01 嫌なくらい晴れわたる空の元、学校の屋上で名前は傍らに置いたカバンから本を出して読んでいた。
学内の放送で竹中が指導室に来いと言うのを聞き流して、また一枚ページをめくる。
屋上の扉が開く音で顔を上げ、少々ご立腹の幼馴染みを見上げた。
「またサボり?」
「螢子には関係ないよ」
「関係ないわけないのよ! 進級できなくなるわよ、サボってると!」
学級委員のあたしも怒られちゃうと腕を引っ張られて強制的に立たされ、素早くカバンを拾って、スカートのポケットから眼鏡を出してかけた。
ふたりが進む道を次々と生徒が端に避けて譲り、ずんずんと指導室が近くなる。
「螢子。また小テストの点数、わたしに負けたってね。サボり魔より点数低いの、恥ずかしくないの?」
幼い頃は勝負事には螢子に分があったが、近年はテストの点数で勝負をしていることが多い。
ふんっと鼻で笑う名前にもっと腹が立ち、引っ張っていた手を外して、文句を言う前に、脱兎のごとく逃げられた。
逃げた本人は早々と場所を移そうと裏校舎の空き教室に足を進めていた。
規定のスカート丈に少し袖の余ったカーディガン、極めつけに眼鏡をした地味な文学少女然とした姿だが、この学校の生徒の目には恐怖の対象に見える。
本当の姿は派手な格好をした不良で、町中の中学・高校の不良から命を狙われている、すでに暴力団からスカウトされている、一声かければ暴走族が動く……など、ありもしない噂が流れている。
いつから流れだしたのか知らないが、早く終わらないかなと思っていると、煙の臭いが鼻をついた。
そっと影から窺うと、名前の名前を使って巻き上げた金でタバコを吸っている男子生徒ふたりと出くわした。
黙って無表情のまま近づき、手を出す。恐怖に固まって動かないふたりに発破をかけてタバコとライターを奪った。
ポケットに入れて去ろうとして、なにしてる!! と怒鳴り声がした。
学校の秩序に力を入れている岩本がいて、男子生徒になにかとられたかと声をかけた。
中学生が自分のタバコをとられたと言ったら、矛先が男子生徒に変わるのは明らかで、黙っているのを見て早合点した。
「隠す必要なんかないぞ。オレはその他大勢の教師のように見て見ぬふりはしない。不必要なウミは学校からたたき出すからな」
最初から名前が悪いと思っているようだ。足元にまだ火のついたタバコが落ちていて、それを踏みつぶした。
「ルールを守れない奴は最低の人間だ!! キサマのようなヤツは学校にくる必要はない!!」
名前は眼鏡越しのつり気味の目で睨んで、音もなく踵を返し、校門に向かった。
学校を出て、すぐにカバンから本を出して読み始めると、頭をパシンとはたかれた。
放送で呼びかけていた竹中だ。睨みをきかせても他の人のように怯みもしない。
「授業に出ずサボってると思えば、昼前に下校か〜? 社長にでもなったつもりか、名前!」
「……帰れって言われたんで」
実際には学校に来る必要がないだが、面倒になってうそぶいた。
話を聞いてやろうと、これまた腕を掴まれ学校側に引き戻されそうになり、比較的大きな声を出して手の力を緩ませ、腕の代わりに奪ったタバコの箱とライターを忍ばせて去った。
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