01


こなたの特性其ノ壱。お兄以外の人や物に触れることができない。其ノ弐。お兄と、お兄の周りの物には触れることができる。其ノ参。気を抜くとすぐに身体がバラけて雲散霧消する。其ノ肆。寝顔が死人みたい。其ノ伍。お兄のこと大好き。でもお兄には教えてあげない。

「お兄」
お腹が空いたから、お城中を駆け回ってようやくお兄の姿を探し出したこなたは、いつもみたいにだらしなく羽織りを着崩した後ろ姿に声をかけた。こなたの背丈ではやけに廊下が長く感じて、ここに来るだけでもすぐに息があがってしまうけど、お兄が心配してしまうから平気な振りをしてみる。お兄は文字通り突然そこに現れたこなたに特別驚きもせず、後ろ髪をひらめかせながら振り返って、にこぉと笑顔になってじっとこなたのお顔を見つめた。出会っていきなりだけど、たぶん視診してる。身長差が著しいから重い頭を頑張って首で支えて見上げるこなた。お腹が空いたの。こなたご飯食べたい。お兄なら言葉にしなくても伝わると思うから、こなたもじっと見つめるだけ。こなたとお兄は以心伝心なの。なんてったって血の繋がった実の兄妹なのだから。こなたには若干別のナニカも混じってるけど。
「ん。おはようさん、赤琉。よしよし、今日も良い調子だねェ。おいで。お兄が抱っこしてやる」
「……」こなたもう十五歳。
「ほらおいで」
「こなた、もう」
「お兄の言うことが聞けねぇのかい?」
にこやかに笑って両手を広げるお兄。お兄はしょっちゅうこなたの言うことを無視する。仕方がないから駆け寄って、こちらこそ広げられた両手を無視してお腹に抱きつけば、お兄は何が面白いのか「わはは」と笑ってこなたの頭を犬みたいにわしゃわしゃ撫で始めた。こなたの癖毛はお兄と同じに見えてお兄よりはマシなの。でもやっぱりお兄と同じにしたいから、今は頑張って伸ばしてるところ。
「おにい」
「兄上が今日は暇をくれたからよ、赤琉のとこ戻ろうとしたらおまえさんの方から来てくれるなんて、よっぽど寂しかったみてぇだなぁ」
「……」
べつにそんなことないけど。
「今日は俺たち以外誰もいねぇみてぇだし。この静寂だけで、あのやかましい奴らが不在なことなんて手に取るように分かるってもんだぜ。なぁ赤琉?」
「……」
「にしても腹減ったなぁ。飯食おうぜ飯。そうそう、最近俺たちの働きで結構儲けてんだし、たまには城下の良いもん食ってもドヤされねぇよな。な!」
お兄はこなたが喋らなくても永遠に喋り続けるから飽きなくていい。でも本当は半分くらい聞き流してる。お兄の声は念仏みたいにぼんやり耳に入ってくるだけで心地いいの。でもおかしいな、念仏はすぐ飽きるのにお兄の話は飽きないなんて。今度あにうえに聞いてみよ。とか考えていたら、お兄はこなたの手を引いて廊下をずかずか歩き出した。お城の外にいくなら窓から出た方が早いのに。どこに行くんだろう。首を傾げるこなたを連れてお兄が向かったのは、いつもみんなで雑魚寝してるおおきなお部屋。忘れ物かな。しょうがないなあ、お兄は。でもなんだか様子がおかしい。忘れ物を取るだけならそんなことしなくてもいいのに、お兄は襖をぴしゃんと閉めて、刀を三本とも床に置いてしまうから、こなたはお兄が何をしようとしているのかよく分からなくなってしまった。外に行くんじゃなかったの?襖の前で立ち尽くすこなたを見てにこやかに笑うお兄。あ、前言撤回。こなたお兄が考えてること分かっちゃった。なんてったってこなたとお兄は血の繋がった実の兄妹なのだから。お互いが考えてることなんて手に取るように分かる。こなたとお兄は以心伝心なの。
