30 体に感じる揺れに目を開ければ 聞きなれた声がした 「起きたか」 『・・・・・・・』 「よく、その身体で生き延びたものだ」 『・・・・・・全部吹き飛ばしたの』 「それはまた、アナログだな」 『そうね・・・火事場の馬鹿力って私みたいなのにもあったみたい』 この状況は、前にもあった気がする 今から随分と前の様に感じる 人を殺したのは初めてだ 見殺しにしたことは何度もあるが 実際に、爆破したのは私なのだから この場合は、私がやったことになるだろう せっかく、スキルを磨いたというのに 結局は力づくで 自分のこんな細腕で拳銃なんて・・・ あんな風に動けるとは思わなかった きっと、あの男もそう思ったのだろう 私は、聖護をまねたのか、ゲームをまねたのか 自分でもよくわからなかった 「君の父親も免罪体質であり、その娘である菖蒲もその体質を引き継いでいた。 そして、自分の娘をシビュラへの供物とするため母親と引き離し隔離した」 『・・・・・』 「おそらくは、シビュラと何らかの取引をすることで、自身については保留としていた」 『・・・・・・・そうね』 「君は」 『結局、何にもなれなくて。なにもできなくて。何の・・意味もなくて・・・ 聖護の言うとおり、ただの供物でしかなかった。私が私でいる必要なんて何もなかった』 「・・・・・あの場所は、君に知識を植え付ける場所だった」 『・・・・・本なんて読まなければよかった』 「変なことをいう。あんなに楽しそうに読んでいたのに?」 『・・・・・』 「あの男にとっての君の価値は、その程度だった・・・」 開いた口は、何も言わずに息をついて閉じられた 人気のない道は、暴動の後のためか 自分たち以外の誰もいなかった 聖護が道を選んで進んでいるからなのだろうが 冬の寒さと伴って しんっと妙に静かで男の歩く音だけが響いていた 温かいなぁ・・・ 自分の推測はほぼ当たっていたようだ 思ったよりも心身共に弱っているのか 独り言のような返事に耳を傾けていた 『・・・名前』 「?」 『名前、呼んでほしい・・・』 「・・・・・」 『新零でいたい・・・・・私でいたい』 「それは」 『終わりたくない』 「・・・・・・・」 『私が、私でいたことを肯定してくれるのは、聖護しかいないもの・・・ 観察・・・続けたい・・・・・・』 すっと細められた目がぼんやりと、どこかを見ている 『まぁ・・・私が、なんて言おうと、置いて行くんでしょう?』 「新零」 『・・・何?』 「もし、」 『だめ、選択なんていらないわ』 「・・・・・言うようになったな」 『お荷物になんてなりたくない』 「死ぬのか?」 『・・・・・・・・不本意ながら?』 「・・・新零」 『何?』 「呼んでほしいと言ったのは、君だろ?」 『そうね』 何度か呼ぶうちに、少しずつ僕のシャツを掴む手が強くなった 目を閉じたままの新零が、軽く返事をする 少しだけ寄り道をしよう まだ、そのくらいの時間はある ←→ 目次 |