
「Thor!」
ナターシャの咎めるような声がして、それからべりっと引き剥がされた。引き剥がしてくれたのはありがたいが、その力が強すぎて俺はキャプテンの頼もしい胸板に背中からダイブすることになった。ナターシャ力強すぎだよさすが。でもキャプテンはきっちりと受け止めてくれたけど。ううん申し訳ない…。
「大丈夫かい?」
「だ、大丈夫、ありがとうキャプテン」
「どういたしまして」
にこり、と柔和な笑みを浮かべるキャプテンはさすがイケメンである。いいなあ俺もこんな顔で生まれたかった。さすがに英語に慣れてきたので、聞こえてくる英語をなんとない日本語に変換する性能が上がった気がする。ここしばらく環境が英語だらけだったし、当たり前か。でも早口で喋られると相変わらず意味わかんないけど。
「ソー、あなた彼とどんな関係なの?」
どうやらこのムキムキのお兄さんはソーというらしい。Thorなんて発音しにくい名前だ。thの部分が特に。
「彼は俺の家族だ。」
「…………」
……は?
どうでもいいことを考えてたらとんでもない言葉が耳に飛び込んできたぞ。そのあとの言葉は聞き取れなかったけど。家族?家族ってあの家族?family??
「ナマエ、君ソーを知ってたの?」
キャプテンのその問いに俺は必死に首を横に振った。こんなムキムキの家族がいたら自慢してる。
「…ナマエ?レニーじゃないのか?」
「レニーって誰だよ…」
ソーのその言葉に思わず日本語で呟いてしまった。そしたらそれをスタークさんに通訳された。「どうやらナマエは君を知らないらしい。」だって。なぜか得意げに。スタークさんは多少日本語が分かるらしいから、会話に日本語が混じっても分かってくれるからありがたいのだが、この人の英語はちょっとブロークンだから聞き取りにくいのだ。しかも、ちょっと変わってるし。
「人違いじゃないのかい?」
「………ああ、」
バナー博士のその言葉に、釈然としない表情のままソーが頷いた。そして俺には「先ほどはすまなかった」と謝ってくれた。そして自己紹介もしてくれた。律儀なお兄さんだ。
「よろしくな、ナマエ」
「こちらこそよろしく」
レニーって、俺のことだろうか。だとしたらそのレニーってやつは俺そっくりのやつなんだな。ソーと握手をしながら、そんなことを考えていた。