「赤琉。何してんだよ。そんなとこで」
「……」お兄はそんなことないのかも。
お兄は昔から病弱なこなたのことになると何も考えられなくなるくらいの心配性で、それはこなたが心配になるくらいの心配性で、いつもこうして身体に異常がないかをチェックしてくれるのだ。優しいお兄。たったか駆け寄ってお兄のまんまえに座るこなた。お兄の周りの床は実体があるから気をつけないと足がなくなっちゃうから慎重に。お兄はいつもみたいにこなたの手を取って足を取って全身を触診し始めた。こなたはいつもと変わりないのに、お兄の触診はいつも丁寧で少し緊張する。
「……」
「なんだぁ?そんなに見つめて」
お兄が笑ってる。お兄は性格が良いから目に光がないけど、こなたはそんなお兄が笑ってる顔が好き。だからなのかな。お兄はいつも笑ってる。正直きもちわるい。うそ。でも理解できない。面白いときだけ笑えばいいのに。表情筋おばけ。こなたはそんなふうにできない。できないから、せめて心の中で笑ってみた。
足を診てもらっている間はこなたの手が暇だから、お兄のお口を隠すひらひらをぶちぶちとっぱらって、すりすりと頬を撫でてみた。お兄はどこか嬉しそうに頭を傾けて、こなたの手に擦り寄るようにしながら、こなたの足首をいろんな方向に折り曲げる。痛きもちい。
「うんうん。良い調子だ。お次は……」
お兄はこなたのからだをごろんと押し倒して、片方の膝裏を持ち上げた。ふとももの付け根がぎゅうぎゅうみしみし音を立ててるような気がするけど、お兄はお構いなしに上から体重をかけてくる。鬼畜。鬼いちゃんだけに。でも我慢しなきゃいけない。お兄の触診は整体も兼ねているから、我慢しなきゃいけない。あと、このあとのための準備運動も兼ねているから、我慢しなきゃいけない。……。
両方のふとももの付け根を上下左右になぎ倒されて気絶したあとは、海老反りになったり身体中を捻られたりしてお兄にとことんいじめられた。でもこなたはえらいから泣かなかった。その代わりにお兄に抱っこされながらぜえぜえ息をした。結局抱っこされてる。
「赤琉は相変わらず体力がねぇなぁ。そんなんじゃお兄、心配でますますほっとけなくなっちまう」
はあ、はあ。
「おっと、息辛ぇな。ゆっくりな」
優しく背中を撫でてくれるお兄。なんかいい気になって子守唄うたってるけど、たぶん今は寝かしつけられるときじゃないと思う。でもお兄の声は心地いいから、すぐに呼吸は元通りになった。お兄はにこやかに笑ってる。じいっと見つめていると、まさか本当に今の一瞬で眠気に襲われてしまったのかあくびが出てきた。お腹空いてるんだけどな。このまま寝直すのも悪くないかも。今日は一日何も無いし、何もしない日があってもいいよね。
目蓋をおろして目をこするこなたに、お兄はびっくり仰天したようにその手を掴んだ。
「おいおい、起きたばっかで寝るんじゃねぇ赤琉。まだ終わってねえぜ。まったく、しょうがねぇなあ」
お兄はこなたをまた犬みたいにわしゃわしゃしたあと、こなたが膝の上からずり落ちないように支え直した。そして、さっきこなたにひらひらを取られて顕になったそのお口で、こなたの名前を呼んだ。
「……ん」
おにい。目を開けると飛び込んで来たのはお兄のお顔。唇がだんだん近づいてきて、こなたのお口を塞いでしまった。微笑みながら、反応を見ながら弄ぶように何度か触れたあと、あーんと小さく開いたお口がこなたのくちびるを食べるのと同時に、さっきみたいに押し倒された。いつのまに用意していたのかそこにはちょうど枕があって、ぼふっと倒れ込むのと一緒にお兄の肘が頭上に落ちる。おにい近い。
