「んっ、」

ちゅ、ちゅ、と部屋に可愛いリップ音が響く。
最初の頃は唇同士が触れ合うだけでも顔を真っ赤にして心臓をばくばくとさせていたのに、今ではもっと欲しいとさえ思うのだから、このキスにも随分と慣れたなと思う。
バッキーとサムの「スティーブとナマエを先に進ませよう大作戦」(何だそれ)が見事功を奏し、お陰で俺とスティーブはキス止まりの関係から、少し先に進むことができた。ちなみにどこまで進んだかはご想像にお任せする。
まあそれはともかく、あのことがあってからというもの、俺とスティーブは少し、そういうキス以上のことをする頻度が増えた。
今もそうだ。夕食を食べ終わったあと、食後にとスティーブがコーヒーを用意してくれている様を隣で見ていたら、自然とそんな雰囲気になって。……本当は、俺がスティーブにキスをしたくなったのだけれど。彼は俺の気持ちを汲み取るのが上手いのか、それとも俺が分かりやすい顔をしていたのか。目が合うとスティーブは柔らかく笑って、俺に優しく口付けをくれたのだ。
そうして。今はキッチンに寄りかかって、俺はスティーブからの何度目かのキスを受け入れている。

「ん、スティーブ、」
「ナマエ、大丈夫かい?」
「うん、」
「じゃあ、」

もう少し、続けても?俺の頬を撫でながら続けるスティーブにもう一度、こくりと頷く。
キス以上のことをするとき、スティーブは毎回そう俺に聞く。あの時半ば無理矢理しようとして俺を怖がらせてしまったと思っているのだろう、俺のことを気にしてくれてるの、なんというか、本当に律儀というか。俺はそういうところが好きでもあるのだが。

「ん、っふ、ぁ、」

唇をなぞられ、それに応えるように口を開く。そしてそっとスティーブの舌が口内に入ってきた。

「(顔があつい、)」

それと同じくらい、気持ちがいい。
腰に回っていた大きな手が、スウェットの中へと忍ばせられる。ぴくりと身体が反応して、スティーブの服を掴む手に力が入ってしまう。けれど俺の身体を優しくなぞる手は気持ちよくて、感じ入ったような吐息がキスの合間に漏れる。
さわりたい、スティーブが俺にしてくれているように、俺も。だからキスを受け入れながら、お互いの身体の間に挟まれていた手をそっと動かした。
胸を触って、その手を降ろしていく。身体の線を確かめるようにそのラインをなぞっていけば、スティーブが笑みを漏らすのが分かった。
スティーブの身体はきれいだ。だから彼が服を脱いだ時なんかは、その裸によく見惚れてしまう。
スティーブと知り合ったばかりの頃は、服を着ていてもいい身体してるのが分かるなあなんてつくづく思っていたのだが、こうして触れて実際に確かめることができるようになったとはなんとも感慨深い。なんて、頭の片隅でぼんやりと考える。
そうして身体を撫でていた手はやがてスティーブの腰に行き着いた。
このまま腰に手を添えているのもいいけれど、俺としてはもうちょっと触りたいというか。どうしようと逡巡して、はたとまだ触れていないところがあることに気がついた。

「(お尻……触ったら怒るだろうか)」

でも、気になるのだ。胸がこれだけ柔らかいのだから、きっとお尻だって柔らかい。根拠はないけど、スティーブならきっと許してくれる、はず。キスによって理性が解けた今の俺では、正常な判断ができるわけもなく。だから本能と煩悩に任せて腰に添えていた手をこそっと後ろへと伸ばした。そして感動した。

「(ほ、本当に柔らかい)」

頭が火照って語彙力がほぼゼロになってるので上手いことは言えないのが残念だが、本当に良いお尻だった。前々から良いお尻してるなとは思っていたけれど、本当に柔らかい。これはスコットがスティーブのお尻をアメリカのケツだのなんだの言っているのが納得だ。
何も言わないスティーブにお尻を触るのはOKなんだと理解して、そのまま触っていた手に力を入れてやわやわと揉んでみる。するとぴくり、僅かにスティーブの身体が揺れた。俺が触れることで何かしらの反応をしてくれるのが嬉しくて、もっと見たくて俺の手の動きはエスカレートしていく。が。

「ぁっ、?!」

突然強い力でぐい、と引き寄せられれた。かと思えばお尻を掴まれて、持ち上げられるように下からその大きな手のひらで揉まれて。
強く抱き寄せられたせいでお互いの身体が密着して、下腹部に感じるスティーブの熱が伝染るように、益々身体が熱くなっていく。

「ま、ぁっう、す、ってぃーぶ」
「ふふ、お返し」

待ってくれ、めちゃくちゃ揉まれているんだが!
スティーブは目を細めて微笑う。いつもよりも悪戯っぽいその笑みにギャップ萌えを感じて可愛いなんて思ってしまったが、彼の俺の尻を揉む手は止まらない。

「あっま、って、あっ、あぅ」
「ん、ナマエ……」

何度かそういう行為をしたことで、スティーブは俺の境界線を理解したようだった。例えば、本当に止めて欲しいとは思ってない俺の「待って」とか。だから今回もスティーブは止まることなく俺の首筋に唇を寄せる。その擽ったさに身を捩るが、彼にがっちりとホールドされているためまともに身動きは取れない。そもそも自分の脚の間にスティーブの脚が差し込まれていて元々逃げ場などないのだが。

「(やばい、勃ってきてしまった)」

やわやわと揉まれる感覚に自然と息が荒くなり、甘い緩やかな快感がじんわりと広がってくる。お、お尻を揉まれるだけでこんな気持ちいいなんて…!完全に不覚である、どうしよう、このままじゃ本当に、

「っあ!」
「ナマエ」

なんて考えていたのも束の間、そのたくましい太腿で下腹部をぐ、と押し上げられる。思わぬ刺激に声が出た俺を見てスティーブはベッド、行こうか?なんて甘い声で耳元で囁いてくれた。それに背筋がぞくぞくと震える。
ああ、このままスティーブに身を任せてしまいたいけれど、でも、

「ごめん、おれ、こんな……」
「ん?どうして君が謝るんだい?」
「だって、せっかくスティーブがコーヒーを淹れてくれたのに、冷めちゃうから、」
「………」

このまま続けたいけれど、そう思って言葉を続けたがそれにスティーブは黙ってしまう。
ああ、久しぶりだこの感じ。また変なことを言っただろうかと幾ばくかの不安に襲われていたら、スティーブはやがて笑みをこぼした。

「ナマエ、僕は君のそういうところ、本当に好きだけれど」
「え、」
「じゃあ、君はどっちがいい?このままやめて僕とコーヒーを飲むか、それとも寝室に行くか」

どうする?
静かな微笑みをたたえて、スティーブは俺の髪を撫でながらそう言って。

「……(そんなの)」

そこでようやく気がついた。
そんなの、決まってるじゃないか。

「……ベッドがいい」
「僕もだ」

ぼそぼそとようやく口に出された言葉に触れるだけのキスが落とされて、俺は応えるようにスティーブの指に自分のそれを絡めた。










20190504

ずっとさきの話 大作戦のその後



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