何だか不思議な感覚だ。

望月さん今日はなんだかご機嫌だね、なんて

バイト先の先輩に指摘されてしまう位には、浮かれてる。

あの頃、一緒に出掛ける事はこんなに特別だったっけ。





お昼を食べてから出かけようという話だったから、

ギリギリまで起きないでいるつもりだった。

にも関わらず、午前8時過ぎに鳴り響いた呼び鈴。

「あー、もう。2人とも仕事行っちゃってるか……」

玄関前にいる人物が私の予想通りであるなら、

恐らく居留守なんて通用しないだろう、渋々身を起こす。



階段を下りたところで鏡に映った顔が少しむくんでいて

一瞬足を止めたけど、急かすように呼び鈴が鳴らされる。

目脂や涎の跡がないだけマシかと諦めて、

せめてもの抵抗に手櫛で髪を整えながら

玄関の扉へ手を伸ばした。



「おはよう」

「おはよう。早すぎない?」

「お昼、僕の家で一緒に食べようって誘いに来た」

「それにしても、だよ。

 今から準備するから上がって待ってて」



玄関口に立つ予想通りの人物に

リビングを指し示した事が失敗だったと気付いたのは、

身支度を済ませてからリビングに戻った時だった。



ローテーブルに広げたままのスクラップブックと

青道高校野球部が取り上げられた記事の数々。

昨日の夜に作業途中で眠くなり放置した状態のままだ。

少し浮ついた様子で振り返った暁に対して

平静を保っているなんてことは、私には難しかった。



「これ、志保ちゃんが?」

「まあ、そうなるね」



気恥ずかしい。こんなことなら片づけてから寝るんだった。

そう悔いる私に反して、暁はほくほくと嬉しそうだ。



「ほら!もういいから行くよ!」



なんだかもう居たたまれなくて、バッグを掴んで

玄関に向かえば直ぐに後ろから足音がついてくる。

暁の家に着くまでにその表情を何とかしてほしいけど

私の顔の熱が冷めるまでは見逃してあげることにした。

喜ぶ暁に、何だかくすぐったい気持ちになってしまったから



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