お兄に襲われてる。口内を好きなように舌で舐められ掻き回されるから、こなたはあっという間に眠気が覚めてしまった。お兄と一番最初にこれをした時は、息してるのに人工呼吸なんて変なのと思ったけれど、これも必要なことって言ってた。お兄が言うならそうなんだと思う。お兄の前髪がまつ毛に当たって、後ろ髪が首筋に当たって、なんだかくすぐったい。お兄、こなたの足のあいだで膝立ちして前のめりになるから、真っ白な羽織りがだんだんこっちに向かって落ちてきた。おにい、おにい。
お兄は人工呼吸をしながらふとももを撫でている。さっきふとももはさんざん触ってたのにまだ足りなかったのかな。と思ったら、だんだん手が登ってきて心臓の上を揉み始めた。お兄の手がおおきいのか、こなたのがちいさいのかよく分からないけど、簡単に覆い隠されてしまうものなんだなぁ。触診はまだ終わらない。お兄の羽織りをぎゅうっと掴んだら、やっとこさお顔が離れた。舌の先から垂れたよだれを舐めとるお兄。お兄はにこやかに笑ってる。
「ん?」
「……おなか、すいた」
「そうかい。俺もだ。朝餉といこう」
お兄は言ってることとやってることが噛み合わない時がある。先にごはんを食べたいのに、そんなこなたのことなんて知ってか知らずかお兄はこなたのお着物をお魚さんみたいに剥きはじめた。さっきせっかく一生懸命、たったひとりで身支度をしたところだったのに、少し残念。それより、お兄はこなたのことが分からないんじゃなくて、知らぬふりをしていじわるしているだけなのかもしれない。だって今のお兄、とても愉しそうに笑ってる。こうなったらもうお兄はおしまいだ。お兄は鬼に取り憑かれてこなたのことを平らげる。あ、あさごはんこれ?言ってること矛盾してなかった。おにい、天才。でもこなたのごはんはどこにあるの。
「……おにい」
「ふふ、腹の虫が聞こえた。よっぽどか」
「うん」
「そうかそうか。なぁ赤琉。俺はなぁ、おまえさんから出る音を聞くのが好きなんだ。声も、息遣いも、臓物の音も、これ全部生きてなきゃ出ねぇ音だ」
お兄のことは全面的にすきだけど、ひとこと言わせてもらうときもちわるい。
「ふーん……こなた、いきてる?」
「ああ。それをな、今確認してんだ」
こなた生きてるのに。わざわざ確認するなんてお兄は心配性だなあ。
何のことを言っているのかというと、前にこなたは一度死んだことがあるらしいんだけど、お兄はそれに対してこなた以上に恐怖心を抱いているらしいのだ。自分のことなのに他人事のように話すのは、これが全部お兄の妄想だからでこなたが死んだなんて、ただ寝て起きただけなのに、こなたの寝顔を死体と勘違いしたお兄が変なだけなのだ。でもお兄はそのことをとても気にしてきて、それからお兄はくっついてじゃないと寝させてくれなくなったくらいだ。お兄はこなたとよくくっつくようになった。つながるようになった。今となっては今朝みたいに目を離す時間も増えたけれど、少し前まではどこぞのお姫さまみたいに朝から晩まで一緒にいなきゃだめだったし、数刻に一度鼓動を確認されていた。正直鬱陶しかった。お兄だからまだ許せたけど。
「はぁ……あったけぇなおまえさんは。赤琉、息してみろ」
「……」してる。
「深呼吸だ。すーはーって」
