5 「この時間なら、お嬢じゃない限り問題ないだろうさ」 「それほどに厳しいのですか?」 「男装して出ようとした、お嬢が失敗したくらいだからな」 「・・・それはまた」 「向こうも顔を覚えて来てやがるし、荷馬車でも駄目だったからな・・・」 「そうでしたか」 「サカキ、さっさと行くぞ。もたもたしているわけにはいかん」 「わかりました。では、店主ありがとうございました」 「おう、毎度あり」 とにもかくにも城に戻らねばならない。忍びで出た王子が予定通りに戻らないとなれば騒ぎになりかねん。この町のことも一刻も早く伝えねば・・・。 「何だ?」 「こちらへ向かってきますね」 「随分な速度だな」 「我々が遅いのでは?」 「嫌味か・・・・」 「・・・あれは」 「まさか・・・・・!」 「・・・・・・・・・・・・はぁっ、良かった間に合った」 颯爽と馬から降りたニーナに、慌てて馬を止めた。周りを気にしつつ駆け寄ってくる彼女の手には小さな鞄が握られている。それをぐっとこちらへ押し付けて顔をあげた。意思の強い瞳には疲れが見て取れた。 「これ、持ってって」 「・・・?」 「資料、まとめられるだけ、まとめたの。あと嘆願書と署名とかも、最低限詰まってる。遅くなって、ごめん。皆の説得に時間が思ったより時間がかかって」 「・・・だが、」 「持ってて」 「いいのか?信用できぬのでは」 「私のこと助けてくれた人に、それはあんまりじゃない?それに、昨日、貴方が何とかするって言い切ったから。力添え。」 「・・・・・」 「これもいる?」 隠していた家紋入りの首飾りを、こちらに確認できるように見せてくる。この娘が間違いなくアラント家の者だと示すものだ。 「いや、それは受け取らなくとも私の承認で十分だ」 「わかった。では、後はよろしくお願いします」 「あぁ、必ず」 鞄をサカキへ預け、馬を走らせる直前、視線を彼女の方へ向ければ、丁寧に頭を下げる姿があった。 まさか・・・・・ 「やはり、気づいていましたね」 「お前も見たのか」 「えぇ」 「・・・まったく、侮れん」 「あの様子では、見る人が見れば、すぐわかりますよ」 「やはり、私の気品は隠しきれぬのだな」 「・・・・・ラジ王子、前方に見えるのが検閲所かと」 町にいた警備の者と同じ制服を着た者たちが槍を持って立っているのが見える。地形上、他の場所から出れば森を彷徨わねばならなくなるため、ニーナも、ここや他の検閲所を通らなければ出られず苦労したのだろう。行きに通った別の検閲所は町の入口だったが、ここは裏に当たる。ここを出れば隣町に出られる。そこからはどうとでも城へ戻れる。通すまいと集まる警備に向けて口を開いた。 「タンバルン王子、ラジ・シェナザードだ。ここを通してもらおう」 ← 目次 |