| サブストーリー/ペルセウス製造期間/若干の小説ネタ 「レストランフランソワと提携?」 小麦畑が開拓されて新たなる食文化が始まり、そうして目覚めたおもてなしの達人”フランソワ”が遂にレストランを開業した。龍水くんの創り出した通貨”ドラコ”がどんどんと流通し始めるこのストーンワールドの世界で、私にもそろそろ職業というものを手に入れる時代が来たようだ。気球造りの際に千空からプレゼントされたステージでワンマンショーを開いたり、ラジオのパーソナリティをしたりと、3700年前と変わらぬプチ芸能活動をしている。 そんなある日、龍水くんに呼び出されて私は彼の所有する”レストランフランソワ”に訪れていた。 「はっはー!そうだ!名前、お前の歌声は美しい!そしてそれはレストランフランソワに飾る華として欲しい才能だ!どうだ、この俺と提携してお前の歌声をここで披露してくれないか!」 凄まじい彼の貪欲な圧を真正面で受けた私は、七海財閥の御曹司である彼の持つオーラをハッキリと感じ取った。同じく貪欲に突き進む幼馴染の彼と似ているところがありはするが、やはりそれは別のものである。そして彼の提案は確かに魅力的なものではあるが、少し気になる点もある。 「私はいま石神村にステージを1つ持っているけれど、アナタのレストランでただ同じように歌うだけでは意味がないと思わない?」 「ふむ、確かにそうだな!つまりは、レストランフランソワで歌うに値する新たな魅力が欲しいというわけだな!!」 「いえす、話が早いね」 私のステージは今たった1つ、石神村に設置されている。そこで定期的に歌のショーや一人芝居なんかをして皆を楽しませているわけだけど、”レストランフランソワ”でもただ同じことをするのでは面白味も集客も変わる。そしてなにより、彼は私を”欲しい”と思っているのだ。だったら私が”行きたい!”と思う何かを用意してくれたらお互いウィンウィンというヤツなのでは無いだろうか。 「ならばそうだな、以前貴様が言っていたのを俺は覚えているぞ…」 「?」 「そう!名前、お前の欲するモノそれはッ!それは”ピアノ”だーーッ!」 その単語を力強い彼の声でハッキリと答えられ、私の胸が突き刺されるような衝撃を受ける。そう、それは正しく私が欲しいと思っていたモノの一つだった。舞台もそれを照らす照明もマイクも全て千空が揃えてくれた。前に突発的に出来上がったというバンドチーム” 「私の初主演は、天才ピアニストの少女だった…」 小学生の頃にデビューして、当初はすぐに役は回ってこなかった。けれどある映画の主役として抜擢され、その役がピアノを弾く役だったのだ。私は元々ピアニストでも何でもなかったので勿論弾いている風の撮影だけが必要とされる。けれどそれだけでは”彼女”にはなれなかった。私はその日からピアノを猛特訓し、極限まで”彼女”に近づいたのだ。それは役が終わった後も、今もしっかりとこの指が覚えている。歌うことを覚えた今、このストーンワールドで弾くことが出来たのなら、それは最高のパフォーマンスができるだろう…。 「でもさすがに本格的なグランドピアノは無理だと思…」 「欲しい!!手に入れるならグランドピアノだッ!そして名前、貴様の手と声で!レストランフランソワの華となるのだッ!」 「え、え〜〜〜…」 ジーマーで言ってる?と思わずゲンくん口調になってしまうほど、龍水はとんでも欲を盛大に吐き出した。ピアノは確かに欲しいし、できるならばグランドピアノがいいなーとかは思うけれど、グランドピアノが如何に繊細で重厚な造りをしているのか分かっているのだろうか。いや、恐らく彼はちゃんと理解している。だからこそ怖ろしいのだ。 「聞いたよ〜〜ん龍水ちゃ〜ん」 どこからともなくねっとりと間延びした声が聞こえてきた。そして気づいた時にはその男は既に目の前に居て、まさにコウモリ男の名を欲しいままにする。