分かっている。お互いが任務や仕事やらで忙しくて中々会えなかったのも、触れ合う機会がなかったのも。久しぶりのスティーブは俺にとっては仕事を頑張ったご褒美だ。きっとスティーブにとっても同じで、久しぶりの俺はご褒美なのだろう。
分かっていた。ようやく休みが重なったからと仕事終わりに一緒に美味しいご飯を食べて、少しだけ酒も飲んでいい感じにほろ酔いで(まあそれは俺だけなのだが)、その後にスティーブの部屋への招かれて。このタイミングで致さないわけがないのだ。俺だってしたかったし。だから部屋に入って直ぐに唇を重ねられても何も言わなかったし、寧ろ求められていることが嬉しかった。
だけど、久しぶりの行為がまさかこんな、俺が想像していたもの以上になるとは思いもしなかったのだ。
「ン、ナマエ……」
「えっぁっうそまって、また、っあぅ」
達したばかりの俺の中を、未だ硬さを失わないスティーブのそれがゆっくりと抜き挿しされる。その感覚に腰がおののいて、連動するように開きっぱなしになった口から声が漏れた。
スティーブは絶倫、だと思う。「だと思う」のは、行為の時いつもセーブしてくれているのを感じているから。まあ彼はスーパーソルジャーなので、そうであると考えるのが自然だと思うのだが、本人には聞いたことがないので俺が勝手に思ってるだけだ。
まあとにかく、スティーブがいつもセーブしてくれるのは分かっている。だから、
「っあ、ン、あ、っんうっすってぃーぶ、まって、そこ、はぁ……!」
「は、…ッ」
だから、久しぶりの行為でいつも掛けてくれているリミッターが外れるのも分かる、理解できる。正直いつもセーブしてもらっている分、リミッターが外れて思うままに俺を求めてくれているのは嬉しい。嬉しいが!嬉しいのだが!!
俺自身はもう何回達したか分からない程達しているが、スティーブは……、待て、始まってからスキン変えたっけ?一回抜かれた?ううん、覚えてない。久しぶりの行為が気持ち良すぎて俺がトんでたかもなので定かではないが、もしやスティーブ、全然達してないのでは?
「(ぜったいそうだ。記憶にないもん!!)」
嘘だろ、俺早漏すぎないか?それともスティーブが遅漏なのか?あるいはどっちも?ああだめだ、気持ちよすぎて分からなくなってきた、
「っんぅ!」
「ン、考え事……?」
ナマエ、突然名前を呼ばれたかと思えば意図的に腹の内側の一際弱い部分を擦られ、混濁する意識の中から引き戻される。目線を合わせれば、俺を呼んだ俺に覆い被さっている張本人は少しむくれた表情で。
「あっぅ、す、ティーブのこと、っん、考えてた……っあ」
「嬉しいけれど、…今はこっちに集中してほしい、なッ」
「あ、ぁ"っ?!」
ごり、そんな音さえ聞こえた気がする。俺の言い訳に対してふ、と微笑ったスティーブ。それから腰を掴まれたと思えば一際胎の奥を突かれ、あられもない声が押し出された。
「ぁあ"ッ、ひっんぁあ!だめ、っすてぃ、ぶっ」
「ふ、……っは、ナマエ……っ」
最近…、ではないが、スティーブと恋人同士になってみて気づいたことがある。彼は中々に嫉妬深い、それとも独占欲が強いというか、なんというか…そんな感じがするのだ。例えば、している時にぼうっと考え事をしていると(考え事といってもまあ大抵目の前の本人のことなのだが)必ず言われる、「僕との行為に集中して」なんて。案の定さっきも言われて思い切り喘がされているのだが。まあ最初の頃なんて考える暇なんて一切なかったのだから俺も成長したななんて思う。スティーブのそういう新たな(?)一面を見れて嬉しいし、そんなところを可愛いとさえ思うし。
が、それとこの行為を続けるかどうかは話が別だ。
「あッあっ!んあっだ、あぁっだめ、すてぃーぶっ、おれも、っいっちゃ」
「っん、僕も、イきそうだ、っ」
俺の必死の訴えにスティーブは余裕のない声音で呟いて、より大きく腰をグラインドさせ始める。さっきの「だめ」はもうマジで限界だからあまり激しくしないでの意味だったのだが、更に動きを激しくされてはもうどうにもできない。身体がもう何度目かの絶頂に近付き、ただ喘ぐことしかできなかった。
