04
おそらく、それ以外の理由で断られたことがあるのだろう。そんな顔をするクラスメイトを見下ろした。自分なりに話題を探したつもりだったけれど、どうやら失敗したらしい。一度途切れた話題から、またバレーの話へ持って行って、木兎さんの話をしたくらいからだろうか、また椿の顔が引きつったような気がした。ここまでで聞いた話をただ単純にくっつけると、断ったのが木兎さんという安易な結論が出てしまうが、あれとこれとは違う話だろうか?
「あー・・・」と下駄箱でため息をついた椿の見ている物を見れば、そういうとかと同じようにため息をついた。今日買い物に行く予定だったクラスメイトは既に教室にいるようだった。つまりは、謀られたということだ。なぜ俺と椿なのかという点は謎である。なんで?と不機嫌に階段を上がる椿について行き、教室の扉を開ければクーラーの入った快適空間で話しているクラスメイトがいた。呆れを通り越して言葉が出ない。
「これは、どういうことか説明してもらいましょうかねぇ?」
「どういうことも何も、お二人さんは何もなかったの?」
「そんなことどうでもいい。そっちは仕事さぼって教室でまったり雑談ですか?何考えてんの」
「まぁまぁ新零、そんな怒らなくても」
「怒らなくてもいいって、怒るに決まってるでしょ。決めた役割果たさずに人に押し付けて何」
「だって、新零と赤葦くんって何かお似合いって感じしたからさ気を利かせて」
「そうそう、新零はタイプじゃないっていうけど、わかんないし」
「そ、で、俺らはそれを聞いて赤葦を差し出したわけだ。椿さんと一緒なんて羨ましい」
なんてばかばかしい。結局、お節介と、この人たちのお遊びに付き合わされたというわけだ。椿が怒るのもうなずける。もしこれが学祭の買い出しという場でないのならまだいいが、今回はそうではない。待ち合わせの時点では、その場で揉める時間が無駄だと感じ買い出しに向かったが、こうなってしまえば、さすがに良い気持ちはしない。
「で、新零。赤葦くんとのデートはどうだった?」
「どうもこうも、あんたらのせいで、すごく気分悪い」
「そ、そこまで言わなくてもいいじゃん」
「そうだよ、私達は気を」
「誰も頼んでない!そういうの本当いらないから」
買って来た荷物を開いているロッカーに置いて、さっさと教室を出て行く椿を目で追った。静かになった教室に居心地の悪さを感じつつ教室の隅に買い出しのそれらを置いた。
「赤葦、悪かったな。その」
「・・・いい気分はしないけど。まぁ、俺はいいよ。人数少ない方がこの量の買い物は動きやすいし」
「そ、そうか・・・」
「新零もあんなに怒らなくてもいいのに」
「本当、ちょっとした計画だったのにね」
暗い顔の椿の友人2人は、どうしようという様子で落ち込んでいた。悪気があったわけではなさそうだった。椿の方も、カッとなっただけなら月曜日にでも仲直りできるだろう。・・・ただ、あそこまで怒る理由は、どちらが本命なのだろう?派手に音を立てて閉められた扉を開けて、後を追うことにしたのは、どういう風の吹き回しだろうか。
「椿さん」
「・・・・・・・何」
キッと向けられた顔は、まだ怒っていて、整った顔は残念なことになっている。小走りに追いかけて、直線の通学路の途中で彼女に追いついた。「なんで?」と少しだけ顔を緩めて不思議そうにこちらを見上げた。
「大丈夫?」
「・・・別に、気に入らないから怒っただけだし。あーいうの本当嫌い」
「椿さんのいう、あーいうのって、どのこと?」
「・・・どっちもだけど、今イライラしてるのは、私と赤葦をっていう方」
「・・・・・・」
「赤葦は、何とも思わないわけ?」
「いい気分はしない」
「なら、怒ればいいのに」
「椿さんが怒ったから、まぁいいかと思って」
「なにそれ」
ふいっと進行方向を見て、また歩き始めた椿をのんびりと追っていると、「なんでついてくるの?!」と振り返られたが、自分も同じ方向だと言えば、なんでとは言わずに、じゃぁお先にどうぞと前を進めてきた。
「私じゃぁ歩くの遅いから、先にどうぞって言ったの。なんで、横にいるの?!」
「だめ?」
「・・・だめじゃないけど」
「寄り道するの?」
「え?」
「さっき休憩したいって言ってたけど?」
「するつもりだけど・・・まさか」
「ついて行こうかと思った」
「過去形?」
「でも椿さん、嫌そうだから帰るつもり」
「・・・・・・赤葦のそういう所が私は好きじゃない」
「俺は、さっきみたいに怒ってる椿さん嫌いじゃないよ」
「・・・勝手にすればいいでしょ?!」
「じゃぁ、勝手にさせてもらいます」
そのまま隣を歩いていれば、「だから、なんで?!」と見上げられたので、乗せられるのも悪くないかと思ったと言えば、「意味わかんない」と怒られたものの、少しだけ色の着いた頬に興味が湧いた。自分の言わんとしていることを理解したのだろう。・・・やはり、今までの彼女のイメージは一度消去して今日1日のものを上書きしておくことに決めた。
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