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「新零!!お前、やっと帰って来た!!赤葦も!!」
「光太郎、何してるの・・・」
「新零すまん!!悪気はなかったんだ・・・」
「・・・・わかったら、もう私の話を勝手に人に話さない」
「わかった」
「返事はいつもいいから不安なんだよ。すぐ忘れるくせに」
「ごめん」
「ごめんですんだら警察いらない」
「はっ!!」
「・・・もういいよ、結果オーライ」
「いいのか?本当に怒ってない?」
「うん」
「はぁ〜良かったぁ」
「木兎さん、ずっと待ってたんですか?」
「おう!!」
「家の中で待てばよかったのに」
「さよ姉に追い出された」
「・・・・あぁ、光太郎もダメなんだ」
「さよ姉ほんと男いるとき怖いよなぁ・・・いなくても、ケツ触ってくるから怖いんだよ」
「ケツ?」
「光太郎くん、本当いいお尻してるよねぇ〜って触ってくる」
「・・・・・」
「昔からそうだよね。じゃぁ、まだ中にい・・・・」
椿がそう言いかけたとき、中から人が出てきた。2人とも俺たちの方をちらりと見たが、話しかけたりはしてこなかった。「今の、さよの妹?何、男侍らせてる感じ?」「違う違う、片方は従弟。もう1人は初めて見たし、友達じゃない?」なんて声が敷地の外から聞こえてきた。
「うわぁ、後でなんか言われそう」
「俺、久しぶりに見たけど、まだあんな感じなのか?もったいねぇよなぁ」
「ちゃんとすれば、もっといい人見つけられるのにね。遊んでるのが楽しいみたいだけど」
「・・・・・」
「赤葦、さっきのが私の姉ね。椿さよ」
「うん、前に写真で見せてもらったからそうだろうなって」
「美人なのになぁ」
「だよねぇ。性格が問題ありなのが残念」
「赤葦は、どっちがタイプだ?」
「え?」
「新零と、さよ姉。顔だけ見てな!!おっぱいは、さよ姉の方がでかいけど」
「ちょっと、うるさい光太郎」
「新零ですね」
「・・・・・」
「すっぴんなら、俺は、さよ姉派だけどな・・・・・新零、どうかしたか?」
「なんでもない」
「?」
「じゃぁ、俺たちもう帰るからな!」
「うん、赤葦、送ってくれてありがと」
「また明日学校で」
笑って手を振ってきた新零に安心した。1年の時のような少し迷った顔は、もうしていなかった。
「赤葦、ありがとな」
「どうしたんですか急に」
「新零のこと追いかけてくれてさ」
「・・・・」
「あんな顔の新零、久しぶりに見た気がして嬉しくてよ」
「やっと笑ってくれたんで、俺も少し安心しました」
「お前らが結婚したら、俺と赤葦は親戚だな」
「・・・・は?」
「ん?違うのか?」
「そりゃぁ親戚でしょうけど」
「だろ、お前、新零のこと好きだもんな」
「・・・・・・・」
「え?何、驚いた顔してんだ?!」
「木兎さんが、気づいているとは思わなかったんで」
「ひっでぇなぁ、俺もそれくらい気づく。それに、お前はそういうやつだろ」
「・・・・・・・そうですね」
「これからもよろしく頼むぜ!!」
「誰をですか」
「え?俺と新零」
「木兎さんのことは知りませんよ」
「え?え?」
「帰りますよ。明日も朝早いんですから」
なんて濃い1日だったんだろう。
いつもなら明日の部活のことを考えるというのに、今は椿のことばかりだった。口に出すのは憚れるが、期待ばかりで苦しくなる。今日あの場で言うのは、少々ずるいような気がした。目を閉じた椿に触れなかった自分の理性を褒めてやりたい。どうしたものだろうか。明日呼び出して伝えるのは、どうにも何かが違う気がしてならない。なぜ世の中には椿の姉のように、あんなに軽いノリで付き合ったり別れたりができるのだろう。自分にはできそうもない。椿が昼間言っていた奴も思っていたよりも軽い奴だった。
「・・・・・・・」
1人で考えていても仕方がない。そんなことはわかっているのに、思い出すのは彼女のことばかりで、とりあえず開いた課題は、手につきそうもない。
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