「あァっ!あ、や、いく、イっ、ぅ、〜〜…っ!!」
「ふ、ぐ……っ」
ばつん、肌と肌がぶつかる音が大きく響いた。腰を鷲掴みにされ、熱く硬いスティーブの自身が強く身体の奥に打ち付けられる。腹の中、スキン越しにスティーブの自身が脈打ち、直後熱いものが広がっていくのを感じる。それにああ、ようやくイったのだと行き過ぎた快楽で回らない頭の中でぼんやりと考えた。腹の中からスティーブによって押し出されたのだろう、緩く勃ち上がった俺の自身からももう何度目か分からない、水のようにすっかり薄くなった精液が漏れ出ているのが見える。
「ぁ、……っ」
「ん、…ナマエ、」
腰を動かされ、ずるり、ぽっかりと空いた胎からスティーブの自身が抜かれる。それにさえ感じ入ったような甘い声が漏れ出てしまったけれど、それに対してどうすることもできないくらい身体には力が入らない。そんな俺を見てスティーブが名前を呼ぶ。汗で張り付いた前髪を払って、そっと唇を額に降らせて。
「もう一回、」
「は、……ぅ、っン……だめ、おれ、これ以上は」
それから繰り出されたスティーブの言葉に耳を疑った。が、彼が嘘なんて言うはずもない。もう一回?もう一回なんて、本当に無理だ。力が入らず緩慢な動作でゆるゆると首を振る。これ以上されたら自分がどうなるか分からない。最早自分が英語を話せているのかさえ自信がないし、このまま続けたら気持ち良すぎて死ぬかもしれない。「死因:腹上死」なんて流石にいやだ。
きゅ、目を閉じれば生理的な涙が目尻から零れて筋を作る。それをなぞるようにスティーブの唇が目尻に触れた。シーツに放り出された力の入っていない手に指を絡められ、それからちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスが落とされる。俺はこの触れるだけのキスが好きだ。大好きな分、これをされるとどうしても絆されてしまう。
蕩けたブルーの瞳がじ、と俺を見つめる。いつもよりも赤く色付いた唇は今までのキスで熟れていて、どうしようもなく扇情的だった。そして。
「……駄目?」
「だ、……だめ、……じゃない…………」
…たまに、この人狙ってやってるんじゃないかと思う。この「駄目?」なんてあざとさの極みだ。久しぶりで、しかもスティーブからそんな風に頼まれて断れるわけないのに。
だめじゃない、の俺の絆された答えにスティーブは嬉しそうにありがとう、なんて蕩けた笑顔で返してくれるのだから、この人には参ってしまう。俺はずっとスティーブには敵わないのだろうな。
「挿れるよ」
俺の了承に手早くスキンを交換したスティーブはぴとりと先端を入り口に押し当てる。ついさっきまで彼を受け入れていた孔は、ぽっかりと空いた空間が埋まるのを待っているかのように、誘うようにひくりと疼いた。
「う、ん……、っぁ、は、……〜〜っ!」
頷けば、スティーブは腰を進めて押し当てていた自身をゆっくりと俺の中に挿れていく。自分の中が押し広げられていく感覚にぐ、と歯を噛み合わせた。
スティーブは背も高くて体格も良い。だからそれに見合うように彼のモノも大きくて太い。最初は挿れることさえも大変で、先っぽを挿れるだけでもかなりの時間を要したものだがそれも最早中々に遠い話だ。カリの部分に息を呑み込んでこえてしまえば、後はスムーズに腹のなかに収まっていく。
スティーブの陰毛が俺の臀部に触れる。先っぽから根元まで収まったのだろう、スティーブはは、と眉間に皺を寄せてひとつ息を吐く。俺はといえば挿れられる時にずっと息を詰めていたこともあり、大きく息をゆっくりと吐き出した。毎回この挿入される瞬間の感覚には慣れずじまいだ。スティーブもそれを分かってくれていて、挿れた後はすぐに動かず、俺が慣れるまでそのままでいてくれる。
「ナマエ、大丈夫?」
「ん、うん、へいき」
「よかった、体勢を変えても?」
「ん、いいよ、」
「ありがとう。じゃあ僕に捕まって、そう、」
俺の返答にスティーブは頬を緩める。体勢を変えても?なんて初めて言われた。そりゃそうか、今までお互いが達したら終わりだったのだから。
