02
邸の周りが何やら騒がしいと思い、外に出れば
見覚えのある黒狼が顔を見せた
それだけ、彼女の存在が戻って来たということだろう
「気づきましたか」
「あぁ、生きていたんだな」
「えぇ、まだ意識はありませんが。そろそろ目を覚ますころだ」
そうかと一言置いて姿を消した
大妖がでたことで、急にこの辺り一体が静かになったなと
3分の2となった視界で空を見た
「!」
その3日後
一仕事終えて彼女の様子を見に部屋に入れば
いるはずの彼女がいなかった
今日に限って式を置いて行くのを忘れるとは
気づかないうちに自分も疲れていたらしい
式に彼女を探す指示を出しながら
ばたばたと廊下を走り外へ出る
遠くには行っていないはずだ
そう思いたいが
雪が戻って来たことを思うと
その移動可能範囲など考えたくもない
そう勢いよく邸を飛びしだしたと言うのに
すぐ傍で間の抜けた声が聴こえ
思わず手にしていた紙を放してしまった
『的場...?』
「.........」
『...的場、静司?』
「はい」
『良かった。人違いだったらどうしようかと思った』
「.........」
『タイムトリップしたみたい』
「...そう、ですか」
『今いくつ?』
「...22になりました」
『.........』
あまりに普通に話しかけてくる明翠に上手く言葉が出てこない
「どこか痛みますか?」
『どこも痛くないわ』
「おかしなところも?」
『うん』
「...ひとまず部屋に戻りましょうか」
『的場のあんな顔初めて見た』
「?」
『あんな慌てた顔初めて見た』
「...明翠が勝手に居なくなるからでしょう」
『家に帰ろうと思ったの』
「.........」
『馬鹿でしょう?誰もいないってわかってるのにね』
それで、すぐに引き返してきたのと続け
ふっと顔を曇らせた
そのまま泣いてしまえばいいのに
裸足のまま外へ駆けだした彼女の足は傷がつき
その白い足に赤い痕を残していた
乱れた髪をそっと直してやる
少し大人びていた彼女が酷く幼く見えた
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