03

「よく、動けましたね」

『ちょっと体がふわふわしてる』

寝たきり状態だったにも関わらず
体を起こして、外へ出て行ったのだ
会話も問題ないところをみると
常識には当てはまらない状態で眠っていたらしい

「無理はしないでください」

『.........』

先ほど明翠が寝ていた部屋まで連れ戻し、脚の手当をしながら最低限聞いておかなければならないことを簡単に聞いていく。本来なら、もっと落ち着いた状態で聞くべきことではあるし、そうしたいのはやまやまだが、彼女が生きて戻って来たことは、的場に集っている祓い人の間にあっという間に広まってしまった。椿のことを的場が預かった以上、上の人間として説明をしておかなければならない。時間が経つほど変な噂が流れ、話がこじれることを防ぐためには致し方ない。

彼女の話しに耳を傾ける
他人事の様な客観的な物言いに
的場静司にではなく
的場の当主に話しているのだとわかる
話している、というよりも
報告というのが正しいのかもしれない


「わかりました、ありがとうございます」

概ね記憶が残っている。喰われる前の記憶はそのままに、喰われた後の記憶も、ほぼ残っている。妖の行動と感情の関係は複雑で、彼女の意識とは別に妖の体は動くものの、不意に彼女の意思が反映されることもあったと言う。その強さも色々で、一概には言えない。喰われている間は少しずつ記憶は欠落していき、自分が誰であることも喰われる前の記憶も、ほとんど覚えていなかった。

妖の目を通して見た物、体感したものを
明翠自身も記憶している

「...4年前に私に近づいたのは、明翠の意思だったんですか?」

『......うん』

視線が下がる

『あの時は、記憶も動作も、全部リンクしてたの。喰われて時間も経ってなかったから』

「...痛かったですか?」

『うん。そこは、さすが的場ね、焼ける感じに痛かった』

「すみません」

『...的場が謝るところじゃないわ。喰われた私の過失でしょう?』

「............」

『ねぇ、このことは、周りにはどう残ってるの?』

「世間的には、行方不明者として捜索願が出ているところです。祓い屋界隈では、明翠の力故に引き起こした惨事...というところですね」

『...そう』

「私は、貴女の妹あたりが噛んでると踏んでますが...本当のところどうなんです?」

『私が原因ということにしておいて』

「......」

『......』

「何が起きたのか知ってるんですね」

『妖の記憶も残ってるもの、どうして狙われたのかだってわかる』

視線をずらして息を吐く様子を眺める
話すつもりはないのだろう


「明翠は、これからどうしますか?」

『妖祓いとして、やっていくつもり』

「この際、このまま的場に入りますか?」

『いいの?』

「はい」

『...でも、やっぱり』

「無理にでも、うちに入れるつもりなので何を言っても無駄ですよ」

『え?』

「どうせ、自分が的場にいたら邪魔になるとか、迷惑をかけるとか考えてるんでしょうけど。ここを出て、行く当ても、何もないのに他の選択肢があるんですか?」

『...それは』

「今の貴女は、危険因子でしかない。的場が預かることが最善だ」

『......そうね』

消えそうな声に、またいなくなってしまうのではないかという不安に駆られる

「今は、体調を整えることだけを考えなさい。それから本調子になるまでは、邸の外にはでないと約束してください」

小さくうなずいた
視線は外へと逃げる

「わかりますか?」

『外に雪がいる、少し遠いけど』

「.........」

『目、痛くない?』

「え、あぁ...」

『...そっか』

「.........」

『......私』

ちゃんと、人間なのかな

そう呟いて、ふっと意識を失った



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