あれから荒北と絡むことはなかった

小学校のころも野球をしているのを見かけた
中学のころグランドで野球をしているのを見かけた
部活の際に、ボールを拾いに来た荒北と鉢合わせたこともあった
頭も丸めていて、いかにも野球球児ですって感じだったし
体育館で何かの賞を貰っているのも見たことがあった
急にパタリと見かけなくなったのはいつだろうか
グランドから、やたら大きい声が聞こえなくなった

私には関係ないことだ
あいつが怪我で野球が出来なくなったことも
ヤンキー気取って授業をさぼるのも



「今日の宿題ってさ」
『あっ、』
「何?・・・あ、もしかして教室に置いてきた?」
『うん、プリント入れたファイル机の中だ・・・めんどくさ』
「いってらっしゃーい。先、寮戻ってるから」
『はーい』
せっかく歩いた道を戻って、階段を上がり教室の戸に手をかけたところで中に人がいることに気づいた。部活の時間だと言うのに居座っているのは帰宅部か何かだろうか、まぁいいやと戸を開けようとして友人の名前が会話に上がったことに気づいて壁に背を付けて座り込んだ。男子のあーいう会話なんて、どうせ女の話か、厭らしい話だ、そこに友人の名前が挙がっていると分かれば、やはり気になるところである。

「あの3人で一番かわいいのは、やっぱり吉崎だな」「でもあれだろー吉崎は別の学校に彼氏いるって聞いたぜ」「まぁあいつはかわいすぎて、なんつか抜けねぇっつーかさ」「だよな次元がなんかちげぇんだよ」「残りの2人は、あれだな。両極過ぎて判断が難しいところだな」「俺、結構椿いいと思うんだけどな。かなりの美脚だぞ」「けど、髪の毛短すぎるんじゃねぇ?なんか男みたいだろ、俺長い奴がいい」「じゃぁ、小野原か・・・ま、どいつも顔はいいけど背が高いから横に並びたくねぇ」「あれでヒールとか履かれたら、俺あいつらより低いからな」「履かなくても十分低いだろうが」「てめぇ、それいうんじゃねぇよ!!」「ま、俺は小野原だな。胸がでかい」「俺もそれは思った。椿と吉崎ってどっちがでかいんだ?」「やっぱ、吉崎じゃねぇの?彼氏いんだったら」「そういや椿は昔っから男子みたいだったって同中のやつが言ってたぜ」「ボーイッシュで、スレンダーな感じだろ?やっぱモテたんじゃねぇの?」「そうか?手出しにくいっていうの?女として中々見れないだろ」「なぁ、俺のクラスのやつ小さくてすげぇかわいいんだけど」「小さいってどんなもん」「150くらいじゃねーかなぁ。小動物みたいで、こうさ苛めたくなる感じで」「苛めたいって、厭らしいこと考えてんのかよ」「ちげぇよっ!!」

好き勝手言ってるじゃないか
どれも今更だが、男子からの意見は正直で自分がどう見られているのかがわかる
別にいい、自分は好きでこの髪型だし、服装もそうだ

それよりも、宿題を早く回収しなければならない
この空気の中、何事もなかったかのように入るのは難しいかもしれないなぁなんて思いながら
スカートについた埃を落としていると人の歩く音が聞こえて、そちらに目を向けた

『・・・・・』
「げ、椿」
『髪の毛、切ったんだね。そっちのがいいよ』
「っせ、つーかンなところで何して・・・?・・・・・忘れもんか?」
『うん、机の中にファイル入れっぱなしで』
「とろくせぇ」

そう言って、教室に入っていた荒北を無言で見送る
こいつは何をしてるんだ?
中から、少し会話が聞こえて戻って来た荒北の手には私のファイルがあった

『・・・・・・』
「お礼くらい言えねぇのォ?!」
『・・・・ありがとう』
投げつけるように渡されたファイルを受け取って、どこかへ向かう荒北を目で追った
なんの風の吹き回しだ

それからしばらくして、荒北がロードバイクという競技用自転車に乗っているところ見かけた。そこで、箱学に野球部ないことに気づいた・・あいつはそれでこの学校を選んだのか。短くなった前髪を思い出して、何かしら吹っ切れるためのきっかけがあったのかと、その様子を見て納得した。



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