01

静かな夜だった
新月のため、外はいつもよりも暗いものの
秋風の吹く心地の良い日だった

家族に「おやすみ」と告げて自室へと戻り
いつもの通りにベッドに入った。


高校生活も3年目、人それぞれ進路を考えることになる
クラスでも大学受験を控えた生徒は項を垂れながらも参考書を開く光景にも見慣れてきた

このまま妖祓いとして生きていく私にとっては縁のない話だ。

祖父が亡くなり、父の代となった時から
代々続いてきた椿の家も終わりが見えて来ていた。
他の家と違い、縛りが多い椿家がここまで続いてきたことが奇跡に近い。

分家を持たず本家のみ
代々椿家の当主は、男兄弟の1番年長のものが務め
妖を見る目を持つのは男兄弟の年長者と姉妹たちに限られてきた。

次男以降の男児は上の兄弟が他界しない限り妖を見ることさえできず、
代わりに椿に生まれた女は、みなそれぞれぞ妖を見る目も強い力も有する。
多くの場合、同じ家業の元へと嫁ぎ、家同士の協力で椿の家を存続させてきた。見えない兄弟たちは役目を終えれば、家との縁を絶ち妖の少ない都心へ出ていく。
最近は血縁者も減り、前者が多くなっている。そうまでせずとも、早々に家を畳んでしまえば良かったというのに歴史というものは、そう簡単には肩の荷を降ろさせてはくれないらしい。

当主ならびに、それを支えた女性陣は名門と呼ばれるに等しい力を持っていたと過去の書物には繰り返し、その強さが記されていたけれど実際のところは、どうだったのだろう。嫁いでいった家は、今も栄えているんだろうか。


次期当主は今年22になる兄
高3年の私、高2年の妹

名門椿も、今やこの人数
妹なんて、もう祓い人になる気すらない
自己防衛は学んだものの
高校を卒業したら都会の大学に行くなんて言っていた。
最近、妖絡みの書物を見てはいるようだけど、実際のところどうするつもりかを今度しっかりと聞かないといけない。進学するのなら学費のこともある、こちら側へ来るのなら正しく教えなければいけない。

私は好きでやっているけれど
本当のところ兄でさえ、継ぐ気があるのかすらわからない。

『.........』

忘れよう
今日は、的場に勝てたのだから気持ちよく寝ようと思っていたのに、考え事をしたせいか、もやもやとしたまま疲れに身を任せて眠りに落ちた。


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