「あいた!!」

これは、一方通行が私の家に来るようになって浅い日のこと。
少しずつだが彼が自分の家に居ることに慣れてきて、接し方も変わってきた頃だった。これだけ同じ空間に居て同じ時間を過ごしているというのに……私は、未だ彼に触れたことがない。いや別に触れる必要はないのだけど、どうしても触れたい理由があったのだ。なにせ彼の肌は……物凄く白く、綺麗だ。まるで産まれたままの状態で成長しましたと言わんばかりの玉のようなお肌に、女子として触れないわけにはいかない。かと言ってあの一方通行が簡単に触れさせてくれるわけもなく、私は絶賛“反射”されまくっていた。
そして何度も反射されるにつれ、本来の目的とは少しかけ離れていってしまい…今はその“反射”の威力を試しているところだ。

「この威力だとー…いだっ!じゃあこれくらいなら…ちょっと痛い」

バチッ…バチっ…ばちっ…
彼の能力、ベクトル操作は最強だ。運動量、熱量、電気量、光などの様々なベクトルを感知、操作できる。もちろん私の音にだってベクトルはあり、彼にはまったくもって通用しないだろう。彼が言うには、核兵器を打ち込まれても死なないらしい。そんな彼の能力でベクトルを反転する“反射”がある。彼が演算して設定した必要ないものを全て反射するシステムはかなり簡単なものらしく、オンオフの切り替えや書き換えは一瞬でできるとのこと。彼の髪や瞳の色はその無意識下で設定された必要のない物質を反射して出来たものだと推測しているらしい。本人も無意識なので分かってないとか。
そして私は先ほどから、その反射がどれほどのものなのか試していた。彼のベクトル操作は増幅や減少させることは不可能で、あくまで“向き”のみ変換が可能らしい。けれども彼に殴りかかったとして、それは倍以上の力で跳ね返されてしまう。難しいので簡単に言うと、人にパンチをしたとして、その時に生じるのは自分の力だけではなく、相手がパンチを受ける力が合わさってくる。それを反射で全て跳ね返してしまえば、その力は自分が投げかけた力よりも倍になって返ってくる…という感じだ。なのでゆっくりと彼に触れようとすれば、その跳ね返りの力も“痛い”とまではいかなくなる。まあ、ゆっくり触れても跳ね返りはくるので、戦いにはまったくもって無意味な行動なのだけれど。

「スローモーションで突進!」
「アホか」
「あいだ!!!重力には逆らえない…!!」

バチィッ
スローモーションと言っても、セルフスローモーションだ。両手を広げて一方通行を正面にゆっくりと近づいていくも、セルフなので重力に耐えられずまあまあな痛さで跳ね返された。ずっとよく分からないラノベを読んでいる一方通行は目線1つもこちらへ向けず、悪態吐くだけで動きもしなかった。ぶつけたおでこをいたたたとさすり、私は再び彼の前に立った。今度はさらにスローモーションでいく!!バカなマネはよせと呆れられるだろうが、私としてはこの反射が地味に面白くなってきていたのだ。
慎重に…慎重に……ゆっくり、ゆっくり近づいて…………って、

「あれ?あれれれれ?」

どっすん!
先ほどから反射されまくっているその範囲がくるぞと身構えていたのに、何故か手はするするとそのまま境界線を突破し、そして体も重力に負けて真っ直ぐに……一方通行の元へと落ちていった。いつの間にか彼の手はラノベごと私を避けるようにして横にあって、私の両手は彼の両肩に乗って抱きつくように腕を回している。目を開ければもちろん、目の前にその真っ白な顔が私を見つめていた。

「あ、あくせら……」

この状況がうまく理解できずにただ思考停止して彼との視線を離せないでいると、突然視界が白から黒へ変わった。同時に唇に触れた、柔らかいなにか。ふにっと触れたと思えば、それは一瞬にして離れていった。
一体なにが起こったのかとまたも思考停止していると、目の前に見えた白い男の口元がニヤリと微笑んだのが見える。

「オレに触れた感想はどォよ」
「………ひんやりしてる」

オマエが熱いンだ。
再び唇を奪われた。彼が持っていたラノベはいつの間にかソファの横に置かれていて、彼に乗り出してしまった私の体は空いた手で引き寄せるよう固定されている。先ほどまで思考停止していた私の脳はさすがに機能し出して、今の状況を十分に理解していた。それでも抵抗をしなかったのは、彼が第1位の能力者で敵わないからというわけではない。いや、抵抗しても意味がないんだろうなという考えもチラついてはいたが、それよりも私は惹かれていたのだ。彼に触れることを……心のどこかで望んでいた。

あと、肌は怖ろしいほどスベスベだった。





一方通行という男


 

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