今、お兄は直接肌に耳を当てて心臓の音を聞いている。お兄は変人だから心臓が好きなのだ。だから音を聞くだけじゃなくて、皮膚越しに口付けたり、口に含んだり。その間こなたは何をしていたかというと、お兄の癖のある髪の毛を撫でたり、天井を眺めたり。この前、お兄にそんなにこなたの心臓が好きなのって聞いたら、心臓も肺も肝臓も胃も腸も子宮も骨も脳味噌も肉も全部好きだって言われた。お兄の言うことは全面的に信じてるけど、人間の体の中にそんなに入ってるわけないじゃん変なの、って言ったら馬鹿みたいに笑い飛ばされたっけ。ムカついたから、お兄がそのへんの人間を解剖するところを見せてもらった。本当に入ってた。
「俺が今まで見たきたどいつの体よりも、赤琉のが一番綺麗で包容力があって……細っせぇけど……可愛いなぁ……」
「……」
お兄はずっと心臓を愛でている。
「おにい」
「……うん?」
「……なんでもない」
お兄がそんなに顔を近づけて頬ずりをしていると、お兄のながい後ろ髪が肌に当たってくすぐったいのだ。でもそんなことは聞き流されるだろうから言わなかった。そしたらお兄は何を勘違いしたのか、こなたの顔を見てにんまりと笑う。……なんか変なこと言ったかな。「ああ、可愛いねェ、おまえ……なんでそんなに可愛いんだ、おまえさんは」そんなことを呟きながらこなたのお腹に手を滑らせる。脇腹と腰とお尻を経由して、すすすとたどり着いた先、お兄は取っておきの風呂敷を開けるみたいに肌着の紐を引っ張った。はらりと床に落ちる布。無遠慮に開かれる足。あらわになるあそこ。着物を敷布団代わりに、いつの間にかほとんど全裸にされたこなた。あにうえたちがいつ帰ってくるかも分からないのに、はしたない格好をしているこなた。お兄はにこやかに笑ってる。なんでいきなり、なんて思わない。お兄はいつもいきなりこうなる。
ちなみに前に、脱がなきゃだめなの?って聞いたら、触診をするのは地肌じゃないとダメなんだって、お兄が言ってた。お兄が言うならそうなんだと思う。でも、よく考えたらお風呂は一緒に入っているから、あんまり恥ずかしくなかった。
「おねだりが上手くなったよねェ、赤琉。お兄にしてほしいことは、なんでも言えよ。今みたいにさ」
「……」
こなたは何も言ってないのに、何を言っているんだろう。
お兄はこなたの横に四つん這いで移動して、片手で心臓を撫でながら、片手であそこをなで始めた。花びらの上の水滴を撫でるように優しく触れられている。さっきまでもくすぐったくて少し身動ぎしていたけど、だんだん体の中が熱くなってきた。足を閉じようとするのをやんわりと制止しながらも、こなたのお顔から片時も目を離さず、上と下の弱いところを反応を見ながら的確に撫でてくる。こなたはお兄より人間の体のことが詳しくないから、今お兄が何をしているのかよく分からないけど、もう何回も同じことをしてきたから慣れっこだ。
「……ぁ、う」
うそ。何回されても、この不思議な感覚は慣れそうにない。お兄に触られると勝手に声が出るし、体が熱くなるし、無意識に体が動いて変になる。頭の中がぼんやりして、やめてほしいのにやめてほしくない。もっとしてほしい。こなた、お兄に触られるの好き。
「気持ちいいなぁ、赤琉」
「……ん、ん、……」
「こんなに濡らして……やらしい音だ」
「ぁ、う……あ、む」
「ああ、指噛むんじゃあねえよ。噛むならこっちだ」
きもちいいのに耐えるために、腕を胸に引き寄せ指先を口に入れようとしたら、すぐにお兄に止められて、お兄の人差し指が唇を割って突っ込まれた。本気で食いしばろうとしていたわけじゃないのにもっと噛めなくなっちゃう。がんばって噛まないように舌を動かすこなた。同時にあそこの手も中に侵入してきた。上顎に、肉壁に指を擦り付けられて、今度こそ上も下もかき乱されていく。さっきよりも明らかに感覚が敏感になって、視界がぱちぱちしてきた。