あさぎりゲンは超絶に”良い顔”をしていた。 「ウチの大女優呼ぶんならさぁ〜?ジャーマネの俺を通してくれなきゃ話にならないよ〜?」 「え、いつからマネージャーに…」 「グランドピアノなんて、またゴイスーなのを欲しちゃったねぇ龍水ちゃん、大体そんなの造れるの〜?できないよねぇ〜?つまりウチの天才科学者と天才職人の手が必要となるわけだ…だよね?」 突如と現れた”自称”私のマネージャーゲンくんはどうやら最初から話を聞いていたらしく、早速彼の巧みなる交渉が始まっていた。確かにグランドピアノほどとなると職人カセキおじいちゃんの手は必要となるだろう。そして複雑な設計と重要な内部の部品を用意できるのは千空でしか不可能だ。調律は私の耳と、最強のソナーマンだってこっちには居る。つまり龍水は、千空達からピアノを”買わなければ”いけなかった。 「はっはー!欲しいものに金は厭わない!用意できるのだというのであれば俺が買おうではないかーッ!」 「毎度ありがとうございま〜す!」 チャリンチャリン♪ 大量の煌びやかな金の音がその場に鳴り響いたようだった。 「ったく、俺がピアノは専門外だっつったらどーしてたんだよ?」 「いやぁ〜千空ちゃんなら作れるって信じてたよぉ〜!」 また性懲りもなく薄っぺらい言葉で確証もないのに”出来る”と宣言したコウモリ男は、大金を持ってラボへと帰って来た。そして事の顛末を千空に伝えると、呆れた声と先ほどの台詞が返ってくる。どうやら作れないわけではないことが判明しゲンくんもケラケラと笑いながらもホっと一息だった。一応杠ちゃんの機織機や、前にギターを作ったことも聞いていたのでまったく確証がない所業というわけでもないらしい。 「まあでも、でかしたテメー等、これで石油代買い取る資金が増えるわけだ…」 「でっしょ〜〜?超絶高値で売り飛ばそうじゃないの〜!」 「更に名前がレストランフランソワと提携すれば追加でガッポガッポ…クククク」 「ギャラ交渉はこのジャーマネゲンくんに任せてよぉ〜千空プロデューサァ〜…ケケケケ」 「いや、あの、2人ともいつの間にPとマネに…」 どうやら私の知らない間に自分は『千空プロダクション』の所属タレントとなっており、千空プロデューサーとゲンマネージャーが両脇に立っていた。まあ私は私がしたい活動を出来るのであればお金とかは別にいらないのでいいのだけど、3700年前だったら完全ブラック企業でアウトな2人だ。 「でも千空、よくピアノの構造なんて知ってたね?」 「あー?まあ、テメーがあん時、狂ったように弾いてたからな…」 私は初主演が決まった時、それはもう大喜びで千空に一番に伝えた。でも千空は「へーよかったな、すげーすげー」と作業に夢中で簡素すぎるのもいいところなぺらっぺらな賞賛の言葉をくれる。でも私はそんなのも気にせず「うん!」と満面の笑みで返した。 そこからはひたすら私はピアノ教室でピアノの練習、学校に居る間も音楽室を借りて練習、千空の部屋に遊びに行った時も指をポロポロと動かしていた。 「え、でも千空、あの時は全然興味なさそうだったじゃん……もしかして、実はすごい気にかけてくれてたのっ?」 「あまりにもお前がピアノについて煩く語るからちょっと興味湧いただけだ、それだけだっつの」 「ふ〜〜〜ん、へえ〜〜〜」 「気持ちわりぃ顔してんなうぜえ」 ピアニストになる為にはピアノのなんたるかを知らなければいけないと思ってピアノ本体についても勉強をして、その時に千空に色々話したっけ。でもそれだけでグランドピアノの構造まで知るのは普通に考えて困難だ。つまりはあれから私の知らない所で千空はピアノについて調べたということになる。あの時はまったくそんな素振りも見せず、私の話しかけに「ふーん」「へー」としか返してくれなかったくせに。 「じゃあもしかして、私のあの映画見てくれた?」 