08
「ごめんなさい」
「もしかして、彼氏いる?」
「いないです。でも付き合えません」
「・・・好きな人いるとか」
「そうでもないです」
「ヒーロー科の轟と仲いいだろ・・・やっぱり」
「彼は家が近所なのと、彼のお姉さんと仲がいいのがきっかけで友達になりました」
「・・・じゃぁ、友達から、連絡先とかは」
「ごめんなさい」
斜め45度に上半身を傾けたまま、相手の男に返事している新零を目撃して、しばらく動きが止まった。容赦ねぇ。男嫌いの理由は聞かなかったが、全てはねのける答え方に個性は関係ないなと思った。しかし、校内でそれほど彼女と話した覚えはないが自分が会話に登場したのは少し驚いた。どちらかというと相澤先生の方が多い気がする。
しかし、どこか優越感に浸った自分がいたには違いなかった
「新零、前に言ってた緑谷だ」
「あぁ、あの緑谷くん!」
「え、えぇっと、轟くんと同じクラスの緑谷出久です」
「普通科の椿新零です、焦凍くんと同じ町内に住んでるの。よろしく」
「よ、よろしく・・・」
「・・・・私の顔、何かついてる?」
「い、いや、そうじゃな・・・」
「あ、デクくん、おはよ!!・・・ああ!椿さんや」
「おはよう麗日さん」
「おはよう、えっと麗日さん?」
「お茶子でいいよ!椿さん」
「私も新零でいいよ、でもどうして私のこと」
「そりゃぁ、相澤先生と仲のいい子だもん」
「・・・・・・」
「A組で、よく噂になっとるよ?新零ちゃんと相澤先生」
「焦凍くんの言ってた通りなんだね」
「だろ」
彼女の両手をとって、上下にぶんぶんと振っている麗日に対して彼女の個性は動いていない。女か男でそんなに違うものなのかと、様子を見ていると隣にいた緑谷が新零のつけているカフスに気付いたのか凝視していた。
「新零ちゃん、相澤先生のこと好きなん?」
「好きだよ、でもそういうのとは違うからね」
「ほんとに?」
「本当に、好きだけど」
「でも本当に好きなんだね」
「うん」
「2人とも、」
「どうしたん、怖い顔しとるよデクくん」
「椿、お前は何度言ったらわかるんだ?お前のクラスはここじゃないだろ」
「まだチャイム鳴ってない」
「鳴る前に座るもんだろ」
「まだ3分あります消太先生」
「名前で呼ぶなって言ってんだろ」
「先生つけました」
「そういう問題じゃねぇ」
しばらく続いたやりとりを物珍しそうに眺める2人を横に、自分は随分と見慣れた気がした。ぽんぽん好きなことを言う新零が楽しそうな理由も今となっては、わかる気がする。相澤先生が包帯まみれだったころの彼女の表情を思い出せる自分に嫌な感じがしながらも、まぁ楽しそうでなによりだと目を細めた。
クラスへ戻る新零を見送っていると、ちらりと担任の視線が自分に向いたような気がした