「ぅ、う、……っ」
「いいねェ、どっちのお口も俺の指にへばりついてくるぜ。良い反応だ。その調子……」
「ん……っんぅ、……っ♡」
「その調子、その調子。可愛いねェ、いつでも好きな時にイって良いんだぜ。遠慮すんなよ。お兄はおまえさんが気持ちよくなってるところを見てるだけで幸せなんだ。まあこのあとが本番なんだが……泣き顔も最高だなぁ、自慢の妹だよ、おまえは……俺だけの」
お兄がなんか言ってる。こなたが息継ぎをするたびに、指がどんどん増えていく。上も下も、もう何本入っているのか分からない。舌が押さえつけられているからろくな声も出せなくて、ただお兄の言葉をぼんやりと聞き流しながら、中途半端に開いた口や目やあそこから色んな液体が流れ落ちるのを感じる。こなた、お兄の前ではこんなはしたない姿になっても体が消えちゃわないんだから、こなた、お兄のことが本当に好きなんだなあ。それにお兄はやっぱりこなたのことならなんでも分かってる。お兄は適当に手を動かしているようでいて、こなたの感覚神経を完ぺきに掌握しているのだから、こなたがどのタイミングできもちよくなっちゃうのかお兄には丸わかりなのだ。だから、お兄が「そら、今だ」と言ったところで、遂に待ちわびた感覚が全身を駆け巡る。きもちい。きもちい。おなかの奥がぎゅうぎゅうになって、足が持ち上がって、あらぬ声を出すこなた。お兄は優しげな顔をして目を細めた。
「上手にイケたねェ。えらいえらい」
息切れ。痙攣。余韻に浸っているのを手伝うように、ビクビクするおなかのなかで未だに指を動かすお兄。今のこなたには刺激が強くて力なく首を振ったら、もう片方のよだれまみれの手で頬を撫でられた。ひんやり冷たいけど、よく考えなくてもこれ、こなたのよだれだからなんかやだ。お兄ってそういうところある。でも、気づけばお兄の指に浅いけれども小さな歯型がついていたから、文句は言わなかった。
呼吸が落ち着いたところでようやくあそこから指を抜いたお兄は、当たり前のようにそれを自分のお口に含んだ。しかもこなたに見せつけるように舌を突き出しながら指を舐めている。お兄ってそういうところある。
「赤琉の汁、今日もうめぇなぁ」
「きもちわるい」
「気持ちいいの間違いだろ?」
「きもちわるい」
きもちわるい。お兄の言うことは全面的に信頼しているけど、こればかりはこなたが正しい。でもお兄はそんなことを言われたところで傷つくような一般人ではなく、変人なので、やっぱり笑ったままで。指を粗方舐めとったあとすぐに自分の腰紐を解き始めた。普段はあと何回か指できもちよくされるのに、今回はもうお兄が待ちきれなくなってしまったのかもしれない。それもそのはず。こなたこそお腹が限界だ。もうお腹が減りすぎてお兄のことを食べちゃうかもしれない。鬼だけに。
「運動したあとの飯は絶品だもんな?赤琉」
「……」
「ああ、俺にとっては……赤琉がこの世で一番の絶品だけどねェ」
「……」
お兄の目、きもちわるい。
「気持ちよくしてやるさ。今度は、さっきの何倍もだ」
お兄は動けないこなたの足の上にまたがって、自分で自分をしごき始めた。前に何してるのって聞いたら、ごちゃごちゃ説明されたけど、結論だけ言うとつまりいれるまえに固くするんだって言ってた。どういう仕組みなのか今もよく分かってない。こなたはお兄がいつもお世話してくれるから、お兄の大事なところにはあんまり触ったことがない。気になるけど、いつも見るだけ。でも、お風呂でお兄の体を洗うときにたまにお兄のほうから握らせてくる。今は清潔だからって。じゃあ今この時は清潔じゃないのかな?よく分からないけど、お兄は汚くたってお兄だからなんでもいいや。
