(若干の下ネタと微エロ注意)





「一方通行って初体験いつ?」
「ハァ?」

ダイニングテーブルで女性誌の電子記事を読んでいた私は、ソファで横になっている彼へと尋ねた。ここからじゃ顔が見えなくて寝ているかもと思ったが、能力で耳をすませば起きている呼吸が聴こえてくる。便利なものよ。

「何の話だよ」
「えーーそりゃあもう初体験って言ったらアレしかないでしょ、セックスに決まってるじゃん」
「……………………くだらねェ」
「あーちょっと!そっぽ向かないでよ!」

今見ているその女性誌に丁度男女の初体験ストーリーや年齢アンケートとかが載っていて、ふと私は思ったのだ。そういえば一方通行にも童貞の頃があったんだよね…って。ちなみに私はとある男によってあっけなく奪われてしまい、尚且つそれを一方通行の目の前で言って去っていくような苦い思い出がある。

「ねえねえ、いつなの?」
「近寄って来ンじゃねェ」
「ねーねーねー!」
「オ"イ"ッ」

テーブルから離れて彼の寝ころぶソファに踏みよれば、それはもう眉間にしわを寄せた如何にも嫌がる顔が見えた。単純に気になったから尋ねてみただけなのだが、この顔はかなりの嫌悪だ。どうしてそんなにも嫌がるのかと更に問い詰めるべく彼へと手をかけようとしてハッと私は気づく。

「もしかして幼少期に変態おじさん研究者から暴虐非道な淫行を受け、童貞より先に処じょ…」
「ブチ殺すぞテメェ」
「あ、違った?」
「オマエを暴虐非道に犯してやろォか」

というのはまあ冗談なわけでして…。いつも以上に口を割ってくれそうにない彼の反応に今度は私が眉を寄せた。

「てゆーか、正直言って一方通行のハジメテって私でしょ?」
「………………」

確信はないけど、そんな気はする。一方通行と初めてそうなった時、正直言って私の方が緊張しててあまり彼の行動とか言動を覚えていない。勿論私は初めてではなかったのだけれど、彼とした時に初めて………心の奥底が少し満たされた気がしたのだ。アイツとする時には得られなかった”何か”を感じた。こんなの抽象的すぎて実験結果だったらレベル0判定だろう。

「ね?」
「………………違う、つったらどォする」
「え、泣く……」
「めんどくせェ女」

私たちの体の相性はかなり”良い”だろう。いや、私もあの男としか経験がないので比較対象はアイツvs一方通行になるわけだけど。この話したら今よりさらに嫌な顔されるだろうから絶対口に出さない。

「ね、私だよね?」
「…………だからなンだよ」
「初めてシた時、一方通行ってば涼し気な顔してたけど、実は結構切羽詰まってた?」
「オマエいい加減ハッ倒すぞ…」
「もう時効じゃんー!いいじゃんそれくらい教えてよー!気になるー!」
「ウッッッゼェ…」

好きな人の初めての経験とか、しかもそれが自分だったのなら当時の感想とか気になるわけですよ。一方通行の服を引っ張ってねーねーと強請る私はもう、完全に彼の言う通りめんどくさい女だ。でもこういうことが出来るのは、もう随分と彼と同じ時間を過ごしたからこそ。初めてしたあの時では、絶対聞けないだろう。

「ハァーー…、」

深いため息と同時に、ぱたん、と一方通行が手に持っていた本を閉じる音がした。そしてさっきまで目線ひとつ寄こさなかった彼の赤い双眸がこちらへと向けられる。横になって天井を仰ぐ彼の手がスっと私の頬の横に伸びてきた。そのまま冷たい手のひらが優しすぎるほど撫でるその彼の表情に、私はなんだか嫌な予感がした。

「あァ、あン時のオマエ、すっげー大人しかったよなァ」
「へっ…?」
「こうやってよォ……引き寄せて、」
「ちょ、……んぅっ」

どこかその手つきは艶めかしく、彼から漏れる声は甘美に聞こえる。そのまま引き寄せられ塞がれた唇は充分に熟れていて、少し乱暴に舌を絡ませられる。けれどもどこか探るような、傷つけてはいけまいとさせる優しい感触に、まるで初めてしたあの時を思い出させた。ちょっと、まって…。

「あ、くせら…」
「そーそー、そォやって蕩けた顔させてオマエ、誘ってンのかって思ったなァ……。ンでよォ、次はどォしたっけ?」
「まっ…」
「あァそーだった、ココ、イジってやったンだっけかァ?」
「んっ…!」

そう言って胸に手をかけた彼が包み込むようにしてそれを揉んだ。いつの間にか体勢は彼に組み敷かれる形となり、私を覆う彼の顔が思い切り意地悪に笑っている。

「あン時はただの脂肪のカタマリっつー考えだったが、案外悪くねェモンだなァ……特にオマエの反応は、見てて気分がイイ」
「ひぅっ!」

服の中に手を入れられ、無理やり下着を捲って胸の頂をピンとはじかれる。いつの間にか硬くなったソコは服の上からでも分かるほど主張していた。

「あの頃のオマエはまだ可愛かったなァ、顔真っ赤にしてオレのこと見つめて、ンで…」
「ちょちょちょストップ!!待って!ウェイト!!」
「あァ?ンだよ、オマエがしつこく聞いてくるからあン時のことじっくり再現して感想まで言ってやってンじゃねェかよ」
「ちっ!ちがう!!そんなわざわざ再現しなくていいからぁ!!」

一方通行はたまに悪ノリしてくる。しかもそれがかなりタチが悪い。普段は優しくしてと言ってもまったくしてくれないと言うのに、こういう時だけ無駄に優しく触ったり甘い声で囁いたり、完全に策士だ。そして私はそんな彼の突拍子もない大サービスに、

「私が悪かったですー!しつこく聞いてごめんなさいってばぁー!」

と、負けを認めるしかない。つくづく私は彼に弱いのだと思わされる。調子乗って本当すいませんでした。

「まだ終わってねェけどイイのかァ?」
「い、いいっ!羞恥心で爆発しそう!」
「あーそォ、残念だなァ」

まったく残念に思ってない彼の瞳が描く綺麗な三日月に、私はゾっとするしかなかった。無駄に綺麗な顔をしているからその表情で見つめられると余計心臓に悪い。ソファに座り直す彼を見上げて、私は少しの沈黙の後に尋ねた。

「……今はかわいくない?」

こんなの聞くのはまた可愛くないって思われるかもしれない。そうとは分かっていても、私はこうやって彼に何かを求めて訪ねてしまう。そんな私の視線と声に、ルビーの双眸が再びこちらを見下ろした。

「オマエの望む言葉を言えば満足か?」
「う……ナンデモナイデス、ゴメンナサイ」
「まァでも、」

やっぱり私はバカだ。

「オレの一言でどォとでもなるオマエのことは、抱きしめたくなるほどカワイイと思うぜ?」

こんな言葉でも喜んじゃう私は、救えないバカだ。





初心に戻って


 

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