「さあ、どーだったかな、忘れたわ」 映画が公開されて、私は千空にその映画のチケットを渡した。けれどそれが実際に使われたのか使われなかったのかは、3700年経った今でも教えてはくれないらしい。でももう、ハッキリとした答えは聞かなくていいかな。 千空はいつだって科学に夢中で、私のことなんて全然見てくれてないって思ってた。 「とりまソッコーで作んぞ、んでお前は3700年ぶりに弾く練習でもしとけ」 「…オーケー、まかせてよプロデューサー!」 それでも興味持ってくれたってことは、少しは私が唆る音を奏でられていたのだろうか。 「本当に…グランドピアノが、出来ちゃった」 完成したグランドピアノは、”レストランフランソワ”の特設ステージに設置された。レストラン中央にある円状のステージ台中心に美しく鎮座するグランドピアノ。科学が織りなす力で本当にこんなものまで出来てしまった。 「はっはー!ではこの俺が記念すべき最初の客となろう!」 「ではただちにこの場に合うお食事をお持ちします」 「ちょっと龍水ちゃん独り占めはズルいんじゃない〜?俺たちも聴く権利あるよね〜?」 「ギターってヤツより桁違いでヤベー仕組みの楽器!どんな音になるのかスゲェ楽しみだぜ!」 「オホー!今まで作った中でもトップクラスの複雑工作だったのぉ!いやーどんな音楽になるか楽しみじゃないのー!」 「調律もバッチリだよ、後は名前ちゃんの腕次第だね」 今日はまだ設置したばかりで店は開店しておらず、作ってくれた皆と龍水くん達が最初のお客さんとなる。皆が作ってくれている間に私は記憶している全ての曲を楽譜に書き写し、紙の上に描いた鍵盤で何度も練習をした。 「今度はちゃんと正面から、聴かせろよ」 数年ぶりとなるピアノに不安が無いのかといわれればそんなことは無いが、それでも私は練習している間、初めての”彼女”を思い出してとても懐かしく楽しくなった。 「では聴いて下さい―――ドビュッシー”月の光”」 * ♪ その後、私はレストランフランソワで定期的にピアノと歌を披露するようになった。特に私のショーがある日の席は予約満席となり、レストランも大繁盛を見せる。私も私で大変多額のお給料を頂けているので、それを千空プロデューサーへと献上し石油代も順調に集まっていた。 「これはお前の分」 「え、こんなにいらないよ?石油代に使いなよ」 「…あのなあ、さすがに俺も女から金巻き上げるほど鬼じゃねーわ」 献上したドラゴから数枚紙幣を抜き取った後、千空が再び私に残ったドラゴをポンと渡した。正直言って全て献上するつもりだった私はそれを首振って返すが、どうやらそうもいかないという顔をして千空はまた突き返す。 「それに千空にはもういっぱい色んなもの貰ってるし」 「…んなあげた覚えはねーけどな」 「ほらそこは、お金では買えない大切なもの的な?」 「くせえわ」 実際、私にはドラゴの使い道がない。洋服は杠と一緒にデパートを手伝っているので実質タダだし、レストランはショーをすることでまかないを付けてくれることになったし、ある程度のドラゴがあれば余裕で充実した生活を送ることができる。だったらこれからの旅に必要になる石油代に回した方が絶対に合理的だ。 「しゃーねーな、じゃあ代償として……いつかお前には金で買えないモン、プレゼントしてやるよ」 「え、なになに?」 「今言ったら”お楽しみ”が無くなんだろ」 「えー…まあ、それもそっか」 千空の手が私の頭に乗り、少しだけぐっと重みをかけてニヤリと彼が笑って言う。彼の言う”お金で買えないモノ”というのは一体なんなのだろうか?子供が親の誕生日とかにくれるようなお手紙とか似顔絵とか?でも千空がそんなのをくれるとは思えない。まったく見当もつかないミライのプレゼントに、私は今からわくわくしていた。 「とりま人類救ってからだな」 プレゼントを受け取るまでは、まだまだかかりそうだ。 |