「ちょっと待ってな。昨日、酒ガバ飲みしたからか?頭はバカみてぇに興奮してんのによ」
「……」
「勃たねぇ」
お兄は毎日のように飲んだくれだから関係ないと思う。それより、今日いつも以上に変人ぶりが加速していたのはお酒が抜けきっていなかったかららしい。しばらくお預けにしたほうがいいと思う。
「んな顔すんじゃねぇよ。赤琉も早く飯食いにいきてぇんだろう?お兄、がんばるから見守っといてくれよ」
「……」
お兄、情けない。いつもなら羽織りくらいはすぐに脱いでしまうのに、いつまでも着込んだままだったのはそういうこと?それはともかく、お兄にはここでやめるという選択肢はないのだろうか。なんとなく、このまま時間を過ごすのは億劫に感じたので、馬鹿にする意味でお兄のあそこを寝転んだまま踏みつけてみた。両足で交互に。正確には近くを蹴っただけだけど。そしたら、お兄のあそこがむくむくと大きくなった。なんで?お兄ってばひとをいじめるのが好きなのに、本当はいじめられるのが好きなのかな。お兄、きもちわるい。へんたい。
「おい赤琉」
お兄はにこやかに笑ってる。
「お兄を蹴るたぁ何事だよ?」
「……」
「……。はぁ〜。はいはい、おまえさんの勝ちだよ。足開け」
お兄、急に情けなくなった。笑ってはいるのになんだか不服そうな様子で、こなたが動くのを待たずにぐいっと思いっきり膝を開いた。太ももはさっきたくさん解したからもう痛くないけど、ちょっと乱暴なのやだ。怒らせちゃったかな。
入口にあてがい、何往復か滑らせたあと、さっそく中に入ってきた温かいお兄。ずぶずぶ。おなかのなかはいつもより解してないからきつきつだけど、もうあんまり痛くない。これまでにもたくさん運動してお兄が痛くなくしてくれたから、こなたのあそこは全部の感覚がきもちいいのに変換されてしまうのだ。
「……あぅ……」
「んん、寝起きだからかな……?今日は特別熱いんだねェ……溶けそうだ」
先端から徐々に奥深く沈んでいくお兄。さっきみたいに太ももの裏に体重をかけられて、前置きもなくずりずりお肉同士が擦れ合う。つながったまま何度も出し入れする単純な行為のはずなのに、あっという間に体がよじれる。お兄は魔術の使い手なの?
「ん、ぁ……ぅ、う♡」
「きもちいか?」
「ぁ、っあ、はぁあ……♡」
「きもちいねェ、もっとよくなろうねェ」
お兄が動く度にきもちいいところに当たって声が出てしまう。きもちい。きもちい。ゆらゆら揺さぶられる足の先に力を入れながら、枕に横顔を埋めてぎゅっと目をつむるこなた。口呼吸が止まらなくてお口が閉まらない。でも下のお口はぎゅうぎゅうにお兄のものに吸い付いて、全身の神経がイカレていくような感覚に陥る。
「ぁ、はぁ♡おにい……っ♡ちゃ、っ♡」
「はいよ、お兄はここだ」
「……んっ、ぁ、♡……っ、はぁ♡」
「きもちいいんだねェ……お兄のおちんちんがそんなにいいかい」
「っ、ん♡……ぁん♡、……っうん♡」
こなた、お兄だいすき。
「もう他のじゃきもちよくなれねぇな?」
「っ♡、……、ぁ、……ぁ、〜〜〜っ!♡……はぁ、っはぁ」
「……っああ、きつきつだ。はぁ、……もうちょっとがんばれるかい?」
