番外6

本に囲まれ
本の中で生きてきた新零は、
本に描かれた人間を現実の人間に当てはめようとする
もちろん、哲学書や、人間の悪い面を書いた小説も読んでいるため
夢ばかりを見ているわけではない

だが、おそらく彼女の好みからして
物語、それも乙女の類が出てくるものが好きなのだろう
話す口調も、フリルやレースの多い服も、つまりはそういうことだ

だからなのか、男性というものに対して
夢見がちなところがある
正反対なものも読んでいるというのに
どうしても、乙女の方に傾くのは、そうであってほしいという
彼女の希望なんだろうか

いや、単に意味がわかっていないだけなのかもしれない
性教育なんてもの彼女は受けていないだろうから

ついでに、彼女は、何か国かの文字が読めるらしい
文字の羅列から、その意味を理解することができる
だが、聞いたことのない音は発音することができないため
その発音は、日本語ですら初めは危うかった

話は、戻すが
とにかく、わかって言っているのだろうが夢見がちなのだ

『お姫様は、王子様に助けられるものなのよ』

「僕は、子猫を拾って帰っただけだ」

『・・・・別に、私がお姫様で聖護が王子様なんて言ってないわ』

「そう?」

『でも、ラプンツェルみたいね。髪を垂らした覚えもないけれど』

「君の独り言が大きかったんだ」

『・・・失礼ね』

「朗読とでも言えば良かったかな?」

『・・・・・・・・』

少なからず聞かれていたのは恥ずかしいのか
拗ねているようにも見える

『・・・聖護なんて、王子様って柄じゃないわ』

「・・・」

『そうね、馬よ馬。白馬の王子様の馬ね。白いし』

「ほう、僕が馬だと?」

隣に座って話しかければ
本から目線を上げて、こちらを見た

「・・・」

『聖護は、人に惚れないから成り立たないわ』

「かわいいとは、思っているが?」

『ロリコン』

「新零、この世界に王子様なんていない」

『そうでしょうね』

「なんだ、もうあきらめたのか」

『・・・・・・っ』

彼女の手を絡め取って
そっと体重をかけて押し倒す

「お姫様を助けに来る王子様をご所望なら
 僕は、悪人を演じようか」

『そうね。でも残念、この物語の姫が私なら、
王子様が助けに来ようと、ここを離れたりしないわ』

「・・・・」

『存外、ここの生活が好きなのよ』

「王子より悪人を選ぶのか」

『聖護の気がかわらないうちは?』

すっと伸びた腕が首に絡まる

「いいよ、君がそうしたいのなら、その王子様から守ってあげよう」

『ありがとう』

彼女の体重を支えたまま起き上れば
そのまま倒れこんできたので
膝を貸してやることにした

構ってほしいのなら、そう言えばいいというのに

足に乗った小さな頭を撫でれば
そのまま目をつぶって眠ってしまった

キスをしたら、起きるのだろうか・・・
いや、王子でない自分は、
彼女を眠りにつかせる役割が合っているのかもしれない


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