15
あの日、夕方ごろに帰宅したけれど
2人は、どこかへ遊びに行ったのか玄関に靴はなかった
それから数日
『最悪』
妖を追って、少し森の奥に入りすぎてしまった
途中から降り始めた雨も止みそうにない
木が生い茂り視界が悪い中
濡れた落ち葉に足を滑らせ坂を転がった
大した坂でなかったのは幸いだが
それでも、どこか捻ったのか足首に痛みが走った
すぐに終わらせるつもりだったこともあって
雪もいなければ、式を1つも連れていない
先ほどから何度か雪を呼んだけれど、来てくれる気配もない
どこかへ遊びに行っているのだろう
あぁ、自分もただの人間だなぁと思う時である
妖どころか動物すらいない
もう少し降りたところに池が見える
そこまで行こうと思って、またバランスを崩して転んだ
これでは久しぶりに病院行かなければならなくなりそうだ
雨宿りできそうな場所を探し
少し大きめな木の下に身を預けた
雨音に耳を傾けながら、簡単に怪我の手当をする
ここまで生き物がいないとなると
大妖がいるのかもしれない...
せっかくなら祓いたい、なんて甘いだろうか
『...横取りはよくないか』
少し先に罠が仕掛けてあるのが見える
誰かが先に目を付けているらしい
が、だとしてもだ、
横取りも何もない、挑戦権は先に出会った方にある
右足を少し引きずって、近づけば、もしかしなくとも見慣れた字だった
的場のやつ、こんなところに仕掛けてたのか
つまり、何かがいるわけだ...
もしかして、私は、あの妖に誘い込まれたんじゃないか?
追っていた妖は祓ったけれど
もしかしたら...なんて
そう思いながら、そっと札に触れれば何か飛んで行った
紙でも仕込んであったのだろうか
まるで妖扱いされた気分だ
来てくれないかなぁなんて、少し期待してみる
来てくれたら、感謝の心を籠めて静司くんと呼んであげよう
と、独り言を全部ため込んだ
『はぁ...』
日が落ち始めた...
薄暗い中に1人なんて
嫌なことを思い出す
昔、構ってくれない母に迎えに来て欲しくて
家出をして神社に隠れたことがあった
結局、妹が熱を出したとかで
誰も迎えに来ずに、一晩神社で過ごした
気づいたら寝てしまっていて
翌朝、神主さんに起こされた
家に帰って
祖父と兄に怒られた
両親は、妹について病院に行っていなかった
『...やめよ』
こんな時に思い出さなくてもいいのに
また、ため息が出た
『.........』
母の使っていた短刀を取り出す
随分丈夫にできているのか、護符の札を付けて投げてしまったけれど
刃こぼれせず、傷一つつかなかった。
母は、彩季に譲りたかったのかもしれない
もしも彩季が、こちらに来るというなら渡してあげたら母は喜ぶだろうか
母が生きていれば、綴木について詳しく聞きたかった
廃業している手前、そちらの祖父母に会うことはできず
そちらの資料を手にすることができなかった
この短刀の本来の使い方も、わからいないままだ
『余計なこと考えるくらいなら、登ろうかな』
まだ雨も降っているけれど
これ以上暗くなったら、本当にここで一晩過ごさなければならない
雷だけは鳴らないで欲しい
そう願いながら、適当な棒を探して少しずつ
上を目指した
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