22


このアローラ地方のポケモンリーグの創設者であり、管理者でもあるククイ博士に打診をかけてからすぐのこと。島巡り、もとい神聖な伝統文化に参加するための許可が降りたので、おれたちはひとまず数日間は最初の島であるメレメレ島に滞在することになった。
以前までのおれなら強さを求めてチャンピオンになるため生き急いでいたところもあったが、今はセキルと時間を過ごすことのほうが大事に思えるようになった。から、観光も充分に、ゆっくり島巡りを始めることにした。

アローラは他の地方とは違いポケモンリーグの仕組みが異なっている。普通ならジムに行ってバッジをもらうところを、アローラではぬしポケモンやしまキングを倒すことで次に進むことができる。
そういう特殊な一面もあるから、きっとセキルの由縁の場所でなければここに来るのはもっと後回しにしていたと思う。戦う目的ならそれこそガラルの方が盛んだしな……。強くなりたいという気持ちには自分の中に際限はないから、いずれはそこにも行って挑戦してみたい。

「スグくん、お姉さまがお乗りになった船、もうそろそろ到着する時間じゃない?」
「う〜〜〜……そうかも……」
「早くお支度しよ。お待たせしちゃ悪いもん」



「はじめまして、ごきげんよう。スグリくんとお付き合いさせていただいている、セキルといいます」
「………………えっ」
「私、スグリくんのお姉さまとずうっとお会いしてみたかったの。よろしくおねがいいたしますね」


「えっ?……えっ?……ええええ!!!!」
「ねーちゃんうるさい……」
「ス、スグ、スグリに彼女が〜〜〜!?」

驚いた時の反応としては百点満点のリアクション。でも身内のおれからしたらこんなの、恥ずかし過ぎて走り去りたい。


「あんたそんなこと一言も言わなかったじゃない!」
「別に、言う必要ないし……」
「ハァ〜!?何がよ!早く言いなさいよ!あたし何にも心の準備できてないわよ!?」


「まあいいわ。セキルさんと言ったかしら?あたしはゼイユ。よろしくね」
「はい、ゼイユお姉さま」
「あらま!お姉さまだなんて、分かってるじゃない。さっそくだけどバトルしなさい!あなたの腕が気になるわ」
「ちょ、ちょ、ちょ。やめてねーちゃん。セキルはバトルさしない人だから」


「え?あら、そうなの?あんたの彼女なら、相当の腕前なのかと思ったけど……ますますどういう経緯で知り合ったのよ?あたしに詳しく聞かせなさい!」
「ねーちゃん、同僚の人と来てるんでしょ?放ったらかしでいいの……?」
「いーのいーの、あたしにとっては同僚との仲よりあんたの恋愛話の方が気になるわ!珍しすぎて」
「……嫌われるよ?」
「うっさいわね」




「ふぅん。道に迷ったセキルをスグが助けて、それがきっかけで。思ったよりもまともな出会い方だったわ。この子、いつかろくでもない方向に道を外すんじゃないかって心配してたの。ほら、すっごい拗らせてたから」



「スグ、気が小さくてバカでどうしようもないやつでしょ?こんなののどこが気に入ったの?」
「ひでえ言い草……」
「いえいえ。スグくんは優しくて、かっこよくて、あたたかくて……良いところがたくさんで毎日ときめいています。心臓がもたないくらい」
「へえー!ふーん!もうそんなに好きなんだ、この子のこと。いい子なのね。スグ、あんたにはもったいないんじゃない?」


「ゼイユお姉さま。お願いがあります」
「なあに?なんでも聞いてあげる。あたし、もうセキルのこと結構気に入っちゃった」
「本当ですか?よかった。それで、お願いっていうのが……」

「スグリくんを私にくださいな。私、彼のこと大切にしますので」
本当に言った……。
「そんなこと?いいわよ、好きな時に持っていきなさい。私が許可してあげる」
「やった!」
「その代わり、あたしのことは単なるお姉さまじゃなくて、ゼイユお義姉さまと呼ぶのよ!わかった?」
「もちろんです。ゼイユお義姉さまっ」

「こんな年になってこんなに可愛い義理の妹ができるだなんて、最高ね!スグ、あんたが弟でよかったって、今思ったわ」
「今……」

「あんたたち、結婚式には必ず呼びなさいよね。あたしも美しく着飾って駆けつけちゃうんだから!」
「はいお義姉さま。ぜひいらしてくださいな」
「場所とか会場はまあ、好きに選んだらいいけど、じーちゃんとばーちゃんも来れるところを選んであげなさい?あの二人、きっと感動しすぎて涙止まらないわよ〜〜〜?」
「はいお義姉さま。私、スグくんの他のご家族の方にもはやくご挨拶したいです」

「ま、待って……おれ、まだプロポーズさしてない……勝手に話……」
「ハァ?この意気地無し!こんな良物件、さっさとしないと誰かに奪われちゃうじゃない!なんならあたしがもらってあげようかしら?」
「は、はあ?そ、それだけは嫌だ……っ」



「ごめん、ねーちゃんがあんなんで……びっくりしたろ」
「そんなことないよ。なんだか楽しい人だったね」
「うるさいだけだべ……」


「それに、スグくんのこと、すごく大切にしてくれてるみたい。……私にはわかるよ。大事にしなきゃね」

「……セキルにはおれがいるんだから、そんな顔しないで。な?」




22top