「やっぱ名前の飯はうまい!!」 あの日、本当に花道は帰ってこなかった。 私のせいで帰ってこなかったのかなと少し罪悪感があったのだけど、どうやらボール磨きと体育館の掃除をしててそのまま寝てしまったらしい。そして必死に磨いた体育館を部活まで使わせまいと、その日花道は体育館の番犬となっていた。相変わらずぶっ飛んでいる花道に呆れながら、私は休み時間にお腹を空かせているであろう花道に差し入れをしに行ってやる。 そしてその日の放課後、帰宅部の私はどうしようかとボーっと空を見上げていた。すると洋平たちに花道の冷やかしに行こうと言われ、せっかくなので花道の練習姿でも拝んでやるかと体育館へと向かう。 「もしかして、あなたが赤木晴子ちゃん?」 「え?」 やっとの思いでバスケ部に入ることを許されたらしい花道は、新入部員達と共に自己紹介をしている。そこでも花道のバカすぎる行動に皆して笑っていたら、ひょっこりと私たちの後ろからバスケ部を覗く女の子が居た。洋平はその女の子に気づいて「晴子ちゃん!」とニッコリ手を振り、私はその時はじめて赤木晴子ちゃんを認識する。何だかんだ花道の言う“ハルコさん”に会ったことがなかった私は思わず大きな声を出してしまい、彼女は驚いて私を不思議に見つめていた。 「あ、ごめんなさい!私、桜木花道の保護者で苗字名前って言います!いつもあのバカがお世話になっております!」 「桜木君の?あ、いえいえそんな…え、保護者?」 「まああながち間違ってねーわな…ああ晴子ちゃん、コイツは花道の幼馴染で俺の彼女」 「…っ、ああ!そうなんですね!」 噂の“ハルコさん”は確かに可愛くて、清楚で優しそうな感じが花道の好みドストライクだった。 「私も晴子ちゃんって呼ばせてもらっていいかな?」 「うん!えっと、じゃあ名前ちゃん?」 「うん、よろしく!」 見た目だけでなく、晴子ちゃんはとっても良い子だった。同じく彼女の友達の藤井さんと松井さんとも仲良くなり、洋平たちが花道を冷やかしている後ろで私たちは親睦を深めていましたとさ。 「へー、流川ってヤツ、マジでバスケうめーんだなぁ」 「え!流川くん!?」 その時、たかみんがそんなことを言ったので晴子ちゃんはすぐ反応して小窓から体育館を再び覗いた。そういえば流川くんもバスケ部がどうとか皆言ってたなと思い出し、私も同じく洋平の背中に乗って体育館の中を覗く。 「晴子ちゃんは流川くん好きなの?」 「え!す、好きだなんてそんなっ…」 そう言って頬を赤らめる晴子ちゃんはいかにも女の子らしくて可愛い…これが、清楚系女子というものか。そんな乙女な表情の晴子ちゃんに、花道の恋は哀しいものだなと哀れむのであった。 「流川くんモテモテだよねー」 「名前、流川のこと知ってんのか?」 「うん、隣の席だからね」 「え、マジ?」 「まじまじ、隣の席ってだけで女の子に羨ましがられてもう大変だよ」 「へー色男は違うねー」 「洋平だって色男だよ!」 「はは、サンキュ」 そう言って上に乗りながら洋平の背中にぎゅっと抱きつくと、大楠に「バカップルが」と舌打ちしながら言われた。 体育館ではいつの間にか自己紹介を終えたバスケ部が練習を始めていて、花道を探すとただひたすらドリブルをしているのが見える。打って変わって流川くんは先輩たちに引けを取らない動きで華麗にプレイしていた。バスケのことはよく分からないけど、素人目でも分かる……上手い! 確かに世間で言う“かっこいい”に匹敵する流川くんを目で追っていると、ふと彼がこちらを見てきて目が合った……と思った。 「きゃ!」 でもそれと同時に隣の晴子ちゃんが“目があった!”と言わんばかりに頬を染めていたので、ああ晴子ちゃんか、と変な勘違いをしていた私はまた体育館から目線を外して数歩離れた。 「あ、俺そろそろ行かねーと」 「バイト?」 「おう、わりーな送ってやれなくて」 「ううん、頑張ってね」 時計を見て洋平が立ち上がり、彼は私たちに背を向けて行ってしまった。洋平は高校に入ってからバイトを始めたらしく、こうやって放課後途中で抜けたりしている。洋平との時間が減るのは残念だけど、働く気のある若者を止めるほど私は我儘ではない。 「じゃー私も帰ろっかなぁー」 「花道見ててもドリブルしかやんねーからなぁ」 「飽きた飽きた」 「どっか寄って帰るかぁー」 大楠とたかみんとチュウがそう言って、私たちはゾロゾロと体育館を後にした。というか、私は一人で帰るつもりなんだけど何か後ろからコイツ等までついてくる…。洋平はいいけどこのその他を引き連れてると変に目立つからヤなんだけど。 「姉さんどこ行きやすか」 「誰が姉さんだ、誤解を招く言い方やめてよ大楠…まああれね、買い出し行きたいから荷物持ちしなさい!」 「「「へい!姉御!」」」 その返事やめろ!! 完璧に遊ばれてる私は、まるで子分を引き連れてる女頭だった。 友達出来なくなるからやめて! |