1 静かな夜だった 新月のため、外はいつもよりもいかばかりは暗く見えたが 秋風の吹く、心地の良い日だった 家族に“おやすみ”と告げて自室へと戻り いつもの通りに事をすませ ベッドに入った 高校3年は、人それぞれ進路を考えることになる クラスでも大学受験を控えた生徒は項垂れながらも参考書を開いている まぁ、私には、何の関係もないことなのだけど 祓い屋家業の椿家は、分家を持たず 本家のみの一族だ。 代々当主を務める男は、男兄弟の1番年長のものだけが妖を見る目を持ち、長兄の命がある限り下へ続く男兄弟は見ることすらできなかった。代わりに椿に生まれた女は、みなそれぞれぞ妖を見る目も強い力を有し、多くの場合、同じ家業の元へと嫁ぎ、家同士の協力で椿の家を存続してきた。 妖の少ない都心へ出ていく者もいたらしいが、最近は本家の人数も減り、前者が多くなっている 現在の椿家は、祖父の代から父の代へと移行し 次期当主は今年22になる兄 私は、長女で下に1つ下の妹がいる 名門椿も、今やこの人数 元々数が少なかったけれど 当主ならびに、それを支えた女性陣は 名門と呼ばれるに等しい力を持っていた・・・ なんて言われるけれど 実際のところ、どうなんだろうか 妹なんて、もう祓い人になる気すらない 自己防衛は学んだけれど 高校を卒業したら 都会の大学に行くなんて言っていた 最近、その手の本を見るようになったけれど どうするつもりなのだろうか 私は好きでやっているけれど 本当のところ兄はどうなんだろうか 今日は、的場に勝てたのだから 気持ちよく寝られると思っていたのに 考え事をしたせいか もやもやとしたまま眠りに落ちた → 目次 |