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あれ、なんかあっという間に半分過ぎた。

「ニアちゃん、目ぇ死んでんで」

華の高校生、全て終わってから後悔したくなくて毎日を大切に過ごそうと心がけてきたはずなのに、気づけば暦は二年生の夏休み。高校生活が半分終わり、ついでに夏休みも残り半分。ついこの間まで高校受験でうんうん唸ってた気がするのだけど、来年にはもう大学受験だ。
……うそでしょ?なにこれえ。時間経つの早すぎて無理。

「ニ〜ア〜ちゃん。どう?作業のほうは」
「うー、……ぼちぼち」

私の所属している服飾コースは、二年の終わりに一年間の集大成をファッションショーを通して発表する機会がある。それは服飾単体ではなく他のコースの発表も合同で行われるのだけれど、普通・特進コースの人にとっては数少ないイベント同然、この高校では文化祭に負けず劣らず伝統行事になっているようだ。
盛り上がる分、当日に向けての準備は年度の始めから開始しており、毎日が忙しい。つまり何が言いたいのかというと、夏休みでも絶賛作業中。企画、構想、制作、発表。一から全部生徒だけで完成させなければならないので、クリエイティブ系コースの人間にとっては今が一番大変な時期なのだ。

「大変そうやなあ。さっき廊下で服飾コースの子がめっちゃキレとったで。何の話してたかはよう分からんかったけど」
「……あ〜たぶん、全体的に進捗があれだから企画実行の子が怒ってるんだと思う〜……」
「それと比べたら美術コースは平和で気が楽やわ。ま、受験始まったらピリピリして地獄みたいな空気になるんやろうけど。あ〜やだやだ」

はるかちゃんのとこは余裕みたい。

「ニアちゃん、お腹減ったやろ?」
「……う〜」
「ニアちゃん?」
「……あ〜」
「あかん、ニアちゃん完全に伸びてるわ」
「……」
「しゃあない、ニアちゃんのためにアイス買うてきたけど溶けるともったいないから僕一人で食べちゃお」
「あいすたべる!」

ガバッと起き上がって乞食のようにはるかちゃんに駆け寄る私。この教室、せっかくクーラーがついているのに効き目が悪くてサウナとあんまり変わらないんだよね。まあ、廊下の端っこにひっそりと佇む小さな画材置き場だから、全然人来ないし秘密基地みたいで気に入ってるけれど。
机に腰かけるはるかちゃんの手にはパピコがキンキンに冷えていて、さっそくそれの片割れを受け取るとすぐに食らいついた。美味しくて冷たくてたまらん。

「ニアちゃん、髪伸びたなあ」

パピコを口に咥えながら手の甲で私の髪を撫でる彼。たしかに最近は意図的に髪を切ってないから、よく人のことを観察してるはるかちゃんに気づかれるのも無理はない。

「うーん、でもはるかちゃんほどではないよ」
「まあな。伸ばしてるんやっけ?」
「一応」
「いちおう?」
「う、うん」
「なんで?」

まさかそのまんま尋ね返されるとは思わず、口ごもった。髪を伸ばす理由ってそんなに気になるもんなの?
上手い言い訳が見つからず、なんともいえない空気が漂う。耐えきれなくなって自爆した。

「べ、べつにはるかちゃんとお揃いがしたいから伸ばしてるんじゃないもん……」
「ふぅん?」

目を細めて首を傾げるはるかちゃん。
めちゃくちゃ目を泳がせる私。
バレバレである。

「君ってなんでこんなに可愛いんやろな」
「……」
「けど、別に今もやろうと思えば全然できそうやん」
「……そう?」

おいで、と手招きをされたので彼の目の前で背を向けると、はるかちゃんは自分の分のパピコを私に手渡し、自前のハンカチで手についた水滴を拭った。さりげないことだけど女子力たかあ。私が感心している間に、彼は私の肩に届くか届かないくらいの後ろ髪をせっせと二つに分けていく。
……自分の分食べ終わったからはるかちゃんの分も食べちゃお。

「ねえ、私髪ゴム持ってないよ?」
「僕、ちゃあんと持ってんで」
「女子力たかあ」
「それほどでも」

彼のアイデンティティともいえる可愛いおさげは、もう昔からの習慣だからとっくに慣れたものだろう。私の髪の毛をいとも容易く編み上げると、肩に手を置いてくるりんと私を回転させた。
机に座るはるかちゃんの方が目線が上って何事よ。

「なんやねん、めっちゃ可愛いやん。もうずっとその髪型しといてや」
「でも私、自分の髪結ぶの下手だもん」
「せやったら僕にやらせて」
「いちいち大変でしょ?」
「大変やないもん」

もんって。
彼に促され洗面台の鏡で見てみると、思っていたよりもずっと短いおさげで吹き出してしまった。はるかちゃんに比べたらちょっと幼稚っぽいけど……まあこれはこれで可愛いというか、お揃いってやっぱりテンションあがっちゃうなあ。写真撮っとこ。

「はいちーず」
「ん」

私が急にスマホを取り出しても、女子力のたかいはるかちゃんはしっかりカメラ目線で写ってて可愛かった。


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