最近、ベッドが狭く感じるようになった。
まさかベッドが縮んだ!?なんていうバカな考えは放り投げて、ありうる理由を他に探すとしたら、自分の身だ。研究所に閉じ込められていた頃はろくに食事もできない体となってしまいかなり痩せたけど、今はその食欲も戻って健康的になっている。もしかして太ったのかと慌てて体重計に乗ったけど、そこまで増えてはいなかった。鏡を見ても大して膨れた感じではないし、自分が原因でないことは分かった。だとしたら次は―…、

「ねえ、ちょっと立ってみて」
「ハァ?嫌だめんどくせェ…」
「いいから立って!!」
「………チッ、なンだよ…」

コレでいーですかァ?
ソファに座ってラノベを読んでた彼に無理やり立ってと促すと、嫌々ながらにもその場に立ち上がってくれた。最近は杖がなくても立ち上がるくらいは楽にできるほど、彼の脳は回復してきている。そして立ち上がった彼の目の前に立ち、私は自分の目線と彼への瞳の目線まで交互に上下して見た。

「背筋伸ばして!」
「何なンだよさっきから…」
「………やっぱり!」
「ア?」
「身長伸びてる…!!!」

ここ最近視線が少し高くなったなと思った気がしていたけど、いつも杖を突いて腰を曲げている彼の背筋をピンとさせると、それは明らかだった。正直彼は一生これくらいのサイズなのではと思っていたのだが、まさか成長期が来るなんて…。以前に彼の能力である反射はホルモンバランスにも影響していると聞いたので、小柄な体系もその所為かと思っていた。もしかして能力が自由に使えなくなって体質が変わってきたのだろうか?

「アー?そォいや最近杖の高さ何度も調整が必要でぶっ壊れたと思ってたンだが…そォーゆーコトかよ」
「何センチ位だろ?170cmは越えたんじゃない?」
「どォーでもいい」
「えーなんで!」

ボスッと再びソファに座った彼に、私の目線は一気に下へと傾く。どうでもいいだなんて、男子にあるまじき台詞だ。男は何かと身長を気にする生き物なのだと思っていたけど、意外にも一方通行には興味のないことらしい。元々は確か170手前とかの身長で、男子なら結構気にする身長だと思うのだけど…。

「身長が低かろーが高かろーが、オレには関係ねェコトだからな」
「でも世間の女の子は身長高い男子がいいって意見のが多いよ?」
「何でオレが顔も知らねェ女の評価を気にしなきゃいけねェンだよ」

まあ確かにそうだ。一方通行が女子ウケとか気にしてたらそれこそ頭大丈夫?ってなる。

「オマエは高さとか気にすンのかよ」
「え?んーいや、別に気にしないかな?」
「ならいーだろ」
「?」

再びラノベを読みだした一方通行を見下ろしながら、私はしばし考えた。私は別に身長で人を見ることはないし、身長が高かろうが低かろうが一方通行は一方通行だ。そして一般男性よりも筋肉が少なくても、私は彼が好きだと思う。だから私にとっても一方通行の身長が伸びようが縮もうがどちらでもいい。そっか、ならいいや。………ならいいや?

「私がもし身長高い男子じゃないと嫌って言ったら、一方通行は気にするの?」

さっきの返しを考えたら、つまり彼は世間一般の女の子からの評価よりも私からの評価を気にするってことになるけど、そゆことでおk?

「さァ、どーだろォな」
「えーなんで濁すのよー」
「オイ乗ってくンなデブ」

ねぇねぇと肩を揺らすも期待した返事は返ってこず、彼の膝上に思い切り寝転がってみるがいつもの悪態を吐かれるだけだった。

「寝心地悪い枕だなぁ…」
「ならさっさと退け」

少し体制を変えて膝枕状態になるが、彼の骨ばった足は最高に寝心地が悪かった。”退け”と言うけど無理やり退かそうとしない辺り、多分そこまで嫌じゃないと見た。猫も本気で嫌な時は物凄い暴れるもんね。……それにしても、過去最高に最悪な寝心地だ。ちなみに最高に寝心地良いのは黄泉川だ。

「寝心地悪いですねって言われない?」
「…………あァ、よく言われるなァ」
「はぁ!?誰に!??!」
「クソガキ」
「ああ、なるほど、ならよし」

あーーーびっくりした。冗談で言ったつもりだったのにまさかの肯定の返事が返って来て思わず飛び起きてしまったじゃないか。うちのアホ毛ちゃんなら確かに一方通行の膝に寝転がるくらいのことはしそうだ。むしろその様を見たかった。

「良かったね、私が別に身長とか気にするタイプじゃなくて」
「ハァ?何が良かったねだよ」
「え、良くないの?」
「…………」

見上げて見た彼の表情は、怖ろしいまでに凄くイライラとした顔をしていた。しかも見下ろされてるから余計怖い。ごめんなさいってば。

「……じゃァ聞くがよォ、オレが自分より重いヤツは無理だつったらオマエは痩せンのかよ?」

赤い瞳をこちらへと向け、彼は意地悪く笑った。

「そんなの……どんな私でも愛してよ!!!てゆーか、わたし別に一方通行より重くないし!!」
「アー?ホントかァ?」
「んぎゃー!おなか触んないでぇ!」

さすがに一方通行より重いとかないでしょ。


たぶん。





愛の高さと重さ


 

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