「あ」
「「「「あ」」」」

とある昼下がりのとあるファミレスで、私は偶然彼女たちに会った。彼女たちも私を見るなり同じような顔になり、そしてしばし無言のまま顔を合わせる。「や、やっほー…」とまず最初に口を開いたのはフレンダで、「超お久しぶりです…」と最愛、「久しぶり…」と滝壺、そして「ハァ…」と溜息を漏らす麦野。円を描いたテーブルとソファに仲良く4人腰かけて、”アイテム”のメンバーがそこに居た。

「あーあはは、ひさしぶりー…元気してた?」
「アンタは元気そうね」
「うん、まあ色々あったけど、今は楽しくしてるよ」

彼女たちとは、あの一戦以来会っていない。なのでお互いとても気まずい状態だった。きっともう彼女たちとは関わることはないだろうと思っていたけど、まさかこんなところで出会うなんて…。同じ学園都市に住んでいる以上、こういうのは避けられないのだろう。

「もうアンタには何もしないわよ…、アンタの男に釘刺されたからね」
「…え?」

麦野のその言葉に、私は耳を疑った。”アンタの男”とは一体どういうことだろう。釘を刺したって……でも、一方通行が彼女たちアイテムを知っているとは思えない。

「…にしても、アンタの男がまさかあの”第2位”だったなんてね」
「…………はっ?」

第2位…?第1位じゃなくて?
待って待って待って、なにも理解が追い付かない。私が何かを言う前にフレンダが「名前やばすぎー」最愛が「超驚きました」滝壺が「…うん」と続けられて、私は未だに「!?」状態だった。この学園で”第2位”と呼ばれる人物が誰かなんて、もちろん言われなくても分かっている。しかも何故か私の”男”というのがあの極悪天使のことになっている。今すぐに色々と確かめたいことはあったが、私はもうその話は後でにしようと思った。

「ドリンク持ってきたぞー…って、」
「?」
「え、増えてる?ってか、誰だ?」

丁度その時、背後から男性の声がして私の存在に驚いているようだった。振り向くと、ぼさぼさとした茶髪で少しだけ体格のいい青年が一人…、手にはトレイに乗ったドリンクのコップが4つ。

「浜面ァ…ドリンク取ってくるのにどんだけ時間かかってんのよ」

なんとなくだが、アイテムの下部組織の人ではないだろうか。私がいたときには居なかったから、きっと新しく入ったのだろう。浜面と呼ばれた彼は、麦野に対して言い返したそうな顔をするも、グっと飲み込んでドリンクをテーブルに置いた。そしてもう一度、私にチラリと視線を向ける。

「あ、私は彼女たちのお友達?でー…名前って言います、よろしくね」
「え!あっ…お、俺は浜面仕上っす、…よろしく」

とりあえずニッコリ笑って手を差し出せば、彼は何故か物凄く驚いた顔をしてその手を恐る恐る握り返した。咄嗟に”お友達”なんて言っちゃったけど、喧嘩別れ?したみたいなものだからそんな風に言っていいものか…。まあ、面倒だしいいだろう。

「うわー浜面が顔赤くしてるーきっしょー」
「浜面、超超超気持ち悪いです」
「浜面が目先の欲に忠実でも…私はそんな浜面を、応援してるよ」
「はぁ!?ちょ、やめろ!俺はそんなこと!」
「浜面、ソイツそんな虫も殺さねー顔してレベル5よ」
「えッ!?嘘っ!?マジで!?」

どうやら彼はアイテムのメンバーからはかなり雑な扱いをされているみたいだ。なんだか散々な言われように私まで悲しくなってきた……これから大変だろうけど、頑張ってね浜面くん。
そしてあっさり私がレベル5だと麦野にバラされてしまい、彼はサッと私からあっという間に距離を置いてしまう。別に今すぐどうこうなんてしないから安心してよ。

「しかも最近増えたって言うあの音響操作かよ…人は見かけによらねぇ…」
「そーそー、名前がレベル5だったなんてほんとびっくりなわけよ」
「まあ、あれだけの能力目の当たりにしちゃ…超納得するしかないですけどね」
「どんな名前でも…私は好きだよ」
「つーか、アタシ等はアンタのレベル5測定に一役買ったってわけよ、ホント胸糞悪いわ」

