私のひまわり
『ちょ、なんで隠れたの』
「え、わかんない。なんか反射的に?」
私が今いるのは掃除ロッカーの中。
目の前に上鳴。
教室からは緑谷の声が聞こえる。
《あれ?上鳴くん達のカバンあるね。》
《トイレでも行ってるんじゃないか?》
《じゃあ待ってる?》
《そうやね》
飯田くんやお茶子ちゃんもいるみたいだ。
事の発端は1時間ほど前。
お茶子ちゃんと一緒に帰ろうと思ったが、今日も放課後に自主練すると言っていたので疲れ切っていた私はとりあえず教室で待つことにした。
イヤホンをつけ机に突っ伏していると左側だけ音がクリアになる。
「涼風ってこの歌手好きなんだ」
その声に顔を上げると私のイヤホンを勝手に片方耳にさしている上鳴の顔が間近にあった。
『っ、びっくりしたぁ…』
「何してんの?一人で」
『お茶子ちゃん待ってるの』
「寮で待てばいいじゃん」
『早急に話したいことがあったの』
「え、なになに?オレ気になるんだけど!」
ウッキウキな顔をして聞いてくる上鳴。
お前の事だよ、なんて言えずに話をそらす。
私はだいぶ前から上鳴のことが好きだ。
どうにかなりたいとかじゃなくて、ただ好き。
距離感が近いのもムカつくし、いつも気にかけてくれるところもムカつく。
嫌いになる要素一個もない。
いや、強いて言えばすぐ女の子の尻追っかけるところかな。
イヤホンを回収しながら雑談を続ける。
あの授業がどうだったとか、あの先生は怖いだとか。
そんなくだらない話。
「てか涼風って好きな人いんの?」
教室をウロウロしながら会話をしていたがその一言で足を止める。
ちょうど窓際の近くだったので壁によりかかり目を合わせないようにと外を眺める。
『何で?』
「何でって、ただどうなのかなぁーって。もしかして彼氏いる?」
『…好きな人はいる。』
「同じクラス、とか?」
『だったら何うわ近何?!』
なんなんだよ、と顔を教室に向けたタイミングで上鳴が側にいて思わず後ずさる。
が、壁際にいたので大して逃げられない。
「爆豪とか?」
『なんで爆豪』
「だって仲良いじゃん」
『あれは勉強教え合ってるだけじゃん。』
「じゃあ瀬呂?」
『瀬呂は優しいけどそういう対象じゃないよ。』
瀬呂ごめん、と思いつつまた上鳴から顔を背ける。
「…オレじゃダメだよなぁ…」
『え?』
上鳴もまた顔を背けたのか声が小さくて聞こえない。
聞き取れないので顔を近づけた時廊下が騒がしくなる。
あ、お茶子たち帰ってきたんだ。
上鳴から離れようとすると腕を掴まれ掃除用ロッカーに押し込まれる。
そして冒頭に戻るわけだ。
「もう出る?」
『いや、勘違いされる』
「…されてもいいじゃん」
『え?』
また聞き取れないくらいの声を出すので顔を近づけると同時にまた上鳴がこちらを向く。
ちゅ、と唇が軽く触れる。
『っ、ごめ』
「無理」
急いで顔を背けようとすると上鳴に頬を両手で掴まれそのまままた唇が触れる。
『んっ、か、みなりっ…』
何度も角度を変えキスされ息継ぎもままならない。
教室から聞こえていた声はいつの間にか消えていて、緑谷達が帰っているのがわかった。
一瞬の隙をつき上鳴を押す。
ロッカーの扉が開き勢いでそのまま二人で倒れ込む。
『なんでキスしたの』
私が上鳴に馬乗りになっている状態でそう問い詰める。
「…そういう気分になっちゃって…?」
そうヘラっと笑う上鳴に怒りがこみ上げて目の前がぼやける。
あぁ、嬉しいと思ったのは私だけか。
バカみたい。
「ちょ、なんで」
『最悪。上鳴なんか好きになるんじゃなかった。』
「えっ?!」
泣いてる顔を見られなくて立ち上がりカバンを掴んで教室を出ようとすると、その前に上鳴に阻止される。
「待って、オレのこと好きなの?」
『もう好きじゃない。一生チャラチャラしてろ。』
腕を振り払おうとしても振り払えなくて諦める。
「さっきの嘘だから!好きだから我慢できなくなって…」
『嘘つかないでよ』
「嘘じゃねぇって!」
腕を引かれまたキスされる。
「オレ涼風が好き」
『っ…私も上鳴が好き』
「ハァーーーまじで嬉しい!」
『ちょっ』
上鳴は勢いよく抱きついてきてそのままピョンピョン跳ねる。
少し震えてる手が彼の言葉が本物だと教えてくれる。
「これからよろしくな、陽向ちゃん」
その笑顔にまた堕ちていく
(ちゃん付け気持ち悪い)
(あー!ムードぶち壊す!)
(ムードとかないでしょ)
(酷いな!)
(こちらこそよろしくね電気)
(あー陽向まじで好き)
(うるさい)
麗(入れんくない?)
緑(無理だね…)
飯(涼風くんと上鳴くんはお付き合いしたということか?)
麗(そうやね)
蛙(やっとくっついたわ)
麗(お互い好きなのバレバレやったもんね)