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「...明翠?!」
『っぁ......?!』
反応があったので来てみれば
妖の姿は見当たらず、見慣れた姿を捉えた
ザァアアと音を立てて
滑り落ちてきた、ぼろぼろの明翠を見下ろす
「こんな時間に何して」
『...妖追って山の中入って、そこから落ちて』
「何馬鹿やって、立てる?」
『右足捻ってるみたいで』
「はぁ....、ほら、背中貸しますよ」
『......う』
「.........」
式に傘を持たせ、明翠を背中に負ぶった
良く見れば手のひらも傷だらけで
身体も酷く冷えている
『どこ行くの?』
「ここからなら、おれの家の方が近い」
『.........』
「追っていた妖は、祓ったのか?」
『うん。ねぇ、ここ妖が』
「少し前から張っていたんだけど中々引っかからかったんだ。来たかと思えば、明翠だった」
『それは、残念...』
「...!明、出血は?」
『手当はしたけど、膝とか色々...。もしかして、私、餌になった?』
舌うちをして、道を急ごうとすれば
明翠が、なぜ急ぐのかと聞いた
何を言うのかと思えば、自分は平気だから祓えばいいと言ってくる
『せっかくの機会じゃない、祓わないと』
「そんな状況じゃない、風邪を引く」
『引いたら引いたよ。ここで妖を逃す方が嫌』
この声色では、何を言ったところで聞く耳を持たないだろう
このまま強引に連れ帰ったところで目を離したすきに戻りかねない
盛大に舌打ちをしたいのを抑え来た道を少し引き返した
明翠を木の下におろし
様子を窺った
「明翠は、無理するな」
『そうはいっても、餌は私なんだから無理しなきゃ。私が喰われるじゃない...冗談じゃないわ』
「そんなことは、させない」
『......』
「おれが仕留める」
『手伝いはいいでしょう?』
「仕方ないですね。...少し離れます。明翠はそこを動くな」
『...了解』
そう言って、自分の周りに結界を張るのを確認してから
その場を離れた
式を連れているとはいえ
やはりこちらの分が悪い
的場の姿が見えなくなって
残していった式が少し離れたところに立っている
私が結界を張ったから近づけないのかと
少し申し訳なくなる
『結界を張っていたら、意味ないわね』
体力を温存しておきたいこともあって
結界を解き
短刀を手にした
雨音で動きを探りにくいが
妖気は確実に近づいている
刀を持つ手が震える
体温が徐々に下がっていくのがわかる
濡れた服も気持ち悪いし
体中が痛んだ
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