「モテモテですな」
『嬉しいけど、複雑』
「新零が様になりすぎて、男子が可哀相」

入学して気づけば、学祭のシーズンだった
中学には学祭がなかったので学校総出で行われる祭りにわくわくとしていた
私のクラスでは、王道どころの喫茶店になった(他クラスと色々と被ってじゃんけんで委員の子が勝ちとって来たらしい)。大人しいシックな喫茶店をコンセプトに、衣装班と調理班と当日の当番を着々と決め、“新零はやっぱりこっちでしょ”との一言で、男装が決まった。バリスタの格好も嫌いじゃない。男女で服装に違いがあるもののメイド喫茶ではないのでワンピースとはいえシックで大人しいものだ。

1日目の午後のシフトに合せて準備室で着替えと髪型と化粧を整えて、さぁ与えられた仕事はこなさなければと教室に戻って30分後。写真撮ってくださいと言われ、撮って欲しいのだと手を差し出せば、私と撮りたいと言われ困惑した。

『ごゆっくりどうぞ』と配膳をして机から去ろうとすれば“あの、女性・・・ですか?”と控えめに聞かれ、はいと答えたものの、未だに聞かれるほどに中性的な容姿なのかと思った。その後も写真や、指名でばたばたと忙しくシフトを終えて、同時に上がった友人と残りの時間に他のクラスを周ることにした。

「新零のこと男だと思ってる乙女がどれだけいるんだろうねぇ」
「本当、罪つくりだねぇ」
『・・・なんか、とても疲れた』

ちらちらと見られているのも、“あの人かっこいい”と聞こえてくる声も嬉しいような嬉しくないような複雑な気持ちでいっぱいである。

「百合の彼氏って学祭来ないの?」
「明日来るって、今日、向こうは授業だし受験生だからさ」
『そうか、明日は一般の人も来るんだ・・・・・あ』
「何々」
『兄が来るかもしれない・・・いや、兄どころか家族総出かもしれない』
「末のかわいいかわいい妹のために横浜から来てくれるんでしょう?」
『・・・・・』

最悪だ
間違いなく来る
行くからと連絡すれば、私が来るなということをわかっていて黙っているのだろう
「来ちゃった」という母の顔が浮かぶ

「新零、ここ入ろう」
『はーい』
特に何かは気にせずに2人について中に入れば
どうやらタピオカジュースを売っているらしい

『げ』
「あ゛?」
ジュースを啜りながら、教室展示を見ていると
どこかから戻って来た荒北と遭遇してしまった
・・・荒北のクラスだったか

「椿?!」
『ここ荒北のクラスなんだ』
「そーだよ、わりぃかよ。その恰好、ついに男ってか」
『男装って言ってくれない?これでも様になってるって言ってもらってんだから』
「やっぱ、おとこおんなじゃねぇかヨ。似合ってねぇなブス」

そう言って、また教室を出て行った
「新零、荒北と知り合いなの?」
『幼稚園から高校までずっと一緒』
「幼馴染?」
『違うよ。ただ通ってる場所が同じってだけ』
「そうなの?」
「でも、女の子にブスはないよね。最低」



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