「一方通行って、家あるの?」

とある日の放課後いつものように軽く学校のお友達と遊んでから家に帰ると、変わらず今日も一方通行が部屋のソファに座っていた。ここ数日ほぼ毎日のように来ている彼だけど、私はふと思ったのだ。そういえば彼にも家と呼べるところはあるのだろうか…と。

「あるに決まってンだろ」
「いや当然みたいに言うけど、その家ちゃんと家として機能してる?」

一応家はあるらしい。というか、私は本当に彼のことを知らない。学校は確か学園都市で一番のエリート校である長点上機学園だと聞いたけど、学校にはほとんど行っている気配はないし。一体いつどこでなにをしているのやら。もしやニート?

「ていうか、一方通行の部屋行ってみたい」
「あァ?」

普通に気になるなと思って言ってみたら、彼は軽く眉を寄せてこちらへと視線を向けた。自分は勝手に私の家に入り浸っておいて、私が彼の部屋に行きたいというと眉を寄せるとはどういうことだ。まあ出会った当初からだけど、理不尽がすぎる。さすが学園第一位の最強様だ。

「来ても何もねェぞ」
「うちも何もないけど?」
「何すンだよ」
「えーっと……トランプとか?」
「くだらなさすぎだろ」

学生の修学旅行じゃないんだから、確かに二人でトランプはバカげているなぁと私も苦笑した。というか一方通行と二人でトランプかぁ……シュールすぎる絵面だけど、意外とやってみたいかもしれない。

「じゃなくて、私は一方通行の部屋に行ってみたいだけ!」
「…………じゃァ、今から来るか?」
「え、いいの!?」
「行きてェンだろ」

まさかこんな今すぐに叶うと思っていなかったので普通に驚いてしまった。

「夜ごはんどうする?」
「適当な店で買って帰ればいいだろ」
「あ、じゃあ私期間限定のあのバーガー食べたい!」
「アー……まァ、それでいいか」

じゃあ早速行きましょう!ということで、私たちはその場を立った。

「ここからどれくらい?」
「徒歩15分」
「思ったより近かった」

まあここら辺は学校の寮が立ち並ぶ住宅マンション地になっているので、彼との家が近いのもそう驚くことではなかった。制服から適当な服に着替えて、私たちは家を出る。そして少し寄り道してファストフード店の期間限定のバーガーセットを購入し、一方通行の進む方へとついて行った。私の学生寮マンションを少し抜けて大通りを過ぎ、そして隣のブロックの学生寮マンションが立ち並ぶ所へとやってくる。そのまま少し足を進めて、とあるマンションへとそのまま入っていった。なるほど…ここか。意外と普通の少し小ぶりのマンションで、彼は慣れた足取りで階段を上った。3階の部屋らしい。

「部屋番号は?」
「304号室」
「………嘘でしょ」
「チッ」

何で舌打ちするのよ。なんとなく嘘っぽいなと思って言えばビンゴだった。彼のことを何も知らない私だけど、これだけ一緒にいる時間が増えればなんとなく一方通行という人間が見えてくる。たまにこういう意地悪するんだよなぁ…。

「わー!!!思ったより普通の部屋だ!!!」
「うるせェ、騒ぐな……つか、どンなの期待してたンだよ」
「実は可愛いピンクな部屋とか?」
「なわけねェだろ」

3階の一番奥の所謂角部屋に位置する彼の部屋へと遂に入室した私は、あまりに普通の部屋で逆に驚いた。いや、まあピンクな部屋はさすがに無いだろうとは思っていたけど。どちらかというと普通に生活できそうな一応ちゃんと”部屋”だったので驚いた。ソファもあるし、ベッドもテレビもある。正直言って流行りのミニマリストみたいな何もない部屋かと思っていたのだ。

「まあでも、生活感はあんまないね」
「寝るだけだからな」

そんな寝るだけの部屋も最近は私の家で寝泊まりしてることが多いのでもはや抜け殻だろう。ていうかこんなにちゃんとした部屋があるのに、なぜ私の家に入り浸るのだろうか…物好きな人だ。

「ベッドチェック!!」
「オイあンまはしゃぐな、埃が舞うだろ」
「あ、思ったより硬いベッドだ」

他人の家へ行ったらベッドにまずダイブこれ鉄則。そして思ったより低反発のやわらかくないベッドだった。

「んーーー、一方通行のにおいする」
「気色わりィぞ、つかどンなニオイだよ」
「えっとね……無臭」
「わけわかンねェ…」

一方通行ってあんまり体臭的なのがない。というかほぼ無臭。彼の能力のせいなのかなんなのか、いい匂いもしなければ嫌な匂いもしない。あ、でもお風呂上りは石鹸の良い匂いがする。