あっという間に腰がガクガクして頭の中が真っ白になったのに、お兄は止まる気配がなくて、それどころかこなたが逃げられないように太ももをそれぞれ両腕でガッチリ抱きしめながら何度も何度も打ち付けてくる。床にへばりつくだけじゃ快感をどこにも逃がせない。行き場のない手がお兄に向かって伸びるのに、お兄は軽く握りしめるだけですぐに離してしまった。いじわるお兄。手、繋いでたいのに。足の位置を少し変えられたことで、文句を言う余裕もなく再び次の波に襲われる。
「ゃ、ゃ……〜〜〜っ!♡はぁ、はぁあ……♡ん、ん、っぁん♡」
きもちい。きもちい。これ以上きもちよくなると頭がおかしくなるのに、もうおしまいにしたいのに、お兄はやっぱりやめるどころか覆いかぶさってきて、さっきと同じようにこなたのお顔をじっと観察しながら「さあさあ、あと何回イケるかねェ……」と舌を出してケタケタ笑いだした。お兄が鬼に見えた。今に始まったことじゃないけど。お兄、やっぱり怒ってる。
「怒ってねぇよ、いつも通りだろ?ほら……」
「っぁ゛♡……っはぁ、ぁ、♡っんぁ♡」
「今日はいいんだ。仕置はまた、別の日にしてやるからな。……ん、おまえさんの体調がすこぶるいい時じゃねぇと、間違いがあったらいけねぇ、から……」
よく考えたら、今日は刀を使ってないから、これでもいつもよりマシな日なのだ。見えない糸で手を縛られたり、全身の感覚を鋭くさせられたりしているわけじゃない。こなたの体はもうお兄によってとことんいやらしくされてしまった。尚更お兄は酒酔い中だから歯止めが効かないのだ。お互い犬のように荒い呼吸なのに、まだ余裕そうなお兄とは違い体力のないこなたはもはや息も絶え絶え、夢か現か境目があやふやになり、視界が朧になってきた頃、お兄はつながったまま器用にこなたの片脚を動かし、ごろんと横になった。首と床の間にむりくり腕を突っ込んで腕枕して、背中にぴったりくっついてきた。お兄、この体勢が好きなの知ってる。
「……いい光景だ」
お兄の声がちかい。
「赤琉、こっち見ろ」
お兄の息が耳にあたってぞわぞわする。片脚を持ち上げられて後ろから突かれてる。さっきまでとは一転、ゆっくり、ゆっくり、焦らすように。こなたに動く余裕がないことは分かっているのか、言いながら腕枕する手でむりやりあごを動かすお兄。呼吸のままならないお口に追い討ちをかけるように塞がれた。
「ん、んっ、ん……っ♡」
お兄、だいすき。
「なんだぁその面。煽ってんのかい?余裕そうだねェ……もっと苛めてやろうか」
「ち、がう……っ♡おにい、……っ♡」
「なんだい?」
いつものやつ、言わないの?
「やっぱりおまえさん、おねだりが上手くなったよ……。いいぜ、好きなだけ言ってやらァ。ほれ、すき、すき、だァいすき♡ もっと言ってほしい?しょうがねぇなぁ、欲張りなやつ」
こなた、何も考えられないはずなのにお兄はこなたが考えてること全部分かってるみたい。何も考えられないのに、お兄の声だけははっきり聞こえた。
「一生愛してやる」
こなたの顔を覗き込みながら、こなたの耳元にお口を近づけて、何度も何度も恥ずかしい言葉を囁くお兄。言ってくれるの嬉しいけど、いつおねだりしてもお兄はこなたの意識がはっきりしない時だけに伝えてくるから、こなた、返事のしようがなくて困ってしまう。お兄、一生と言うからにはこなたは生きてるって認めてるようなものなのに、そういえばお兄はこうして繋がらないとこなたが本当に生きてるかどうか判断できないって、前に言ってた。本当かどうか知らないけど、まあお兄が言うならそういうことにしておいてあげる。あとで、謝らなきゃ。


01top