シャッと音をたてカーテンを開ける。やけにまぶしい日差しが部屋にささる。かすかに聞こえるのはお母さんが朝食を作る音。そして、私はというと、
「ぅ、げほっ」
風邪をひいた。
「若葉?お粥、作ったんだけど食べられそう?」
「んー……微妙、」
「そう…。とりあえずここに置いておくから、食べられそうになったら食べてね」
お母さんは微笑んで私の部屋から出た。
風邪をひいた私はもちろん学校を休んだ。
「……頭痛い、な」
さっき熱をはかったところによると思ったよりも高熱だった。私は布団の中でごろんと寝がえりをうつ。
やけに静かなへ部屋。こういうときはやけに寂しく感じる。
まぁ、こんなこと思ったって仕方がないんだし。治すことを優先しよう。
そう思い、私は眠りについた
PLLLL...
「うぅ……」
ばさっと音をたて思い切り布団を退ける。スマホが鳴っていたということに鈍く気づき、とっさにスマホを手に取る。
「……西野空くん、からメール?珍しいな……」
そう呟きメールを開く。
〈若葉、サボりー?珍しいねー〉
「…………」
それだけで…っそれだけで私の睡眠を邪魔しないでください…っ。そしてサボりじゃなくて風邪です!と、心の中で叫んでいると、
PLLL PLLL...
また着信がなる。二件メールがきた。
「うぅ〜なんなのもう……」
と言いいつつメールを開く。1つ目は星降さんからだった
〈今、若葉の家の前にいるんだけど。〉
あぁそうですか!
そして私は次のメールを開こうとして、
「…あ、れ?」
家の前にいる、…今?
思わず時計を見る。10時25分。この時間だったら通常であれば学校にいるはず。そう、通常だったら。
ピンポーン...
微かに耳に入ったその音を私は聞き逃さなかった。
え、本当にきた、の?
「い、いや。さすがにそれはない…よ、ね?」
そう考えよう。さっきのは幻聴だ
私は布団をかぶって寝ようとすれば、
「若葉!」
私の名前を呼ぶお母さんの声。
「星降くんっていう若葉の彼氏がきたわよー」
「彼氏じゃなーい!!」
***
「………」
「………」
こういう沈黙ってすごいつらい。というか私がベッドで寝そべっているのはもうこの際いいとして、それを星降さんがガン見してくるってどんな拷問ですか。
「あ、あのー星降さん?」
「なに?」
「あんまり見られるとちょ、ちょっとなーって思うんですけど……」
「うるさい、黙って。」
「は、はいっ」
星降さんの声が少しだけ低かった。機嫌悪いのかな、なんて思いながら無意識に布団で自分の顔を隠す。
ていうかなんでわざわざきたのかな。
星降さん、もし私が風邪ひいても「あ、そう」ぐらいで終わりそうなのに。そんなことを思っていたら、
「っん、」
やけに冷たい手が額に乗せられた。
「んー…」
「ほ、星降…さん?なんですか急に……」
星降さんは手を離してから、
「熱、結構高いの?」
「え、あぁ…まぁ、」
我ながらはっきりしない返事をしたそんな私に星降さんは
「………、」
頭にぽん、と手を置いた。
「え、」
一瞬、動揺した
「なにするんですか」と言う前に星降さんが私の頭をぐしゃぐしゃ、と撫でる。
「な、なんですかーっ」
「なんで言ってくんないの」
「……え?」
星降さんがボソリと呟いたその言葉を私は聞き逃さなかった。
「………」
「………」
また、沈黙ができてしまった。
「星降さん……?」
私は体を起こし、星降さんの顔の覗き込む。
「こら起きんな。寝てろ」
「うわっ」
それなのに星降さんは私をベッドに押しやった。
「…………心配、した」
星降さんは顔を下に向けた。
「教室行ってもいないし、風邪って聞いて思わず学校出てきた」
顔が見えなくて表情が見えない。突然の言葉に、私は言葉を失う。
え、なんですか。そんなこと言っちゃって。ただの私の自意識過剰と言えるかもしれないけど、…そんなの、
私、自惚れちゃうじゃないですか
「……っ、」
なんでそんなこと言っちゃうんですか。なんでそれ以上言葉を紡いでくれないんですか。
「冗談に決まってる、」とか言わないんですか。
何か言ってよ。お願いだから。じゃないと、
「うぅ〜っ」
「は、ちょ、若葉!さっきよりも顔赤いんだけど」
私、心臓が持たないじゃないですか。
「……もう帰って下さいよ〜」
「な、なに急に、泣きそうな訳?」
「違います…っ」
そんなふうに、心配そうな顔で見ないでください。自分の顔が見せられなくなっちゃうから。