そう…あの時の一戦は、研究者たちの計画に過ぎなかった。レベル5になると予測されている私にレベル5の”原子崩しメルトダウナー”と交戦させることで、確定的なレベル5となる力を引き出せるという計画だった。お互いまんまとそれに加担してしまい、そして結果…私はレベル5となった。だから正直、麦野達をそこまで恨んでいるわけでもない。そもそも私は、彼女のそういうハッキリした性格は十分に分かっていたので、前回の交戦もそう驚きではなかった。

「てか名前、一人でファミレスきたの?」
「いや、知り合いとね……って、あ、ドリンクバーに飲み物取りに来たんだった」
「超引き止めちゃいましたね」
「あー…じゃあ皆、またね」
「ばいばい…名前」
「まあ、また暇があったら声かけるわ」
「あはは、うん…待ってる」

なんだかんだ彼女たちとは仲良くしている。あれきり会わなくなったのは少しだけ寂しいなと思っていたから、こうして今日会うことができて良かったのかもしれない。別れ際に「あの人たちの相手大変だと思うけど、頑張ってね浜面くん」と小さく声をかければ、彼は少し頬を染めて「お、おうっ…ありがとう!」と返して手を振った。
こうして私は目的のドリンクをなんとかコップに注いで、そして自分が元いた席へと戻っていく。結構奥の端の方の席だったので彼女たちからの席は見えず、出入口からも離れているのでもう会うことはないだろう。そしてやっと席へと到着すると、

「オマエ、ドリンク取るのにどンだけ時間かかってンだよ」
「名前ちゃん遅いよー!もう食べ物きちゃってるよ!ってミサカはミサカはせっかくのアツアツハンバーグが冷めちゃうよって急かしてみたり!」
「ごめんね、ちょっと向こうに友達が居たから話し込んじゃって」

今日は丁度外食をしようと打ち止めの大好きなファミレスに一方通行と三人で来ていた。最近はよく三人で行動することが多く、打ち止めが加わってからは騒がしい日々を送っていた。
既に注文した品は届いていたみたいで、お子様ランチを美味しそうに食べる打ち止めの横へと座って私も食事をする。彼女はよく口元を汚すので、それを拭くためにいつの間にか彼女の横に座るのが当たり前になっていた。なんだか母親になった気分だ。

「あ〜デザートにあまあまでふわふわ〜でシャクシャク〜なアレ食べたいなぁ〜ってミサカはミサカは思い出して落ちそうになるほっぺを抑えながらうっとりしてみる」
「じゃあパパにお願いしなきゃね〜」
「オイ、誰がパパだコラァ」

あの頃とは想像もできない、なんとも幸せな日々だ。



▼△▼




「あんた、麦野達になに言ったの?」
『久々に電話してきたかと思えば、可愛くねぇ声だなぁオイ』
「ていうか帝督あんたさぁ、どこまで知ってたの?」

その後、私は第2位…垣根帝督に電話をかけた。もちろん内容は、麦野達が言っていたことについてだ。そもそも、帝督はどこまでこのことについて知っていたのだろう。というか、彼は一体…

『どこまでって、俺はお前のことなら何だって知ってるぜ』
「きも」
『お前今度会ったらマジで犯すからな』

絶対会わないようにしよう。

『まぁアレだ、アイツ等には、俺の女に手を出すなって言っただけだ』
「…………”誰”が、”誰の女”だってぇ?」
『”お前”が、”俺の女”』

電話口から聞こえる男の声は清々しいくらい爽やかな声をしていて、普段そんな声出さないだろうとペッと唾を吐き捨てたい気分に陥った。

「なんかすっごいムカツクけど………ありがとね、帝督」

正直、この男には色々とキツイことも酷いこともされてきたけど、なんだかんだ…彼は私を守ってきてくれた。きっと彼がいなければ外の世界は知らなかったし、こんなにも笑える日々が来るなんて思わなかった。だから感謝している。

『だったら”本当”に、俺のモンになれよな』





ファミレスで再会


 

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