クラリネス戴冠式1

「おー」
「今の人、すごく綺麗だった」
「すごいねぇ、皆が道をあけてる」
「急いでどこへ行くんだろう」
「さぁね。俺たちも急がないと、王子が先に到着しちゃうよ」
「うん」




「白雪どの迎えは、ニーナもか?」
「はい、ご一緒かと思っていたのですが」
「サカキ、まだニーナは戻ってないな」
「はい。姿も見えませんね」
「はぁ・・どこまで行ったのだ」
「?」

ゼンから受けた命は、もう1つあった。ラジ王子と一緒に来るという、タンバルンのアラント伯のご令嬢の迎えだ。ラジ王子とサカキさんとはすぐに合流できたが、初めて会うニーナさんらしき人は見当たらなかった。ニーナ様とお呼びすべきなんだろうか・・・と悩みつつ、王子の様子を窺えば、やれやれと言った様子で辺りを見渡して、再び自分の方を向いた。

「すまないが、少し待ってもらえるか?」
「はい、それは構いませんが。ニーナ様は一体どちらへ」
「クラリネスに来るのは久しぶりだから少し見たいものがあると言って到着してそうそうに別行動をしていてな。・・まだ、戻ってきていない。それと、私が言うのもおかしいがニーナで構わんと思うが?」
「そ、そうでしたか。あの、ニーナさんはラジ王子の側近をされていると聞きましたが、私はお会いしたことがありませんよね?」
「あぁ、ニーナが城に来たのは白雪どのがこちらへ戻ってからだからな」
「どのような方なのですか?」
「元を辿れば王家の血筋を引くアラント家の末娘。歳は我々とそう変わらんな・・とにかく普通に歩いていたら目立つ容姿。頭も切れるし、タンバルンでは国1番の才女だと言われている」
「国1番の美しい娘とも幼少のころから言われています。ラジ王子には勿体ないくらいの方ですよ」
「サカキ、それはどういう意味だ」
「そのままの意味です」
「・・・まぁ、そういうことだ。ここに来るまでに見かけなかったか?」
「あ、もしかして」
「俺もそう思う」
「む?見かけたのか?」
「ここに来る途中で、兵服を着たとても綺麗な方を」
「間違いないな・・・まだこの辺りにいるならいいが」
「ラジ王子、ニーナが見えました」



「遅い!」
「すみません、ラジ王子」
「はぁ・・・何をしている。クラリネスからの迎えはすでに」
「あ、貴方が白雪さんね!!後ろの方がオビさんね!!ラジ王子から聞いてるわ」
「ニーナ、私の話しを」
「遅くなり申し訳ありません。アラント家末娘のニーナと申します。この度はお招きいただきありがとうございます」
「ニーナ!」
「イザナ様から直接ご招待を頂いた時は驚きましたが、よろしくお願い致します」
「え、イザナ王子から」
「はい。側近としてではなく、友人という形で招待にあずかりました」
「イザナ王子の友人・・・」
「白雪さんは、ラジ王子のご友人と聞いています。称号をお持ちとか」
「はい。あの、イザナ王子とはどちらで」
「リリアスを訪ねた際、どうしても中に入りたくて思考を凝らしていたところをイザナ様に声をかけていただきまして、それから何度か手紙のやり取りを。称号ではありませんが、通行証を頂きました」
「それで、主がニーナさんの名前を呼んだときに複雑そうな顔をしていたわけだ」
「オ、オビっ」
「主?」
「ゼン殿下のことです」
「あぁ、なるほど。直接お会いしたことはありませんが、イザナ様からゼン様のことは伺っています。本当か戯れかわかりませんが、どうにも私をゼン様の妃候補にしたいようでしたので、ゼン様もご存じだったのでは?」
「妃候補?!」
「もちろんお断りはしています。私はタンバルンを離れるつもりはありませんから。それに、ゼン様には白雪さんがいらっしゃるのでしょう?」
「え、えっと」
「ラジ王子から聞いっ」
「ニーナ、お前話しすぎだ。白雪どのが困惑してるだろう」
「すみません。ずっと話してみたかったので」
「話しているのはお前だけだろうが。白雪どの、失礼した。そろそろ、行くとしよう」

少し不服そうに一歩下がったニーナさんがサカキさんと何か話しているのが見えた。あのイザナ王子の友人でラジ王子の側近というだけで、すごい人なのだとわかる。見るだけで良家のお嬢さんというのが伝わるのに、道で声をかけられて返す様子は子供のような笑顔だったり、わざとおどけてみたりと、身分など感じさせない振る舞いだった。それを見るラジ王子の優しそうな顔に、こちらも温かい気持ちになる。



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