アローラでオレと似たやつを見つけた


 色々あった……なんて言うと、あまりにも軽いように思えるが、とはいえ当時のことを一言で表すならばその言葉がまず頭に浮かぶ。ケガをした相棒のために奔走している最中、なぜかコライドンを連れた謎の転入生が目の前に現れ、共に旅をする中でオレは再び大穴に足を踏み入れることになった。
 結果的には「全て終わったこと」がオレを待ち受けており、嫌な思いをしたくないからと目を逸らし続けてきたオレにできることなんか、かつての思い出にも満たない記憶に思いを馳せることくらいだった。

「ペパー!お願い、旅行つきあって!」
「旅行?なんだいきなり」
「なんかね、オモダカさんからアローラリーグにおつかい任されちゃって。ついでに観光もしていいですよって言って貰えたから、一緒にどう?」
「んー、まあヒマだからいいけど。いつだ?」
「あさって!」
「はぁ?おま、無計画ちゃんか?」
 “色々あった”オレだけど、なんとかアカデミーは卒業することができた。アオイとネモとボタンは揃いも揃ってポケモンリーグで働き始めたらしいが、オレはマフィティフのことがあったから、ますます食材集めに楽しさを見出し、精を出すようになった。
 べつに料理人を目指しているわけじゃない。自分と、マフィティフと、あと親友たちだけが喜んでくれるような特別なものが、もっとたくさん作れるようになればいいと思ってのこと。つまりキャンパー(ニート)をやっている。
 そんな時、アオイに誘われたアローラ旅行。アローラといえば自然豊かで、古き良き文化が根強く残っていて、名物のアマサダってやつが美味しいらしい。正直暑いところは勘弁だが、観光名所だし行けばきっと楽しめるところだ。それに、まだ見ぬ極上の食材にも出会えるかもしれない。
 ま、親友からの頼みだし最初から断る理由なんてないのだが。ということで急遽決まったアローラ旅行。単なる息抜きになればいいと、ただそう思っていた。

「……あー、なんだ、この胸のザワつき」
 あの出来事から数年経ったことで、毎日を平静に過ごせるようになったが、その一方でオレの心はまだあの大穴に捕らわれているらしかった。この地はほとんど探索し尽くしたも同然だから、早く他の地方に進出してみたいと常日頃から思っていたのに。
 パルデアから離れることにこんなにも不安を感じるとは。船の上、強い海風を浴びながら遠ざかる故郷を眺める。無理やり思考を閉ざしていたら、様子を見に来たアオイが心配そうに覗き込んできた。
「船酔い?」
「いや……」
「大丈夫、吐いてもいいよ!今ネモとビデオ通話してるから!」
「はあ!?それの何が大丈夫だぁ!?」
『やっほー!ペパー、元気してる?昨日ぶりだけど。いくら可愛いアオイと二人きりだからって、手出したらボコすよ!』
「余計なお世話だ!」
「そんなあ、私たちはべつにそんなんじゃないって〜〜。ねー?」
「お前らうるさ……あーもう、マジの船酔いちゃんになったかも、これぇ」
 船は乗客の意思に関わらず、どんどん海上を進んでいく。欄干に突っ伏して大きなため息をつくオレに、さすがのアオイも優しく背を撫でてくれた。
「中入る?」
「いや、風に当たってる方がいい……」
「そっか。ネモは?始業時間じゃないの?そろそろ」
『まだ平気平気!もうちょっと話してよーよ、電波が許す限り。あっ!ボタンやっと来た!こっちおいで、今アオイとペパーと話してて〜!!』
 朝っぱらからテンションが高いネモに苦笑いを浮かべるアオイ。ほんと、元気なやつ。こいつらと話をしている時は、不思議と落ち着くんだよな。なんかムカつく。








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