公然の秘密


「秘密とかないわ、別に」
「えっ」
 そんな馬鹿な、とでも言いそうな顔だ。勢い込んで振り向いた為に跳ねる、栗色のポニーテールを横目に、何が知りたい? と妖しく口元を吊ってみせた。今日のリップは23番、マットな紅。こんな仕草がよく映える。
「何が、って」
「体重でもBMIでも。ま、大体知ってるでしょうけど」
「や、知らないから!」
 わっと焦って、揃いの栗色が丸まった。そう? そう! なんて。一言ずつ交わしたと思ったら、忙しない事だ。次の瞬間彼女は、もう視線を彷徨わせていた。ねえあのさ、と。それにどうして、歯切れが悪い。そうして、
「あたしは秘密、結構ある……」
「っふふ」
 そうして、たっぷりと間をとって——けれど結局、ただそれっぽっちの事を言うものだから。別に秘密は無しねって言ってる訳じゃないわよ。笑いの冷めやらぬまま声にすれば、じゃあ何、と返る声が憮然と拗ねた。
「単に私が、何でも言っちゃう質なだけ。大好きな人にはね」
 ね、親友さん? 目線を流せば、唖然と開いた栗色に、得意気な私が映っていた。あーあ、口半開き。眉間にシワ。本当にこの子は——可愛くない顔をしている時が、一番可愛らしい。
「よ、くもそんな、恥ずかしい台詞を……」
 そうして、ふと思った。ああ、それならば。その顔が見たくて、わざと心の音を口に出しているのだというのを——当面は、秘密という事にしておこうか、なんて。