「椿、戻りました。すみません、まさか母が来るなんて思ってなくて」
「署に会いに来るなんて聞いたことありませんよ。ちゃんと説明しておいてください」
「はい」
「素敵なお母様ですね」
「はい!あ、プリンの差し入れ貰ったんで入間さんも食べますか?自家製ですけど」
「お母様の手作りですか?」
「ちなみに卵と牛乳も自家製ですよ」
「それはまた、美味しそうですね」
スプーンを取りに行って戻ってきた椿が、にこにこと嬉しそうに私のデスクの上にプリンを置いた。珈琲入れてきますねと再び離れた彼女をしみじみと見るが、あまり母親とは似ていないらしい。父親似だろうか。いや、必ずしも両親に似るとは限らないから何とも言えない。むしろ疲れて目が虚ろな時の彼女に似た人物を自分は知っているような気がするが未だに思い出せないままでいる。
「これ入間さんに言ったか覚えがないんですけど、私、両親と血が繋がってないんです」
「・・・それは初めて聞きましたよ」
「まぁだから何というわけでもないんですけど。入間さん、母の顔をじっと見てたので気になってそうだなって」
「気にはなりましたけど、聞くつもりはありませんでしたよ」
「それはいらぬ気遣いをしてしまいましたか」
「いえ、貴女のことを知れて良かったです」
深くは聞かなかった。連絡の少ない娘を心配して署まで足を運び、手作りのプリンを持ってくる母親と、母を褒められて嬉しそうにする彼女を見れば自分が口を挟む様な事は何もないのだとわかる。「ごちそうさまです。美味しかったですよ」と手短に感想を添えれば、椿はまた嬉しそうに笑っていた。
基本、甘々にはならないと思います。ほのぼの、たまにシリアス。
主人公は”い”を抜いて話すことが多いです。入間さんは”い”を抜いたりしません。