言われるがまま、されるがままに太い首に手を回す。背中にスティーブの腕が回されたかと思うと、繋がったままゆっくりと身体を起こされた。
「っ、ん」
「大丈夫かい?」
「ん、うん、」
正常位から対面座位と体位が変わったことで中で擦れる位置が変わって腰がひくりと震えた。心配してくれるスティーブにありがとうと言えば、彼は微笑って俺の胸へと顔を寄せる。
「っふ、ぁ」
唇で俺の薄い胸をなぞりながら、スティーブは俺の身体を優しく、まるで形を確かめるように撫でる。それがこそばゆくて身体を捻る。首に回していた手がざり、と彼の項を撫でた。スティーブはしばらく俺の身体の線をなぞっていたけれど、やがてその手は俺の胸元へと伸びて。
「スティーブ、そこは、っ」
「どうして?君も好きだろ、僕の胸」
「っひ、」
僕も君の胸が好きだよ、スティーブは続けながら胸の頂きに口付ける。そのまま熱い粘膜に覆われて腰がびくりと震えた。舌先で先端をなぞられたり軽く押されたりする度にびりびりと甘い痺れが背中を走る。
「っあ、や、っす、てぃーぶっ」
「ん、気持ちいい?」
「ぅ、……」
スティーブの問いに口ごもる。自分でも分かっている、胸を舌で弄られて、胎の中のスティーブを締めつけてしまったのを感じたから。でも言いたくない、男なのに胸で感じるなんて。
「恥ずかしくないさ、ほら、僕に聞かせて」
「っスティーブ、なんか今日意地が悪くないか……」
「そうかな、久しぶりだから君に意地悪がしたいのかも」
なんてね、とちゅ、とスティーブの唇が胸の先端に触れる。それにさえぴくりと身体が反応してしまうのだから俺も相当だ。
「久しぶりだから、君を沢山愛したいんだ。いいだろ?」
「ぅ、ンぅっそんな、っ」
それならもうとっくに成功している。前後不覚でもう何も分からないくらい、スティーブからの快感でどろどろにされているのに。
「おれっ、もう充分あいされてる、からっ」
「本当に?僕はまだ愛し足りない」
「も、っいいってぇ……!ぁっう、ひ、ゃ、っンんぅ……ッ!」
「ほら、僕のも触っていいから、」
「ほら」じゃなくて!そういうことじゃなくだな?!全然言うこと聞いてくれないんだがこのスーパーソルジャー!スティーブはそんなことを言って、変わらず俺の胸を弄りながら肩に添えられている片方の手を自分の胸へと持っていく。こんな状態でスティーブの胸を楽しめるわけないだろ!なんて思ったが、それでも触れた胸は柔らかい。
「っンぅ、っん!んぁ、あ」
「ナマエ、そろそろ動いても?」
「ぅう……」
耳に唇を落としてスティーブは優しく囁く。低くどこか甘やかな響きを持ったその声音にふるりと身体が震えた。きちんと俺の了承を得ようとしてくれているあたり律儀だしありがたいのだが、まさかスティーブがここまでとは思わなかった。いや、絶倫だとは思っていたけど本当にそうで、まさかここまでとは。最早今の状態でもスティーブの全力ではないのかもしれないとすら思えてしまう。もしこのままのペースで抱かれるのなら、次の日は絶対にベッドから起き上がれないだろう。
「(……ああ、でも、)」
俺がどうなっても構わないから、本当に思うままに求められたい。だって薄い青色の瞳の熱は今はただ一人、俺のことを求めているのだから。そう思う一方で、理性の欠片が脳内で警鐘を鳴らす。いやでも、一度に何回もなんて、こんなことは初めてだしもしかしたら本当にやばくなるかも、なんて。
「っん、ちょ、ちょっとまってスティーブ、はっきりさせておきたいんだけど」
「ん?」
「あのさ、……あ、あと何回するの」
「………」
さすがに今までに無かったことだ、危機感を感じてそう聞かずにはいられなかった。恐る恐る聞いてみれば、俺の言葉にスティーブは黙ってしまう。いや待て、なぜそこで無言になるんだ。嫌な予感しかしないぞ。
そしてまあ、嫌な予感ほど的中するもので。
「……I can do this all day」
数秒後。薄く笑みを浮かべて俺にキスを一つ落とすスティーブに、言わずにはいられなかった。
「I cannot do this all day!!!」
20190828