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『・・・的場・・・どうしよう、』

「?」

『彼氏ができた』

「は?」

『妹に彼氏ができた・・・』

「・・・・・・・・」

突然何かと思えば
明翠のことではなく、妹のことらしい

『・・・・・た、確かに17歳だし、そういうことはあるかもしれないのだけど』

「明翠が口を出すことじゃないだろ」

『でもっ!』

「でもじゃない」

『・・・・・・・』

「・・・はぁ、気になるなら見に行けばいい。同じ学校なんだろ?」

『・・・そうする』

何か気になることがあるのか
視線は一向に上を向かず
ため息ばかり聞こえた



昨晩、突然、妹に彼氏ができたと言われた
そりゃぁ、同学年にもお付き合いをしている人はいるし
別におかしな話ではないことは、分かっていた

「ねぇ、明姉」

『・・・・うん』

「どうやったら、長続きするかな」

『長続きって・・その人と?』

「うん。上手く付き合うコツとかさ!」

『どうして、私に聞くのよ』

「どうしてって、的場さんと付き合い長いじゃん」

『的場は幼馴染なんだってば』

「でも、よく一緒にいるし、いつも何してるの?」

『いつも一緒じゃないよ。学校では友達といるし』

「わかった、的場さんとは幼馴染でいつも一緒じゃなくて、で、何してるの?」

『・・・たまに一緒に学校行ったり帰ったり
 あと、妖の話とか、祓ったりとか・・・?』

「この十数年、ずっと?」

『うん・・・だからね、幼馴染なんだって』

「・・・・・・・・」

『お兄ちゃんに聞いた方がいいんじゃない?彼女いたって話聞いたことないけど』

「聞いたら、へこんじゃったの」

『・・・あぁ』

「明姉と的場さんって、喧嘩とかしないの?」

『え、するに決まってるでしょう?一緒にいてしない方がおかしいわ』

妹は、少し驚いた顔をして
少し羨ましいと言った

『・・・・彩季に彼氏かぁ・・・』

「どうして、嘆くの!!」

『なんか、淋しい』

「淋しいって、別に結婚するわけじゃないんだから」

『それでもさぁ・・・』

「・・・そういえば、明姉、大学行かないって本当?」

『うん、行かないよ』

「どうして?明姉、頭悪くないじゃん」

『・・・あんまり興味ないの』

「・・・・・遠慮してるの?」

『遠慮?・・・あぁ、お金の心配なら必要ないと思うよ
 私は、祓い人してやっていきたいから大学では何も学べない
 あえていうなら、経営学とか?』

「高校卒業したら、就職?ってこと?」

『うん。・・・家を出て、祓い人としてやってくわ
 生計が立てれなければ、アルバイトでもすればいいかなって』

「家を出る・・・?」

『的場の一門に入ろうかと思って』

「・・・・・なんで」

『その方が、仕事が入るし、家に迷惑をかけなくて済む』

「迷惑なんて誰も思ってない!!」

『・・・ありがとう彩季。でも、誰がなんと言おうと私は家を出るわ
 それにね、一門に入れば・・・』

「・・・・的場さん?」

『・・・・・・・・・』

「やっぱり」

『・・・・・・・・』

「好きなんだ」

『う、うるさい』

「図星」

『・・・好きとか、あんまりわからないけど
 でも、・・・その、守りたいなぁって』

「・・・ふふ、恋する乙女の顔だよ明姉」

『そんなことない』

「あーあ、羨ましい」

『・・・・その顔やめてよ』

「照れてる」

『照れてない』

好きか嫌いなら、もちろん、好き
でも、それが恋愛感情の好きかと聞かれたら
わからない
抱きあいたいとかキスがしたいとか、そういうことがしたいと思ったことがない
傍にいられたらそれでいい




「それで、妹の彼氏は、どうだった?」

『・・・いまいち?』

「顔が?」

『的場に劣る・・・・・妹が、それでいいなら私は何も言わない』

「おれと比べないでもらえます?」

『他に、どう表現していいかわからないんだから許して』

「まぁ、いいけど・・・・まだ何か?」

『・・・いいえ、何でもないわ』

「?」



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