「エロ本とか無いの?」
「あると思ってンのか」
「あったら面白いなぁーって」
「………あるっつったらどォする」
「えっ!?……軽蔑はしないけど、ちょっとショックかも」
「あるわけねェだろ」

まあ、そうですよね。
とりあえずさっき買ったバーガーを食べるべく、私はテーブル前にあるソファに座った。「お茶とかでないの?」って聞いたら「果汁1%の糖分だらけの飲料があンだろォが」と返されてしまう。ちらりと台所を見たけど、まったく料理の痕跡がなかった。代わりにごみ箱にはジャンクフードの袋とコーヒー缶が突っ込まれている。不健康極まりない。

「私の他に誰か呼んだことある?」
「居るわけねェし、大体オマエも呼んでねェからな」
「へーーそっかぁ……へぇ〜〜」
「なにニヤけてンだ、気持ち悪ィ…」

私しかこの部屋に来たことがないと知って、なんだか変な優越感で口元がにやけてしまった。一方通行の交友関係というのはまったくもって分からないし想像もつかないけど、……私が一番近いって思っていいのだろうか。いや、まあ…別に自分が一番だからなんだって話だけど。ていうか今の自分の思考、わりと気持ち悪い?

「ふぅー、ごはんも食べたし…さーて、お暇しますかぁ〜」
「はァ?オマエ、何言ってンだ?」
「え?なにって、もういい時間だしそろそろ…」
「帰すわけねェだろ」
「へっ?」

ガシッと、手首を掴まれた。
時刻はもう結構いい時間だし、ご飯も食べて見てたテレビ番組も終わったし、そろそろお風呂にも入りたいし、明日も学校だから早めに寝なきゃだし…。そう思ったのに、何故か手首を掴まれて引っ張られ、そのままベッドに投げられた。

「オマエさァ、男の部屋に上がり込ンで、タダで帰れるって思ってンですかァ?」
「え、ちょっ……うそ、まじ?」

覆いかぶさる、私よりも白く綺麗な彼は、その細い腕でぐっと私をベッドに押し付ける。さっきは無臭だと言ったけど、ほんの少しだけ……きっと私にしか分からないくらいの、彼特有の匂いが鼻に香った。

「お楽しみはこっからだろォ?なァ、名前チャン」

あ〜〜〜れ〜〜〜
……と言う間に、私は喰われた。
男は狼なのよ気をつけなさいとは、この第一位にも適応されるらしい。









今日もガッツリ喰われ傷だらけにされた私は、彼のベッドで安らかに横になっていた。シャワーを借りて(ちゃんと綺麗にされていて安心した)、着替えなんて持ってないので彼の上の服を借りている。ショーツは軽く洗って今乾かし中。しかも悲しいことに普通のサイズだと胸元がパツパツで苦しかったので、彼も滅多に着ないというLサイズのTシャツを借りた。普通こういうのってぶかぶかになったりして萌え〜ってなるヤツじゃないの?下手したら私より体重軽いんじゃないか。

「(寝顔だけはまじ天使)」

横で眠る彼の顔を覗けばそれはもう美しいほどの、虫も殺さぬような美少年……否、美少女と言っても過言ではない。正直最初マジで性別分からなかった。初めてするあの時まで…。
人の家というのはあまり慣れないもので、ついつい深夜に目が覚めてしまった。そういえば学校あるけど、一旦家に帰って着替えて行くの凄く面倒くさいなぁ…。サボっちゃおうかな。

「ふふ……へんなかんじ」

一方通行の部屋に居て、二人でベッドで眠ってるなんて。今更だけど胸の奥がどこかくすぐったく感じた。私たちの関係に名前はないけど、思い返すとやっていることや過ごしている時間は恋人とあまり変わらないのかもしれない。そして日々積み重なるように増えていく自分の中の彼への想いに、私はどうしたらいいのかと戸惑っている。

「………すき、」

かもね。
小さく呟いた声は彼に届かないだろう。そしてこんなことを言って、関係が終わってしまったらどうしよう。理不尽に始まった関係だけど、終わらせたくないと思ってしまうほど私は絆されていた。

こーゆーのは本当に、よくわかんない。
ただずっと一緒に居られたらいいのにって、それだけは思う。





突撃お宅訪問


 

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