女の美は性格の中にあるのです。情熱の中にあるのです。


「え、もうその編集終わったの?」
『なんか結構すぐイメージ湧いたというか、スムーズに編集出来た。』
「頭の中覗かせて欲しいんですけど・・・」

やり終えた仕事を提出しにいき淡々と答えるなまえさんの仕事の速さに驚く福良さんと、同じ動画編集者であるノブ。
周りが感嘆の声を上げるのも無理はない。なぜなら、なまえさんは編集のセンスがある。見やすいフォントの選択や丁寧なフリップ、時々入る遊び心のある面白い演出。どれを取っても他の編集者とは違う才能を持っているように感じる。もちろん、QuizKnockの編集者は皆優秀であり、他の人が劣っているという意味ではないが、何かこう、うまく説明出来ないけど、とにかくセンスが良い。そしてなによりも、仕事が早いのだ。渡された仕事にはすぐに取り掛かる。こちらが進捗状況を確認するよりも先に完成、もしくは伊沢さん達に確認作業に入ってもらっている。恐ろしく仕事ができる人なのである。

そしてそれに甘んじることなく、自分がいいなと思う編集については同じ編集者のメンバーから技術や知識を吸収しようとしたり、メンバーから何か聞かれれば快く教えていたり、何か助言等の指摘を受けた場合には素直にそれを受け取るなまえさん。自分がやる事や、その先にいる相手に対して真摯に向き合っている姿勢を感じる。尊敬の念を抱かずにはいられない。


「なまえさんって仕事熱心ですよね。」

なんて、午前中にあった出来事をぼんやりと考えながらお昼ご飯を食べていたら、一緒にご飯を食べていたこうちゃんが突然口を開いた。

「ごほっ!」
「え、ちょ、山本さん!?」

大丈夫ですか?と背中をさするこうちゃんにジェスチャーで大丈夫だと答える僕。なまえさんのことを考えていたことを見透かされたようで驚いてしまった僕は盛大にむせてしまった。

「え、僕何か変なこと言いました?」
「ごほ、ごほ・・・んんっ、ごめん、大丈夫。全然変じゃないよ。」

尚も心配そうに見つめるこうちゃんに、呼吸を整えながらやっとの思いで返事をする。こんなタイミングよくなまえさんの話する?普通。

「さては山本さん、なまえさんの事考えてましたね?」
「なっ・・・いや、まあ、うん、そうだよ、考えてたよ。」
「山本さん、なまえさんと仲良いですからね〜。」

もぐもぐとご飯を食べながら、何でもないように言うこうちゃん。否定した所でこうちゃんには聞く耳を持ってもらえないだろうし、素直に認めることにした僕。でも別に、なまえさんは皆と分け隔てなく接してるし、僕が特別仲良いってことは無いと思うんだけど・・・。

「で、美人でスタイルも良くて仕事も出来るなまえさんに惚れちゃったわけですか?」
「ちょっとこうちゃん!?それこそまさに変なこと言ってるからね!?」

突然脈絡もない話をしだすこうちゃんの腕をポカポカと叩くと、それはそれは嬉しそうに笑うこうちゃん。こうちゃんが本気でそう言っているのか、冗談で言っているのかは分からないけど、焦る僕を見るのが面白いのかこうちゃんはずっと笑っている。なんだよその顔は!

「別に、好きとかそういう話じゃなくて・・・普通にね?シンプルにだよ?シンプルに、仕事に対して真摯に向き合ってるなまえさんがかっこいいなと思ってたの!」

博士課程の勉強もあり忙しいだろうに、愚痴や疲労を見せずにてきぱきと仕事をこなすなまえさんは誰が見てもかっこいいだろう。憧れるし尊敬するのも仕方ないと思う。別に、そこに他意はない。

「まあ確かに凄いですよね。」
「でしょ?こうちゃんもそう思うでしょ?」

もう、と鼻息荒く答えると、はいはい、と呆れた様に返事をするこうちゃん。

大学院での授業や実験がない限り朝早くからオフィスにいるみたいだし、だからって早く帰ることもなく、定時かそれより少し過ぎるくらいまで仕事をしているなまえさん。いつ休んでるんだろう、とか、ちゃんと休めてるのかなとか、疑問に思う事は多々ある。博士課程では論文だっていくつも書かなくちゃいけないって須貝さんも言ってたし。前に一度なまえさんに休めてるから聞いてみたことがあったけど、『大丈夫だから気にしないで』と軽くあしらわれてしまった。もしかしてこの人、結構人知れず無理する人なんじゃないか?なんていう不安が頭に浮かんだけれど、それ以上は踏み込むことが出来なかった僕は、その後もなまえさんの様子を注意深く観察していた。けれど彼女、なかなか表情や態度に出るタイプの人間ではないからか、全くその様子が見られないのだ。

「無理してないといいけどなあ。」
「仕事の事以外というか、自分の事はあんまり主張するタイプじゃなさそうですもんね。」
「やっぱりそう思うよね?うーん、心配だなあ。」

首を捻りながらお昼ご飯の後始末をする。実際なまえさんは先程、簡単な固形タイプの栄養食品を口にしていただけだった。

「何言ってるんですか、一番そばにいる山本さんがいち早く気付いて休ませてあげるんですよ!」
「だからさあ、変な言い方しないでってば!」

ニヤニヤと笑うこうちゃんに反論しつつ、今度ご飯にでも誘ってみようかなんて考え、近くのお店を検索しながらオフィスに戻った。





【女の美は性格の中にあるのです。情熱の中にあるのです。/オーギュスト・ロダン】