03

“なんで、あんなに傷だらけなんだろうね”
“なんか、怖いよね...”

“また、傷が増えてるよな?”
“顔はいいのに、もったいないよなぁ椿って”

「明翠、何、また1人で昼食べてるの?」

『悪いですかー』

「また、絆創膏増えてるし...大丈夫?」

『これくらい平気よ』

「なら、いいけど。ほらっ、一緒に食べよう?」

『うん、ありがとう』

「で、的場くんとは、どうなのよ」

『だから、幼馴染だって何回答えたらいいのよ』

「でも、昨日も先輩の告白断ったんでしょう?あ、もしかしてそれで怪我した?」

『断ったけど、怪我とは関係ないわ』

「ふふっ、冗談!あ、噂をすれば的場くん」

『.........』

「お昼なら、下で食べた方がいい」

『そう?ありがとう的場』

「...どういうこと?」

『屋上は人が多いってことじゃないかしらね』

「ふぅうん。それより、相変わらず名字呼びなのね」

『それは、昔からよ!名前で呼んだことない』

「嘘。私、小さいころは幼馴染のこと下の名前で呼んでた.途中からやめたけど」

『別に、深い理由はないけど。昔から的場は的場なの』

「ふぅうん」

『何よ、その反応は...』

「べっつにー」

『.........』

「怒らない怒らない。かわいい顔が台無し」

『かわいくない』

「明翠は、怒ってもかわいい」

『そういう、柚晴さんも、相当おもてになるようですが?』

「そんなことない」

『美人さんが何言ってるのよ。身長少しわけて』

「今年も伸びなかった?」

『3ミリ伸びた。』

「ふっ...3ミリって。今、いくつ?」

『152.5』

「...微妙」

『.........』

「私も、そろそろ止まらないかなー」

『不吉なこと言わないでよ、私はまだ止まったわけじゃない!』

「ごめんごめん」

『柚晴、今いくつ?』

「168cm」

『.........』

「身長あげるから、代わりに、その余ってる脂肪分を私に頂戴」

『.........』

「ふっふっー。柚晴さまの観察眼を舐めたらいけないよ」

『あげれるならあげたいっていうほどないわ』

「私よりはある」

『そうね』

中学からの付き合いの柚晴は、私が傷だらけで学校に来ても
こうやって、何事もないかのようにふるまってくれる
時には心配して言葉をかけてくれることもある

「ねぇ、明翠」

『何?』

「本当に、その傷大丈夫?」

『...うん』

「その怪我の理由。的場くんは、知ってるの?」

『うん』

「やっぱり悔しいなぁ...」

『?』

「でも、明翠が言わないってことは、私が知ったところで、どうすることもできないことだってことでいいんでしょう?」

『うん...ごめんね。でも、私は大丈夫だから』

「クラスの子たちも、あんな遠巻きにしなくてもいいのに」

『まぁ、こんな怪我だらけだったら私でも、関わるか悩むところだわ』

「そう?私は、気にならなかったけど」

『柚晴はすごいね。そういうところ尊敬する』

「それ、褒めてる?」

『すごく褒めてるわ』

そうやって、また笑って
くだらない話をして
町のケーキ屋においしいところがあるだとか
今日の帰りは一緒に帰ろうだとか話しいてる間に予鈴がなった


数少ない友達の1人
本当は、全部話せたら楽なのだけど
妖の話をしたところで、彼女には見えないから
関係のない世界のことを教えたくなかった



『それで、屋上の妖は?』

「おれが片付けた」

『どんなのだった?』

「そのあたりにいる小物と同じ。練習にはなったよ」

高1の時は、的場とは違うクラス
2年、3年は、柚晴とも的場とも同じクラスだった

「昨日の呼び出しは、断ったの?」

『知ってたの?』

「あぁ」

『当然断った。興味ないし、どうせ上手くいかないもの』

「片桐さんとは、上手くやってるだろ?」

『柚晴は、優しいの。こっちにもしつこく干渉してこないし。本当は、嘘もつきたくないんだけど、仕方ない』

「.........」

『どうして、私たちには妖が見えるんだろうね』

「さぁ」

『見えない世界って、どういう感じなんだろうね』

「.........」

『今より、静かなのかな』

「そんなことを考えても仕方がない。見えるものは見える」

『もし、見えなくて、祓い屋の人間でもなくて.。すごく、何事もなく、普通に生活してたら...私は、私でいられたのかな』

「もしそうだったら、明は、今よりずっと」

『ずっと?』

「何でもない...そんなことを考える暇があったら怪我をしない方法でも考えなよ。そうすれば、片桐さんに余計な心配をかけることもなくなる」

『そうだけど...実践あるのみだから、仕方がないでしょう?結界の強さを測るのも大変なんだから、ギリギリを見定めないと』

「あの札は、使えるようになったのか」

『的場こそ、弓の技術は上がったの?』

「そういうお前も弓の練習をしてみたらどう?」

『破魔矢は的場の方が強く力が出るでしょう?椿は、陣がメインなんだから』

「椿の陣は、書く必要がないから便利そうだが、弓も明なら上手くいく」

『うーん』

「どんくさいから、傷が増えるだけか」

『どんくさいは、余計。破魔矢か、私にもできるのかな』

それから、いくらか練習したけれど
物理的に力がないせいか上手くはいかなかった
もっと練習すればできるかもしれない

もともと、椿の人間は陣が基盤だ
描かずとも正確に思い浮かべることが出来れば
ある程度の距離に陣を構えることもできる
だから飛び道具も必要ない
クナイに似た物も使うことはあるけれど
基本的には、陣と呪術を色々と覚えてきた
最近は、蔵で見つけた刃物を試しに使ってみたりしている

的場の弓と同じで、人には同じようには見えないらしい
それに、力のない私でも重みを感じないのだ


「明姉、ごはん出来てるよー」

『ありがとう、明日って、私が当番だっけ』

「うん。明日は、から揚げがいい」

『お惣菜コーナーのでいい?』

「明姉のが美味しいんだから、ちゃんと家で揚げたやつがいい」

『善処します』

靴を脱いで一度着替えに自室へ向かってから食卓についた

祓い人の父と祖父と、祖母と中学生の妹、
今日は、大学生の兄が帰ってきていたので
6人で食事をする
見かけ上、家族仲は悪くはなかった


ALICE+