程好いほろ酔い


同窓会でずっと好きだった松村くんと不意に目が合って時が止まりたい。

自分としては学生時代、何故かずっと両片想いだったような気がしてた松村くん。学生時代は何故か漠然とそう思っていたのか分からなかったけど、今振り返れば、その直感は恋愛をいくつかしてきて大人になったわたしに、合致が効く。すごく優しくしてくれてくれてたんだなあ、なんて。所謂特別扱いってやつだろうか。
わたしは数学がすごく苦手だった。他の教科はそんな事ないのに、数学だけはいつも赤点ギリギリで、隣の席だった彼は授業中いつも気にかけて「分かる?」「大丈夫?」と言ってくれていた。その時は彼はみんなに優しいんだな、と思ってたけど思い返せば他の子にそんな素振りは見せなかった。わたしが特別馬鹿だったんだろうかとも頭に過ったけど、そんなことは無いと思いたいし、クラス順位的にも、わたしよりできない子だっていたはずだと思う。

…卒業の日、なんで何も言えなかったんだろうとずっと後悔してた。閉じ込めてた想いがその時走馬灯みたいに蘇るとぎゅう、と胸が締め付けられた。そう、わたしずっと引きずっていた。学生時代から綺麗な顔してたけど、大人になって色気もプラスアルファされた松村くんは、今では他の女子をざわつかせてる。そんな中話しかけに行く勇気なんて、無理だ。

ぼおっとしてきた頭。少しふらついてきて、会場の熱とも相まって、くらくらしてきた、…少し頭を冷やそうと思って会場を出ようとすると、 「…苗字さん、だよね、……久しぶり。酔った?大丈夫?」『……まつ、むらくん、』わたしの腕を優しく引いた、学生時代と変わらずに、私の心配ばかりする。

『えと、…ちょっと酔っちゃって、体冷やしたくて、外出よっかな、って、』
「そっか」
『…松村くん、いいの?ほかの女の子たち』
「辞めてよ(笑)おれ、あーいう目立つのって苦手だし。おれなんかに当時みーんな興味なかったのにさ、急になんなんだろうね?」
『…………松村くん、だってほんとにかっこよくなったもんね、』
「………それ、…本気で言ってる?」

急に熱の篭った瞳で言われるからドキッとした。当時のわたしならきっと、笑って誤魔化したんだろうけど、わたしだって、あの頃よりは大人になった。お酒の力を借りることは否めないけどそれは流石に許して欲しいな。

『…わたしね、松村くんのこと、好きだったんだぁ、ずっと。…その私が言うんだもん、…かっこよくなったよ、』それでも彼の目を見ることは出来なくて、目を伏せて言った。だって絶対彼女いるでしょ。わたしたいして可愛くもないしそんな女から言われたらキモイでしょ、逃げようと思って手を振り払おうとしたけど出来なかった。そっか、大人の男性と、女性、になったんだ。わたしたち。

「……おれも、ずっと好きだったよ」
『…やっぱりそっかあ。学生時代、告白すればよかったなあ、』
「ね、……今も好きって言ったらさ、ひく?」
『ッ、』

引かないよ、同窓会で松村くんに会えると思ったら、胸がざわざわしちゃって彼氏と別れちゃったぐらい、わたし、今でも忘れられないの。そう言いたいのに言えなくて、黙って彼の方を見ると、さっきより強い力で腕を引かれた。二人で同窓会を抜け出したつめたくて懐かしい匂いと、香水の匂いの交じった夜のはなし。


@s_kymb icca. - 熱に触れる星々


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