「えっ!フラれたの!?しかも嫌われたの!?」 「ぐはぁッ!!!」 あ、追い打ちごめん。 流川くんと解散した後、太陽は少しだけ傾き始めていた。そういえば冷蔵庫の中身が少なくなってきているので今日は買い出しへと行かなければいけない事を思い出す。きっと洋平たちはもう帰ってしまっただろう…、そう思って到着した下駄箱に、丁度花道たちがいるのを見つける。 けれどなんだかやたらと落ち込んでいる花道に、それを励ますように騒ぐ桜木軍団たち。話を聞けば、どうやらこの放課後で色々あったらしい。 なんでも、花道の好きな赤木晴子ちゃんは実は流川楓が好きで、それとは別に今日の放課後に屋上に来いと先輩に呼び出し食らって向かったはいいがそこには流川楓が居てその先輩を倒していて、流川楓への嫉妬に喧嘩腰の花道が胸ぐらを掴んでいる所を赤木晴子ちゃんに見られてしまい勘違いされて嫌われてしまったと。しかも流川楓が赤木晴子ちゃんに冷たい態度をとったことで更に怒った花道が流川楓に暴力を振るいまた更に嫌われてしまった…らしい。 「あーなるほど!(あの時の怪我は花道がやったのか!)」 「何がなるほどなんだ?」 「あ、ううん!こっちの話!」 通りであんなに出血していたわけだ。花道の喧嘩は死人を出しかねないほどの強さなので妙に納得がいった。にしても、激怒した花道の拳を受けて立っていられた流川楓も只者じゃないなと、そう思った。 「あ、私スーパーに買い物行かなきゃだった、ごめん先帰るね!」 「お、じゃあ俺も付き合うわ」 「ううん大丈夫、それより何か花道が揉め事起こしてるから止めてきた方がいいんじゃない?」 「え?」 その私の指の先には、バスケットボールを持った花道がバスケ部員に思いきり喧嘩をふっかけている光景。しかも結構大事になりそうな騒ぎ方をしている。勿論あんな騒ぎを桜木軍団が見過ごすわけもなく、一斉に慌てて花道の方へと駆けて行った。 私と洋平は、世間で言う“バカップル”ってやつなんだと思う。それでもやっぱり洋平にとっての桜木花道という男は特別な存在で、彼が私より花道を優先することもよくあることだ。でも、それを悔しいだったり哀しがったり――というのは、一度もない。だって私も同じように、桜木花道が特別だから。 「あーでも、やっぱ人欲しいかも…」 家の近くのスーパーに行って、数日の食料や必要なものを買う。いつもは花道か洋平かその他たちに付き合ってもらっているから沢山買い込むんだけど、今日は私ただ一人だけなのでそんなには買い込めない。でもいつもの感じで必要なものをポイポイとカゴに入れていると、それはそれは重いものになってしまった。もう会計も済ませてしまったし、後はこれを運ぶしかない…。一人で持てると言われれば持てる量だが、それは歩き方が歪になるほど重かった。 「くそぅ…ほとんど花道が食べる量なのに…」 よろよろと歩きながら必死に重い荷物を持って帰路を歩く今の私は、きっと杖を突いたお婆ちゃんより遅いだろう。この大荷物の理由はもちろんあの馬鹿の食べる量が半端じゃないからで、そう思うと何だかイライラしてきた。帰ってきたら文句言ってやるんだからなと思っていても、結局美味しそうに私の料理を食べる花道を見たら忘れてしまう。ほんと甘いよ、私。 「結構暗くなってきた…早く帰らなきゃ」 スーパーに行く前に可愛い雑貨屋さんとか見つけてウィンドウショッピングとかしちゃって、買い物を済ませた今は結構暗くなっていた。とはいってもこの速度ではなかなかにたどり着くまで時間がかかりそう…。ご利用はもっと計画的に。 「お嬢さん、重そうですね」 「?」 その時、誰かにそう話しかけられた。重くて顔を伏せていたから前が見えてなくて、私はその声にパっと顔を上げる。 「洋平!?」 「家行ったらまだ帰ってねぇみてーだったからスーパーの方来てみたんだけど、当たりだったな…ほら、荷物貸せ」 そこにはいつもの優しい笑みを見せた洋平が居た。そしてそのままひょいと私の荷物を軽々と持ち上げる。女子のときめく仕草ベスト10に余裕で入るだろう行動に、私はキュンとするしかなかった。 「花道はもういいの?」 「ああ、アイツ面白いんだぜ、まさかの展開!」 「へー!なになに?」 思い出し笑いをするように、洋平はあの後あった出来事を私に教えてくれた。あの時はいいって言ったのに、こうやって私の所まで戻ってきてくれる洋平が大好きで仕方がない。そんな彼の横顔を見ながらこみ上げてくる幸せを噛み締めて、花道のバカ話を聞くのだった。 「よーへー、ありがとね」 |