受かる、なんて思ってなかったんだ。そもそも土俵が違った。この事務所に入れるのは男の子だけで、女の私が合格するなんて一体誰が思ったんだろうか。

でも、してしまったんだ。
今、私の目の前にある景色がそれをどうしようもないほど実感させたんだ。


「なんで女がここにおんねん。」
「え、あいつと一緒にレッスンせなあかんの?」
「別に対してダンスができるわけでもないやん。」
「どうせすぐ辞めるやろ。」
「俺らの邪魔だけはせんといて欲しいわ〜。」



あぁ、ごもっともだ。
彼らが吐く言葉は全てにおいて正論で、胸に刺さった。
だから、必死に頑張った。ダンスだってアクロバットだって、元々興味はあったし、女子にしては体力がある方で練習するのはとても楽しかった。それでもまだ、言葉がついてくる。頑張って、もっといける、できる。ただただ、必死で必死に


「しんどいやろ」
「は...はぁ...はぁ...はっ...え?」


少し残らせてもらって練習をしていた時、誰かに後ろから声をかけられた。振り向いたら、茶髪でちょっと怖そうな人。誰やっけ...あ、渋谷くん。一緒にオーディション受けてた...。なんでおんねやろ…?


「しんどいやろ。」

そこまで考えた時、もう一度言われた。

「しんどいって...何がですか?」
「しんどいやろ、必死こいてんの。」
「そんな...しんどくはないですよ。」
「ふぅん。」


一体なんなんだろうか。彼も練習するのだろうか。だったらもう出よう、私がおったら邪魔になるし...。


「あの...」
「なあ、」
「あ、はい。」
「何か歌って。」
「え、や、あの...」
「ほら、早うせぇや。」
「え、あ、はい...。」


その当時、好きだった曲を歌う。歌うことも好きだ。歌っていたり体を動かしていたりすると、嫌なことは耳に入らなくなるから...。


「〜〜〜♪〜〜♪〜」
「え、」
「おい、止めんなや。」
「あ、ごめんなさい...」


また歌い出す。
そしてまた渋谷くんの声と自分の声が重なる。自分一人の時では何も感じないのに。重なった声はどうしようもないくらいに綺麗で凄い、と思った。

「凄い...!!」
「え、なんや。」
「凄い凄い凄い!!渋谷くんの声めっちゃ綺麗や!めっちゃ好き!!」
「なんやねん、急に。」
「めっちゃ感動してん!」
「...なら、もっと歌えや。俺も一緒に歌う。お前の声好きやし...。」
「え、ホンマに?!めっちゃ嬉しい!ありがとう、渋谷くん!!」
「...すばる、」
「ん?」
「渋谷くんってなんかしっくりこんからすばるって呼べや。」
「.........うん!!ありがとう、すばるくん!!」
「おん…はよ、次歌おうや。」


その日は事務所の人が呼びに来るまでずっと2人で歌ってた。


あの頃と
しんどいだろうな、と思って見ていた。
どうせすぐ辞めていくんだろうなと。
でも、目を輝かせて俺を見るこいつに、何となくこれからもつるむことになるんだろうなと思った。

- 1 -
←前 次→